老後の資金がありません (中公文庫 か 86-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122065574

作品紹介・あらすじ

しっかり貯金して老後の備えは万全だったわが家に、突然金難がふりかかる!後藤篤子は悩んでいた。娘が派手婚を予定しており、なんと600万円もかかるという。折も折、夫の父が亡くなり、葬式代と姑の生活費の負担が発生、さらには夫婦ともに職を失い、1200万円の老後資金はみるみる減ってゆく。家族の諸事情に振り回されつつもやりくりする篤子の奮闘は報われるのか?普通の主婦ががんばる傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 『章さん、私たちの世代は年金もあてにならないし、不慮の事故や天災にも備えがないと不安だよ』。

    この世に生きるということは、お金無くしては考えられません。しかし、この国では給与が上がるどころか実質賃金は下がっていると言われるなど、基本的な衣食住を維持していくこと、それだけでも大変です。そんな中で”老い”という現実が見通せる年代に入ってくると心穏やかにいられなくなる、昨今流れるニュースを見ていると、そんな感覚が伝わってきます。かつては、傘寿(80歳)、米寿(88歳)、そして百寿(100歳)と、還暦から始まった長寿のお祝いというものは、それを祝う感謝の気持ちと更なる長生きを願うものでもありました。しかし、今や、

    “長生きリスク”

    そんな衝撃的な言葉も生まれるなど、長寿を手放しで祝う世の中でもなくなってしまいました。思えば会社の人間関係に心を病み、子育ての大変さに翻弄され、さまざまにガタがくる体に鞭打って、それでも必死で今日までを生きてきた、そんなあなたを待っているのが、”長生きリスク”という言葉だとすると、なんともこの世を生きる虚しい想いにも包まれます。

    しかし、人の人生がいつ終わるかは神のみぞ知るところであり、私たちはそれでもその日までを生きていく他ありません。そんなある意味諦めの境地のような心境にある私たちを強烈な一言が襲います。

    『老後の資金は最低六千万円は必要です』。

    会社に行かないのであればスーツもいらないし、付き合いも減るだろうし、子育ても終わって支出自体が大きく減る、そうであれば『お金のことはなんとかなるかもしれない』、そんな風に考えると、本当にこんな巨額が必要なのか?眉唾物とはこんな時に使う言葉ではないのか?そんな風に思いたくもなります。それよりも、

    『子供が二人とも独立したら、お金だけでなく時間の余裕も生まれるに違いない。自分の時間が欲しい』。

    長く苦労してきた人生であればあるほどにそんな思いも募るでしょう。しかし、もしそうであれば、そもそも”長生きリスク”などという言葉が生まれるはずがありません。

    この作品は、『夫が定年退職したら、夫婦であちこちに紅葉を観に行くはずだった』と幸せな『老後』を夢見ていた一人の女性の物語。そんな女性が『お金のない老後は怖い。長生きしたいと思うのは、経済的に余裕のある人だけだ』と気づく物語。そしてそれは、「老後の資金がありません」という言葉の先に、それでも日々の日常をささやかに生きていく女性の生き様を通して、この国に”長生き”する私たちの生き方を考える物語です。

    『おい、篤子、聞いてんのか。一生に一度のことなんだぞ』と声をかけられたのは主人公の後藤篤子(ごとう あつこ)。そんな篤子は『一生に一度?… だけどね、結婚式に六百万円もかけるなんて、やっぱりどうかと思うよ』と返しながら『この会話、いったい何度目だろう』と思います。娘の さやかの結婚式の費用のことで『ここのところ毎晩この調子』と揉める夫婦。そして『両家で折半するんだから三百万円ずつじゃないか。それくらいの貯金、うちにないわけじゃないんだろ?』と言う夫の章に『あなたはもう五十七歳だよ。その歳になってから老後の資金を取り崩したらダメだよ』と篤子は返します。そんな二人は『定年まであと三年しかないんだよ』、『俺の会社は六十五歳まで勤められる』、『給料が下がるんじゃなかった?』、『退職金もあるじゃないか』、『退職金はどのくらい?二千万円くらいは出る?』、『部長は一千万円を切ったってさ』…とお金の話を続けます。そして、『相変わらず篤子は心配性だな。人生、なんとかなるもんだよ』と笑う章を見て、『どうしてこうも呑気なのだろう』と篤子は呆れます。『住宅ローンも』『残りあと二年』とはいえ、『一千二百万円しかない預金などすぐになくなる』と考えこむ篤子に、『ともかくさ、俺はみっともないことはしたくないんだよ』と章は言い放ちました。『日頃から、何かと格好をつけたがる』章の本音がついに出たと思う篤子は知り合いから紹介されて『半年の交際を経て結婚した』過去を振り返ります。そして、『本来、こんな男は好みのタイプじゃなかった』と『五十歳を過ぎてから』しみじみ思うようになった今を思います。そんな篤子は、『夫の両親への仕送りが月々九万円というのも厳しいものがある』と、『一流ホテルかと見紛うような老人施設に居続ける』夫の両親のことを思い『あの親にしてこの子ありとはよく言ったものだ』と考えます。そんな時『お父さん、帰ってたの?お帰りなさい』と風呂から上がった娘の さやかがリビングに入ってきました。『勇人はまだ帰ってないのか?』、『飲み会で遅くなるって言ってたけど』…とやりとりをしながら風呂へと向かった章。そして二人になったリビングで『ごめんね。私の結婚式のことで』と さやかは篤子に謝ります。『それにしても、たかが結婚式に六百万円とは』と改めて思う篤子。一方で『お金のことで、嫁ぎ先と気まずくなったりしたら、さやかが今後つらい思いを…』とも考える篤子は『この際、思いきるか』とも思います。『勇人は来年、大学卒業と同時に就職する』、『さやかが結婚し、翌年四月には勇人が社員寮に入る』、『それは、夫婦二人だけの小さな暮らしになるということだ』とこの先の暮らしについて思案する篤子。そんな篤子に押し寄せる思わぬ出費の連続に「老後の資金がありません」と奮闘する篤子の姿が描かれていきます。

