太宰治 (中公文庫 い 38-4)

著者 :
  • 中央公論新社
4.22
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本棚登録 : 210
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066076

作品紹介・あらすじ

太宰治から「会ってくれなければ自殺する」という手紙を受けとってから、師として友として、親しくつきあってきた井伏鱒二。井伏による、二十年ちかくにわたる交遊の思い出や、太宰の作品解説を精選集成。「あとがき」を小沼丹が寄せる。中公文庫版では井伏の没後に節代夫人が語った「太宰さんのこと」を増補。

感想・レビュー・書評

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  • 井伏鱒二文学忌 1898.2.15ー1993.7.10
    井伏忌 鱒二忌 平成5年までご存命だったですね。今年は没後30年で、神奈川近代文学館や杉並文学館で記念展が開催されています。(広島のふくやま文学館でも)涼しくなったらお出かけします。

    井伏鱒二は、太宰治をとても可愛がって(お世話をして)いました。出会いは、太宰治からのアプローチ。14歳で井伏の作品に心酔して、東大入学で上京して、会ってくれなければ自殺するからという、手紙をだす。まだ良い時代だったから、井伏も会う機会を作ってあげる。そこから続いた太宰治の事を書いた物を一冊にまとめた逸品です。
    太宰治は青森の資産家の息子で、出会った時から浪費家、一時は薬物中毒と、何かと手を差し伸べ破綻した生活を助けていました。そして、将棋を指して、旅行に出かけ、親しかった様子が伺えます。
    特に最初の「太宰治の死」初出は昭和23年8月原題「太宰治のこと」ですから、情死と言われた自殺から間も無くの作品です。他の作家さんの作品でも書かれていましたが、太宰治の情死について周囲の人たちは納得していないようです。「おんなごころ」に、太宰治と入水した女性との生活が書かれていますが、この女性との関係性を良く思っていない事が読めます。もしかして、太宰治も困っていたかもしれないような。
    太宰治について想像していた通り、友人は少なかったけれど、何故か彼の世話をしてくれる人や長く仕送りをしてくれた地元の名士の兄が居た。少し生活を立て直せていればねえと思うけど、小説に特化した人間性だったんでしょうか。
    太宰治は、その時々の心情から小説を書いていたようなので、再度、年代順に読み直してみようかなと思いました。

    • ひろさん
      おびさん♪
      太宰治から井伏鱒二への手紙がなんとも彼らしいですねぇ。井伏さんも脅迫まがいのラブレターに驚いただろうなぁ(笑)
      井伏鱒二さんの作...
      おびさん♪
      太宰治から井伏鱒二への手紙がなんとも彼らしいですねぇ。井伏さんも脅迫まがいのラブレターに驚いただろうなぁ(笑)
      井伏鱒二さんの作品も読んでみたくなりました(*^^*)
      2023/07/10
    • おびのりさん
      ひろさん、コメントありがとうございます。
      そして、暑中お見舞い申し上げます。

      最近、ひろさんが、着々と純文学を読まれていて、嬉しいです。
      ...
      ひろさん、コメントありがとうございます。
      そして、暑中お見舞い申し上げます。

      最近、ひろさんが、着々と純文学を読まれていて、嬉しいです。
      井伏鱒二さんは、山椒魚と黒い雨、ジョン万次郎が直木賞です。たぶん、ご本人さんが真面目なので、小説も真面目^ ^
      太宰治は、小説しか良いところがないくらい。でも、面白いなと思います。どうしても芥川賞が欲しくて、川端康成に巻紙みたいな懇願の手紙送ってたり。小説の話になると、姿勢を正したり。
      いろいろ試して読んでください。
      2023/07/11
    • ひろさん
      おびさん、暑中見舞い申し上げます。

      純文学って面白いですね♪メッセージ性の強い現代文学とは違って分かりづらくもありますが、あれこれ想像して...
      おびさん、暑中見舞い申し上げます。

      純文学って面白いですね♪メッセージ性の強い現代文学とは違って分かりづらくもありますが、あれこれ想像して自分なりに解釈できるところに魅力を感じます。押し付けない感じも好きです。
      私は深く読むことはできないので、おびさんのレビューを読んで分かったような気にさせてもらっています(*^^*)いつもありがとうございます。
      巻紙みたいな芥川賞懇願の手紙のお話、ちょうど先日テレビで知りました!ゲストの作家さんにそれはダメでしょ~とダメだしされていた太宰さん(笑)でもどこか憎めないんですよね。
      『山椒魚』『黒い雨』『ジョン万次郎』どれも聞いたことがあります。真面目な小説なんですね(*^^*)
      いろいろ読んでみます♪
      2023/07/11
  • 文学ファンじゃないが、唯一定期的に読んでいる太宰治。その師匠であり、晩年の友人で会った井伏鱒二による太宰の解説?的な一冊。

    文章の丁寧さと本人のやさしさと太宰へのリスペクトも相まってか、愛すら感じた。太宰の生き様だけ見るととてもまっとうには見えないが、井伏や中畑さん、北さん、ほか女性陣含め、人間性で惹かれるものがあったんだろうなとやっぱり思う。太宰作品も有名どころはだいぶ読んだと思うが、時系列的にどこでどんな時期に書いた作品かまで、この本で知れてもっと太宰について知りたくなった。自分のゆかりのある土地もちらほら出てきてなぜか誇らしい気持ち。太宰ゆかりの地ツアーしようかな。
    東京八景、ダスゲマイネ、ロマネスク、晩年、富岳百景どれ読んだだろうか。一回まとめたい。

