闇医者おゑん秘録帖-花冷えて (中公文庫 あ 83-2)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066687

作品紹介・あらすじ

竹は女の樹だ。細く、風に容易くしなってしまう。けれど、容易く折れはしない――。江戸の片隅の竹林を背負った家で、「闇医者」として子堕ろしを行うおゑん。彼女は、ひたむきに信じた愛や、幼き日より育んだ友情を失い、怒り、惑う女たちに助けの手を差しのべる。異国から流れ着き薬草に精通する末音と、情を交わした男に殺されかけた過去を持つ見習いのお春とともに。
いきさつのある女たちの再生を描く、人気シリーズ第二弾。〈解説〉末國善己

【収録作品】
「竹が鳴く」
「花冷えて」

感想・レビュー・書評

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  • 江戸の女医者おゑん。子堕ろしをする医者だけど簡単には引き受けない。女が生きていける道を探そうとするのはなぜだろう。出来れば子を産んで共に幸せになってほしいと思っているのだろうか。

  • 祝福されない命を宿した女たちが、おゑんの家を訪れる…。

    子堕しを請け負う「闇医者おゑん」シリーズの二作目。

    主人公のおゑんが、魅力的過ぎる。
    数奇な運命を背負ったおゑんが、さまざまな事情を抱えた女たちの
    人生に関わっていく。

    子堕しとは言いながら、女たちが宿した命を、
    力の限り、救っていこうとする彼女の姿勢が潔い。

    「竹が鳴く」と「花冷えて」を収録。

    特に、「竹が鳴く」で、はらんだ子を堕してほしいと、
    女中のお竹を連れて来た女将、お江代が、危ない魅力をはらんで、
    目を引きつける。

  • 女の逞しさと怖さ。

  • ★3.7 2023.02.27


    ↓↓↓内容↓↓↓
    竹は女の樹だ。細く、風に容易くしなってしまう。けれど、容易く折れはしない――。江戸の片隅の竹林を背負った家で、「闇医者」として子堕ろしを行うおゑん。彼女は、ひたむきに信じた愛や、幼き日より育んだ友情を失い、怒り、惑う女たちに助けの手を差しのべる。異国から流れ着き薬草に精通する末音と、情を交わした男に殺されかけた過去を持つ見習いのお春とともに。
    いきさつのある女たちの再生を描く、人気シリーズ第2弾。

  • 私物ではなく、家にあったもの。シリーズの2作目。
    時代ものは苦手で、過去に何作か途中でリタイアしたこともあり躊躇したが、人知れず堕胎を請け負う江戸時代の女医の話というのが興味を引き思い切ってチャレンジしてみた。読了後、自宅にない第1作を購入に走るほどに楽しく読みました。巻末の解説では本作と同じく江戸時代の堕胎を扱った作品が紹介されており、機会があればそれらも読んでみたいと思う。

  •  竹林を背負った江戸の片隅で子堕ろしを行う闇医者おゑんの活躍を描くシリーズ第2弾(現段階では最終巻)。本書は表題作「花冷えて」と「竹が鳴く」の2編を収録した中編集。
     子堕ろしを行うとしながらも堕ろすことのみに焦点を合わせず、やってきた患者たちにやさしく手を差しのべるといった印象が強い。「母は強し」を地で行くシリーズ感じる。ただ、表題作はシリーズの流れからすると謎解き要素もあり、やや異質な印象を受けるが、女性の再生をテーマにしているところでは最も色濃く印象付ける作品になっている。
     「ものは捉え方次第で変わる」ということを改めて思うことのできるシリーズである。

  • 闇医者おゑんシリーズ第2作。
    江戸の町で、堕胎をひっそり行う闇医者おゑんが事情を抱えた女たちに向き合う。

    望まぬ妊娠或いは、本人の意思のない男女関係について、おゑんは単純に女性が弱者という見方ではなく、奥底に横たわる女の本音、つまり狡猾さや傲慢さ、怯え、損得勘定や下心まで見定める。

    それはおゑんが、外国人の医師であった祖父の血を継ぎ、人を知る、人の心に分け入ることにとても興味を持っていたからに他ならない。

    登場する人々の心理描写がとても精緻で、奥深い。人が持つ複雑さ、つまり良心も醜さも、強さも脆さも絶妙な加減で描き切る。

    『竹が鳴く』より
    「今、十助さんと一緒になったら、あたしはずっと負い目を持ち続けなきゃいけななくなる気がして。十助さんは、今は、あたしを憐れんで、何とかしてやろうと一生懸命なんです。哀れな娘を救ってやるんだと、どんなに苦労しても救ってやるんだと懸命なんです。
    中略
    (でも)あたし、あたしを憐れむ男と一緒にはなれません」
    ----------------------------------------
    人は「優しさ」や「思いやり」という名のもとに、哀れみと慈しみとをはき違えがちだと、目が覚める思いで読んだ。結局は、相手のために捨て身になっている自分に陶酔しているだけなのだ。

    本文から。
    「酔って、足元も覚束ない男に将来(さき)を委ねることはできまい。」

    お腹に子を宿し、女たちが何かに抗いながら、妊娠で初めて自分に向き合い、自分を大事にすることを知る様に光を見つけたような力強さを受け取った。

    あさのさんの時代物をもっと読もう。

  • もっとこのシリーズ読みたい!

  • 『弥勒の月』シリーズとともに見逃せない、『闇医者おゑん秘録帖』シリーズ。
    『弥勒』が、男の心の闇を描いているのに対し、『おゑん』は女の心の深淵が対象となっている。
    治療のためだけではなく、人の心自分の心を見つめるために、その稼業を営むおゑん。
    シリーズ第二弾は、「竹が鳴く」と「花冷えて」の二作。
    「竹が鳴く」では、難産の末産まれてくる赤ん坊に、おゑんは呼びかける。
    「この世が極楽だなんて口が裂けても言えやしないさ。楽しさよりも辛さの方がはるかに勝っている。信じるより憎しみ合うことの方が多いだろうね。でも、生きてみる値打ちはあるんだよ。あるからこそ、産まれてくるんだからね」
    かつては赤ん坊だった我々も、心に留め置く言葉だろう。
    「花冷えて」は、一転ミステリータッチとなっている。
    江戸市中で、若い娘が次々倒れ、眠ったまま死んでしまう出来事が起こる。病ではなく殺人だと見抜いたおゑんが、その謎を解き明かす。
    第三弾が待ち遠しいシリーズ。

  • 子堕ろしを請け負う「闇医者」おゑんのもとには、今日も事情を抱えた女たちがやってくる。「診察」は、やがて「事件」に発展し……。好評シリーズ第二弾。

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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