    「老後の資金がありません」という2021年10月に天海祐希さん主演で映画にもなったこの作品。平均寿命が男性81.64歳、女性87.74歳と大きく伸びた現代社会にあっては老後とされる時間も長くなり、その時間をどのように過ごしていくかはとても深刻な問題となっています。歳を取れば体にもさまざまな問題が出て、寝たきりというような状況も決して他人事ではありません。認知症の増加も大きな社会問題となっています。そんな中、やはり避けて通れないこと、何がなくとも必要となるのがお金です。

    『老後の資金は最低六千万円は必要です』。

    そんな試算が大きな話題ともなりました。この作品では書名の通り、そんな『老後の資金』について垣屋さんらしく極めて読みやすくわかりやすい文体でさまざまな切り口から光が当てられていきます。ただ、『老後の資金』と言っても人の金銭感覚というものも千差万別です。自分にとっては当たり前と思っていてもそれぞれの人の生活レベルによっては見えてくるものは全く異なります。そんな物語に垣屋さんが登場させるのが四人暮らしの後藤家です。では、まずはそんな後藤家の面々をご紹介しましょう。

    ★後藤家: 3LDKのマンション(持家)。『住宅ローンもようやっと残りあと二年』。『一千二百万円しかない預金』。夫の両親への仕送りが月々九万円。さやかの『結婚式に六百万円もかける』ことについて篤子と章が対立。

    ・篤子: 五十三歳。『銀行系のクレジット会社で事務職として働く(半年ごとの雇用契約のパート勤務)』。『フラワーアレンジメント教室』に月に一度通う。『自分の時間が欲しい。ひとりになりたい』と永年思っている。

    ・章: 五十七歳。『中堅の建設会社に勤めている』。『定年まであと三年』だが『六十五歳まで』継続雇用されると認識している。両親が『一流ホテルかと見紛うような老人施設』に暮らす。

    ・さやか: 女子大卒、二十八歳、派遣社員として会社を転々。『文化屋という雑貨店』で時給九百三十円で働く。貯金180万円。この秋に結婚を予定、『婚約者は商社に勤めるサラリーマン』、『何歳になっても心配な娘』と篤子は見ている。

    ・勇人: 『大学四年生』。『来春から大手企業に勤める』。『三月下旬に会社の寮へ引っ越し』。

    上記もした通り、人によって金銭感覚はマチマチです。この後藤家の設定をどう考えるかも読む人によって見方は異なると思います。しかし、少し前の言い方かもしれませんが”平均的な中流のサラリーマン家庭”という言い方をしたとしても多くの方は違和感なく捉えられるのではないかと思います。物語はそんな後藤家に、主にお金に関する問題が次から次へと襲いかかります。物語の冒頭で『一千二百万円しかない預金』がどのように目減りしていくことになるのかについて「老後の資金がありません」という書名の先の物語が展開します。

