- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122066519
作品紹介・あらすじ
生涯最後の旅と予感している夫・武田泰淳とその友人、竹内好とのロシア旅行。星に驚く犬のような心と天真爛漫な目を以て、旅中の出来事、風物、そして二人の文学者の旅の肖像を、克明に、伸びやかに綴った紀行。読売文学賞受賞作。解説・阿部公彦
感想・レビュー・書評
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初めは、淡々と事実を羅列していく描写に抵抗があったけど、だんだん癖になって来た。日々少しずつ読み進めるのに丁度良かった。
面白くないものを面白くないと書く辺りが素直で良い。変に飾らず、良く見せようとせず。なのに登場人物がみんな味わい深くて、魅力的に見えてくる。言語化が難しいけど、なんかすごい本な気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
不思議に魅力的な本。ドライで、別に目眩く面白さがあるわけでもない気がするのにページを繰ってしまうし、いつの間にか武田百合子という人に魅入られている。この人は文章に考えを差し挟まない。なのに、ロシアや中央アジアの地から、心で何かを受け取っているのが読んでいてわかるのだ。その心のありようが、天衣無縫で憧れる。
あるとき私は、これを読みながら無意識に夜のような気分になり、目を上げたら朝の読書だったことを思い出してびっくりしたことがある。10代以来、小説でもこんなふうに静かに入り込んでしまった本があっただろうか。淡々と書かれているからこそ、想像力が泳げるだけの行間があるのだと思う。 -
読み終わってしまった。もう何往復もしてほしい。
しかしよく酒を飲む人たちだ。うらやましい。 -
旧ソ連から北欧へと至る旅行記。
日記の形式で綴られる。
かなりドライでウィットに富んだ内容。
50年前のソ連はこうだったのかと思わされる。ソ連からスウェーデンに行き、不便な生活から便利な社会に変わったはずなのに。
筆者はソ連の方がたのしんでいたように思う。
なかなか破茶滅茶な珍道中。 -
紀伊國屋書店笹塚店の岸本佐知子さん選書フェアで購入。
すごく面白かった。ただの旅日記ではない。見たものはさらりと、かつ克明に記されている。そして際立っているのが、ただぼんやりとしていては見逃してしまい、文字にならないようななんでもない光景を捉えている部分。道端の花、匂い、人々のなにげない仕草など。特に良かったのが人の会話。日記に、こんなに周囲の人間の発言を書くものだろうか。個人的には銭高老人のインパクトが強くて好き。一見わがままで傲慢な人なのかと思いきや、周囲への気遣いや物を見て感動する純粋な感性が、著者の文章からうかがえる。
全体を読んで武田夫妻のやりとりが気になった(「やい、ポチ」と妻を呼ぶところとか)ので、『富士日記』も読んでみたくなった。
それにしても、「面白いか」と訊かれて「まだわからない。これから面白くなると思う。」と答える著者は凄い。 -
なぜ今まで武田百合子を読まなかったのだろう、
人やモノや季節などなどの観察眼、描写力、感性、素晴らしい!
銭高老人の口癖の描写は読みながら笑わずにはいられない。
あっと言う間に読了。すぐ本屋へ富士日記を買いに走りました。 -
百合子さんも泰淳もみんな楽しそうでよかったなあ
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武田百合子さんは、「富士物語」と本書においては、ただただ天賦の才能としか思えない天才的な文章を買いています。
本書も随所に「信じられない…どうしたらこんなことが書けるんだ…」と感嘆するような表現があるのですが、ひとつ際立った箇所をあげるとすれば、著者のあとがき。とにかく彼女のあとがきを読んでください。何度読んでも、いつ読んでも、鳥肌が立つ。 -
「富士日記」の番外編。武田夫婦と竹内好の三人のソ連、北欧の珍道中。独自の淡々とした描写がこちらでも魅力。
出版されることを想定していなかった記録だからこその魅力。子供の絵と同様、変な邪念がないのが良い。