    ツシマだと津軽弁でチシマになるから、訛っても発音が変わらないように「ダザイ」。初めて知った感動。

    太宰が亡くなったのが1948年、井伏が亡くなったのが1993年。教科書で出てくる文豪のイメージだけど、ついこの間なことに驚いた。フィクションじゃなくて生きていた人なんだと改めて感じた。


    ...あと、関係ないが井伏鱒二といえばで「さよならだけが人生だ」の訳は震えた。575のリズムもいい(日本人だから?)。ユーモアというか、粋な感性を持っている方だったんだろうなと思う。

    (勧酒)
    勧君金屈巵  君に勧む金屈巵きんくつし
    満酌不須辞  満酌辞するを須もちひず
    花発多風雨  花発はなひらきて風雨多し
    人生足別離  人生別離足る

    コノサカズキヲ受ケテクレ
    ドウゾナミナミツガシテオクレ
    ハナニアラシノタトエモアルゾ
    「サヨナラ」ダケガ人生ダ

  • これまでの『太宰治』と『私(読者)』という対話関係から、『井伏鱒二(解説者)』が間に入ってきてくれたことにより、太宰治という作家を多角的に見ることができる。
    太宰の兄や世話人との仲介を少し面倒に思う時もありながら、太宰治という作家を天才だと心から思い、太宰が命を絶つときまで見守り続ける井伏鱒二。
    その人間性の暖かさを感じれる一冊でした。

  • 井伏鱒二と太宰治
    お互いの
    人間性や関係性、
    距離感、空気感が
    垣間見える
    太宰治が自殺してしまった
    という事実が悲しい
    三省堂名古屋本店の
    中公文庫在庫僅少フェアにて購入

  • 2019.07.15~08.22

    自分のことを一時でも慕ってくれた者が突然いなくなった心情が、淡々とつづられており、それ故に、辛さが後からじわじわと伝わってきた。どれだけ大切にしていたのか。悲しいね。

  • 師として友として親しくつきあってきた井伏鱒二が見た太宰治の肖像。筆者の目を通した太宰治、筆者との思い出の中の太宰治。これらは、太宰治の作品を読んでいただけでは見えない印象だった。
    この印象が変わったところで、太宰治の作品を改めて読みたいと思った。

  • 師として友として二十年近くにわたり交友があった井伏鱒二。太宰治との思い出や彼の作品解説などを収録。また井伏の没後に節代夫人が語った「太宰さんのこと」を増補。師である井伏鱒二も太宰治に幾度となく煮え湯を飲まされ、振り回されているけれども、それでも最後まで彼を信じ、または案じて、その才を認めていたことがとても良く伝わってきます。「もうあんな天才は出ない」「ぼく一人でも御坂峠に太宰君の文学碑を立てたい」と口惜しがっていたこと、彼の葬儀の時に、自分の子どもが死んでも泣かなかった井伏が声を上げて泣いたというエピソードを読んで胸がつまりました。戦後、東京に戻った太宰は井伏をはじめ、友人らを極度に避けていたという。真相は定かではないけれど、本書を読む分では当時恋愛関係にあった山崎富栄の影響もかなりあったのだろうと推測される。あとがきにある「芥川龍之介の自殺を、独身のとき、自分は無礼なことだと思っていた。妻子を残して勝手に死ぬとは無責任極まると思っていた。しかし、自分が結婚して子供も出来てみると、却って安心して死ねる気がして来た。芥川の自殺を肯定出来るような気がして来た。」この時、もう自分の生の置きどころを彼岸に託していたのだろうか。未完の遺作「グッド・バイ」が明るくユーモラスな作風なだけに、その裏にある死の暗さを感じてしまう。

  • 師であり友人である井伏鱒二による太宰治との想い出がつづられる。時に批判のような口調にも、行間に太宰への愛情が見える。
    だれしも、矛盾を抱えて生きている。注目されたいと思うが注目されるのが苦手、人に好かれたいが人が苦手、強い自己主張をするが実は気が弱い。そういう矛盾を人一倍背負った太宰は、井伏にとって太宰は、ほっとけない人だったのだろう。

  • 井伏と太宰の交流が、温かい筆致をとおしてつたわってくる。

  • 師として友として太宰治と親しくつきあった井伏鱒二。二十年ちかくにわたる交遊の思い出や作品解説など太宰に関する文章を精選集成。〈あとがき〉小沼丹

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著者プロフィール

井伏鱒二 (1898‐1993)
広島県深安郡加茂村(現、福山市加茂町)出身。小説家。本名は井伏満寿二(いぶしますじ)。中学時代より画家を志すが、大学入学時より文学に転向する。『山椒魚』『ジョン万次郎漂流記』(直木賞受賞)『本日休診』『黒い雨』(野間文芸賞)『荻窪風土記』などの小説・随筆で有名。

「2023年 『対訳 厄除け詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井伏鱒二の作品

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