    そんな物語は大きく前半、後半に分けられるように思います。前半は主人公の年齢帯の人を襲う数々の出費です。その一つが物語冒頭から篤子を悩ます『だって六百万だよ、六百万。芸能人じゃあるまいし』という娘・さやかの結婚式の費用です。今や結婚式も多種多様、籍だけ入れる人もいれば、『写真館で写真を一枚撮るだけで十分』という人もいるでしょう。その一方であくまで結婚式にこだわる方ももちろんいらっしゃいます。そのどれが正解というわけでももちろんありませんが、この作品で一つポイントがあるとすれば『結婚する当人たちが出すっていうんならともかく、親が出さなきゃならないなんて変だよ』という点でしょうか。しかし、そこは垣屋さんです。そう単純に『変だよ』だけでは片付けられないようにさまざまな設定により篤子の悩みを深めていきます。『老後の資金が』娘の結婚式で目減りしてしまうという点に光を当てる最初の着目点、これは間違いなく面白いです。一方で世の中ではお金がかかることとして”慶弔”と一括りにします。となると、もう一つはお葬式です。こちらも以前のように大規模なお葬式をすることも少なくなってきてはいます。私が特に感じるのは会社関係です。以前は毎月のように誰かしらの身内が亡くなった…とお通夜に参列していたのがいつの頃からか、パタッと途絶えました。会社のロッカーに黒いネクタイは常備必須だったのが嘘のようです。しかし、少し前に父親の葬儀を経験した身には、例え会社関係の参列がなくとも信じられないくらいにお金がかかるもの、それがお葬式だという考えを新たにしました。ということで、この作品が結婚式に次いで光を当てるのがお葬式です。『まず棺桶をお決めいただきたいと存じます』と葬儀会社の担当者から問われた篤子。『どうせ燃やすのにどうして十二万円もするのかと思う。いちばん安いのでも四万円もする』と驚く篤子は、『次に祭壇ですが』と担当者の説明を受け、『なぜこれが百二十万円もするの?』と『穴の開くほど写真を見つめ』戸惑います。『他の葬儀社もこんなに高いのだろうか』と訝しむ篤子の気持ちは一度でもお葬式を経験した者にはよくわかることだと思います。『何が高くて何が安いのか。どれくらいが妥当な値段なのか』、『金銭感覚が麻痺してきたのを自分でも感じ』たという篤子が描かれるこの着目点。こちらも間違いなく興味深い内容であり、一気読み必死の面白さがあります。

    物語の前半はその他にもなるほどと思わせる話題を展開しながら進んでいきますが、物語の後半になって前半とは異なる視点で物語は展開し出します。具体的には全30章の中の第20章からの物語がそれに当たります。経緯はネタバレになるので伏せますが、そこに登場するのが『最近は年金詐欺が問題になってるでしょう』と始まる昨今話題の問題です。『年金詐欺というと、親が死んだことを隠して年金をもらい続けるっていう、アレ?』というその内容は、ニュースでも時々大きく取り上げられてもいます。「老後の資金がありません」という厳しい家計事情の先に行き着くもの、大きな額でなくとも今まで定期的に家計に入ってきていた親の年金が途絶えるのはまさに死活問題、そのような考え方の先にあるのが『年金詐欺』です。垣屋さんは物語後半をこの問題に割いていきます。しかし、どうもこの感覚が物語に大きな影を落としていると感じます。前半の”慶弔”を取り上げた内容は本人達にとっては間違いなく深刻な事ごとです。そして、「老後の資金がありません」という書名に直結していく論理はなるほどと思います。一方で、『年金詐欺』も確かに「老後の資金がありません」ということに関係してくるものではあります。しかし、それ以前にこちらはまごうことなき犯罪です。垣屋さんらしい極めて読みやすい筆致で犯罪が展開してしまう、これには読みやすいが故に後味の悪さも強く感じさせるものがありました。笑い飛ばすことのできない、でもそれでいて筆致としては笑い飛ばす前提の物語。この微妙なギャップがどうしても付き纏い、垣屋さんの作品にしては読後にすっきりとした爽快感が感じられませんでした。この辺り、レビューでも意見が分かれているようです。これから読まれる方には是非そこにどのような読み味を感じられるか、読書の一つのポイントとしていただければと思います。

    『章さん、私たちの世代は年金もあてにならないし、不慮の事故や天災にも備えがないと不安だよ』、というように近づく老後に対峙しなければならない時間は誰にだって訪れます。少子高齢化が際限なく進んでいくこの国にあって、支えられる側の人間ばかり多くなってしまうこの先の時代を不安に思う気持ちは当然のことだとも思います。この作品では身近な”慶弔”にかかる巨額な費用をはじめとして、さまざまな切り口から、「老後の資金がありません」という問題が、他人事でなく、読者が我が事として捉えられるように極めてわかりやすく描かれていました。このレビューを読んでくださっているみなさんの年齢はマチマチです。老後なんて遠い未来という方から、他人事でなくなってきたという方、そして現在進行形で老後を生きていらっしゃる方、そんなそれぞれの世代の人たちに、それぞれの視点から興味深く読み解いていける面白さがこの作品にはあると思いました。

