- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122065161
作品紹介・あらすじ
この作品には、小学校5年生から50代半ばまで、幅広い年齢層の女性たちが登場します。
読んでいくうちに、ご自分と近い「誰か」が見つかるのではないでしょうか。 彼女たちはそれぞれ、職場の人間関係や、睡眠障害、元彼のストーカー、娘の就活、子供ができない……などの問題に直面しています。ここで「あの人がいたから救われた!」「力を合わせて皆で解決!」という都合のいい展開にならないのが、著者の世界観。
では登場人物の葛藤が続くだけかというと、意外な人から思いもよらぬ「手」が差し延べられるのです。カフェという場でゆるやかに関わり合うだけでも人は変わっていける――読後、小さな、しかし確かな希望が胸に灯る小説です。
【登場人物】○のぞみ(27歳) お客。肌トラブルと職場の人間関係に悩む。○恵奈(小学校5年生) 店主・ヨシカの同級生、りつ子の娘。飼育栽培委員。○竹井さん(28歳) ランチのパート。睡眠障害気味。電車に乗れない。○ゆきえ(31歳) お客。仕事が忙しくて家事が出来ない。○とき子さん(50代半ば) 午後のパート。趣味は海外ドラマ鑑賞。○冬美先生(38歳) お客。ピアノ講師。子供が好きだが子供はいない。○ヨシカ(34歳) 店主。「ポースケ」を企画し、参加者を募る。
感想・レビュー・書評
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「ポトスライムの舟」の5年後のお話
津村さんの話は、大きな出来事は起きない。
これは何の話で、何を読まされているんだろう的な話から始まる。話によってはそれがしばらく続く。
だれかれの日常が延々と続いて、あ、もう辞めようかな、ちょっと合わないやつだったかな?とか思いはじめる短編もある。
でも気になって読んでいると、この人は淡々と過ごしている順調な人だと、勝手に思っていたのは自分だけで、奥や裏にはその人の悩みや葛藤がいろいろあったのか、ってことに気づく。
気づいてからは、ぐんと読める。
でも、やはり津村さん。
ものすごいハッピーエンドとか、ものすごく物語が動くわけではなく、ちょっとした積み重ねを周りからもらって、じんわり再生する。
まさに現実。
そしてやはりこれが「ポトスライムの舟」の5年後の世界で、「ポトスライムの舟」の二話目最後ナガセが ”できなかった” と、悔やんだことの証の世界になっていることにじんわり嬉しくなる。
「ポトスライムの舟」から読んでもいいし、もちろんこの本から読んでも大丈夫。
〈歩いて二分〉と、〈コップと意志力〉のぼんちゃんがよかった。〈我が家の危機管理〉も。
〈歩いて二分〉だけ簡単にご紹介。
過去にパワハラで会社を辞め、その後は夜中3時に目覚め昼の14時を過ぎると猛烈に眠くなってしまう睡眠障害を患う佳枝の話。
何が救いになるかはわからない。
でも、希望を持てる物語
そして本の最後の方にある〈ヨシカ〉
ここでまた、ポトスライムの舟を思い出す。
津村さんは、生きにくい世の中をなんとか生きている女性を描くのが本当に上手だ。
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平易な文章なのに情報量が多く流し読みできない。いつも不思議な読後感のある津村喜久子作品。
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最近は落ち込むことがとても多くて、人の成功も素直に喜べず、自己嫌悪してばかりだった。部屋の本棚をみて、こんなに本ばかり読んで何なんだ何してきたんだろうと思ってしまっていた。なのに半分読んだままにしていたポースケを読み終わると、どうしたって救われた気持ちになった。”一喜一憂するしかない”。本はいつでもそこにいて、裏切ることなくいつかの自分を待っている。それが今でなくても。津村さんの作品はいつも教えてくれる。ヨシカの店で開かれたポースケに、わたしもいたような気がしている。彼女たちをこれからもずっとみていたい。 -
ポトスライムの舟の続編。
登場する人の呼称を使い分けて、人と人との見えない距離感を表現している。
前半では、断片的にひらがなと漢字で(とき子)呼称されるのに対して、当の人物の家族事情、内情に触れる章では全て漢字表記(十喜子)というように。
日常的に接する人の名前の正確な漢字表記なんて深く意識していない。そして、表面上の関係性だけでば見えてこない個々の事情は本人たちにしかわかり得ない。
そんな、人と人との見えない境界線を表現できてしまう言語的切取り方に驚く。 -
読むと心が温かくなる。
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「英語は現在完了から挫折した」「年を取ったら覚えが悪くなるけど忍耐力がついてる」など細かな共感ポイントがいっぱいあってうれしい反面、登場人物達の抱える物語は割とシリアスで彼らの行く末を「陰ながら応援しているよ」という気分で読み終えた
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色々抱えた女性たちが、ヨシカのカフェに集っている。繋がっているような、いないような。皆コツコツと真面目に生きている人たちばかりだけれど、人生はままならない。
特にとき子さんが好きだったな。
最終章は心が温かくなる光景が目に浮かぶ。 -
ヨシカの営むカフェに集う友人、パートさん、お客さん。それぞれにスポットが当たりながらお話が少し進む。
目だって大きな出来事が起こるわけじゃない。それでもなんやかやいろんなことが起きている。スポットが当たってないときも、日々いろんなことが当たり前に起きてる。
という何気ないことを思いながら読んでいると、いつの間にかだーだー泣いている。
津村記久子さんの、力強くスタートの掛け声を発するでもない、伴走しながらエールを送ってくれるでもない、散歩の途中たまたま通りかかったランナーに手を叩いて声をかけているような、ほどよい距離感が好きだ。
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その辺にいるどんな人もままならないことやしんどいことなんかを抱えてるんかもなあと思う本
それぞれ登場人物が大なり小なり色々抱えてるけど結末に向けて割とみんな明るい方向へ向かっていて良かった
登場人物たちが方言をしゃべってるのも何か自然な感じでいい
津村先生の本は肩に力が入ってない日常がそこにあって穏やかでたまに不穏で面白い
前作読んでても読んでなくても充分楽しめる
私もこんなカフェにかよって常連になりたい
それにしてもハタナカのポースケは楽しそうだな -
津村記久子者のポストライムの舟の5年後の物語です。私はポストライムの舟は、読んでいないのですが仕事で働く人達が睡眠障害を抱えていても、カフェで朝早く働いている事や、元彼のストカーがか描かれていて津村記久子者は、現代の若者の視点で書けれるのは、もしかしたら、津村記久子者しかいないと思いました。働いていても、様々な事を、抱えて、働く姿が誰でも共感すると思います。ポースケと言う意味は、この本でお確かめください。