    垣谷さんならではの極めて読みやすい筆致でぐいぐい読ませるこの作品。深刻になりすぎてもいけない、でも少しづつ考えていかなければいけない。読後、老後というものに少し意識が向くのを感じた、そんな作品でした。

  •  時にキャッチーで、ぎょっとするタイトルが多い柿谷美雨さん。本書も、誰もが将来直面するであろう老後生活について、読む前から不安と恐怖を煽る要素が満載(?)の気がしますが、果たして‥。

     主人公は50代パートの篤子。冒頭から続く怒涛の高額出費ラッシュと身内・友人たちとのドロドロゴタゴタに唖然!
     姑への仕送り、パートのリストラ、娘の派手婚、舅の葬儀と墓、夫のリストラ(退職金なし)‥、一難去ってまた一難と、あり得ないほど続く負の連鎖! 不穏な空気がいつまでも漂い、明るい兆しがまるで見えません。読み手もイライラ(笑)

     後半、姑との同居から事態は動き始めます。年金詐欺絡みへの加担は非現実的でしたが、少しずつ周りの人たちの互いの見栄根性が剥がれていき‥。
     置かれた境遇・実情を知り、「同病相憐れむ」で意気投合する現金さ、損得勘定で変える態度や主張、人間の愚かさを見せつけられ、失笑ものです。

     篤子の境遇はシニカルですが、物語の文体はコミカルで、読みやすいです。老後生活のヒントや気付きも与えてくれます。でも明日は我が身?
     身の丈に合った心がけで生活し、くだらない見栄を捨てて正直に生きる、これが大事ですね。

  • 笑えました
    だけど 【他人ごとではない】んですよねぇ…

    みんな 幸せの形もバラバラ
    みんな 言えないけど悩み持ってる

    大人だけではなく子供にも読んで欲しい一冊

    皆個人個人でちゃんとお金貯めて
    家族に迷惑かけないように…
    もしピンチの時は助け合えたら…
    それが理想ですね( ノД`)…

  • 垣谷美雨さんの作品を読むのは初めて。初めての作家さんは、読む前、ワクワクします。

    いやー、なんかジェットコースターみたいな小説でした。映画化されたと知り、このドタバタは映画にうってつけだと思った。

    娘の派手婚に五百万円、舅の葬儀等に四百万円、そのうえ夫婦そろって失業・・・などなど、お金をめぐるアレコレにも驚いたけれど、なんだかんだよくわからない人間関係というか登場人物の人柄にさらに驚いたなぁ~という感想だった。
    友人のサツキもしっかり者なのかなんなのかよくわからないし、義理の妹にあたる志々子もよくわからない(結局は寂しい人?)、家計が火の車だって言っているそばから「おふくろには、高級品を食べさせろ」と言う夫にも「は?」という印象しかないし、娘のさやかにいたっては、大人しい子だと思っていたら、夫に暴力をふるっていたなんて。もうドタバタ過ぎて、あ、そうか、これコメディだったんだ、と思うとおもしろくなった。結局は主人公の篤子もなんだかブレブレだったな~と思う。一番軸があっておもしろいキャラクターだったのは、前半存在感がなかった姑だった。

    誰ひとり共感できる登場人物がいないし、セリフの言葉選びが好みではなかったけど、このドタバタの先が気になり、どんどん読み進めていったという点では、作者の意図(したかどうかわからないけど)にまんまとハマったということ。「ないわー」「ありえないー」などと、なんだかんだ楽しく読み終えた(笑)
    あ、でも、別の角度から考えると、ポンポンと必要なことを端的に話していく登場人物の会話のやりとりも小気味良いといえば、悪いこともない気がしてきた。姑が「連絡してあげなさいよ」と言ったらその友人はもう20分後にはそこに来ている、とか、テンポがいいといえばいい。ん?ブレてるのは篤子ではなく、私?(笑)

    お金の使い方として参考になったのは、やはり終盤サツキの義母のお葬式の仕方だった。高額な料金がかかる葬儀屋に頼まず、お寺にお願いして自分たちの手で葬儀を行う、というのは「そっか、そんな方法もあるのか」と目から鱗だった。

    と、なんだかんだ楽しい読書でした。たまにはこういうスピード感のあるコメディタッチの小説もいいですね。

  • 垣谷先生のお名前で数冊本を購入した中の一冊。

    ひゃー。リアリティ溢れるお話だった。

    旦那と娘と息子の4人家族。
    コツコツ貯めてきた貯金は一千二百万。

    老後の資金は六千万円必要だと雑誌に書いてあったが、このまま何とかなるのか?

    娘が結婚することになり、親に援助を求められ、使ったお金は500万。
    落ち込んでいるところへ、今度は舅の葬儀で400万。

    いまや貯金も300万、、、

    そこへ夫がリストラされることになり、これまで姑の為に仕送りしていた9万円も払うことが出来なくなる。
    思い切って同居を決めるが!

    いや、もう、ありそう。ありそう。

    本書の半分くらいは、これでもかというくらい次から次へと過酷な試練が。。。
    感情移入しすぎて気持ち悪くなるほど。。。

    しかし後半に入り、姑さんと同居を決めてから、そんな落ち込んだ気持ちもだんだん復活してきた(笑)

    山あり、谷あり。
    まさに人生に起こり得そうな小説。

    最後はなかなかいい感じ(*^^*)
    サクサクつと読み終わってしまった(*^^*)

  • いつもながら目を引くタイトル。
    現実的過ぎて暗い気分になるかな?と後に回していましたが、なかなか面白く読めました。

    50代の主婦の篤子に、つぎつぎ難題が降りかかります。
    じゅうぶん貯金してあるはずだったのに…
    娘の結婚費用が予想外の多額に。派手婚を望む娘の願いを拒否したくない夫にイライラ。
    そして、義父の葬儀、姑の暮らしの援助、さらには夫婦そろって失業の危機?
    今の時代、誰にでも起こるかもしれない問題が続々。

    悩みつつも出来る方法を探し、細かな節約から、変わった解決法まで思いついて奮闘する篤子。
    姑をいい老人ホームに入れるお金はないので、自宅で同居することに。
    姑と同居…
    それ一つだけで悲惨な状況にもなりかねない危険をはらむけれど、これが意外に吉と出たりして、面白い展開に。

    明るく頑張る篤子さんを応援したくなりますね。
    同じ経験ではないけれど、意外に費用がかかったり、驚くこと、不安になること、あるあるです。
    ちょっと参考になるかもしれないヒントや、気持ちの持ちようも書かれていて、元気が出る読後感でした。

  • 2023.9.12 読了 ☆7.0/10.0

    リアルで、等身大なんだけれども自分がまだ若く、人生経験が浅いからか「分かるううう」ってならなかった…

    葬儀も結婚式も年金も、まだこれから経験することだから、「ふーん、そうなんだ。それが現実なのか」っていう学びにはなった。

    でも主人公の篤子さんにはすごく共感した。
    貧乏性で現実的な自分が照らし合わせられて、「どうせ燃やすものに何故こんな大金をかけるのか」って葬儀屋とのやりとりでの心中は、めちゃくちゃ共感しました

  • 老後生活のための資金が、娘の結婚や義父の葬儀などに使われてしまい、しかも夫婦そろってリストラにあったため、今後どうするか主人公・後藤篤子が奮闘する物語。年金詐欺や"小さなお葬式"の話が多く、『生活資金を回復させるには…』的な部分がなかったので、「老後生活には二千万円必要」というニュースを見た身には、全く参考にならなかった。いろいろ盛り込まれた小説ではある。

  • 垣谷美雨さん2冊目。原田ひ香さんのお金がテーマの小説に似た雰囲気。60歳の定年を間近に控えた家庭の話。前半は貯蓄がどんどん目減りしていき、なかなか苦しい展開だったが、後半、流れが変わり読後感は爽快だった。思い切って姑との同居を提案したことがきっかけになったように見えた。ベストな解決策に見えなくても、何かをやってみるというのは、突破口になることがあるのだなとつくづく実感。前半では難しい人に描かれた登場人物たちが、意外にも別の側面を持っていたり、嬉しい誤算があったりで状況は好転。なるようになる、とどんと構えるのが良かったりするのだろうなと思った。

  • 老残の身には、何とも身につまされる題名(笑)で、読まずにいられなかった。
    夫婦ともにリストラに遭った50代の主婦が主人公。
    しかもなけなしの貯金は、娘の結婚式それに舅の葬式代に出費し、残り僅か。
    結婚した娘は、DV被害が疑われ、さらに行き掛かり上、姑を自宅に引き取る羽目に。
    親類や近所付き合い、友達付き合い等々、読者の日常生活や倹約生活のヒントにもなる、主婦のドタバタ奮戦記。
    度重なる逆境にもへこたれない主人公(時たま歯がゆくなる時もあるが)の姿に、似たような境遇の諸姉は、勇気をもらえるかも。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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