マインド・クァンチャ - The Mind Quencher (中公文庫 も 25-13)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 329
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122063761

感想・レビュー・書評

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  • 常識や思い込みに囚われず、より軽く、より澄んだ思考になれるような気がする本。何度も読み返したいシリーズ。

  • 澄みきったような綺麗な物語。
    全てを失って、研ぎ澄まされて、純度が増したように見えるけど、それでもゼンはゼンらしいままで、本質は変わらないんだと嬉しく思います。
    ゼンらしい伸びやかな、自由な終わり方で良かったです。

  • 再読
    森博嗣作品の中でも大好きなシリーズです

  • 「ヴォイド・シェイバ」シリーズ最終作。このシリーズは全部面白く読めた。まさかこんな結末とは。

  • ハマりすぎて、5作一気読み。
    図書館で借りたけど、また読みたくなるだろうから、買っちゃおうかな。

  • ヴォイド・シェイパシリーズ第五弾にして完結編。ゼンの長い旅はここでようやく終わった。全て読んで感じた事と言えば作者の別作品である「喜嶋先生の静かな世界」に雰囲気が似ていたような気がするということだ。それはどちらも何かを極めようとした人の存在感というか軌跡のようなものだと思える。

  • これで完結なのか。素晴らしく澄んだ小説だった。ゼンさんの今後、気になる、、、、気になりすぎる。
    エピローグ後、どのように展開するのか2つの道がある。私は置かれた場所へ戻ったんじゃないかと思う。ゼンさんの全く新しいストーリーがそこから始まると信じて…

  • 'あの赤い面の刀筋の美しさといったらない。あんな剣が自分も欲しい。
    紙一重は、超えられない隔たりなのか。
    待て……。
    しかし、今ここで見た幻覚でも、自分は斬られたではないか。
    夢でも斬られ、幻にも斬られた。
    待て、それは違う。
    斬られてはいない。自分は生きているではないか。
    当たり前なので、また笑ってしまった。今度は本当に声を上げた。
    相手は幻なのだから、斬られないのは当たり前。当たり前だが、しかし、斬られていない、という確信が何故かあった。それどころか、自分の刀は、敵の躰に達していたのではないか。手応えもないのに、そう思えるのだ。
    そして、そう思った一瞬、躰が震え、笑いも止まり、目を見開いていた。



    まちがいない。
    あの剣に勝てる。
    理由はわからないが、勝てると思った。
    あの美しい剣に。
    どうしたのだろう?
    何の違いがあった?
    いや、それも違う。
    それこそ、大間違いだ。
    そうか……・
    理由など、もしかしていらないものか?
    これも、身震いを伴う思いつきだった。
    ただ、ただ、そんな気がしたのだ。
    もう、その答えしか残っていない。
    そうとしか考えられない。



    気が狂ったのではないか、と思い、また笑いたくなった。
    山の中、崖の上で、ただ一人。
    一心不乱に刀を振り回して踊っていたのだ。
    躰は熱く、汗が流れていた。
    息は早く、そして白い。
    振り返ると、東の空が明らんでいる。
    大事なことに気づいた一夜だったな、と思った。
    大事なこと?
    それは何だ?
    それは……、
    大事なことなどない、ということだ。
    これが大事と決めることが、すなわち理由というものであって、その理由に縋っていたのが、斬られた自分だったのだ。
    それが、間違いだったのだが、否、それが間違いだと決めることもまた、理由にほかならない。



    自分の刀は、なにも考えずに、襲いかかるものへ向かう。
    それを信じることが、剣の道だ。
    あの老人は、刀は人を斬る、人を殺すものだと言った。自分もそれを否定することはできない。
    しかし、この刀が抜かれ、振られるときには、良いも悪いもない。
    生も死もない。
    理由などなかったのだ。
    あるのは、筋、つまり道のみ。
    ただ、己の道があるだけだ'

  • 全てを失い、また全てを手に入れ、そして…素敵な終わり方

  •  そういえば、幻で見た血は、丸くなって宙を飛んでいた。雨が落ちる水面にも丸い模様ができる。月も丸いし、樹の実も丸い。丸いものは、留まることなく転がっていく。それは、流れる水が形を留めないのに似ている。
    episode2: Thinking sequence より

    「天とは、剣よりも上ですか?」
    episode4: Lining conference より

    『ヴォイド・シェイパ』シリーズ完結。作中の引用は『能・文楽・歌舞伎』。

    常に自分に問い、他者に問い、幾度も惑い、師の教えを反芻し、自分なりの答えを見つける。刀を抜き、交えるときの静けさはこの作家ならではだと思います。『スカイ・クロラ』シリーズを執筆されているときには構想があったそうで、このモードが自分の好みとかなり一致する部分が多く、読んでいるときは楽しい時間が過ごせました。中央公論新社から出る著者の小説はマスト。

    舞台は刀のある時代の日本ですが、大っぴらに武士道、侍道、剣豪小説、時代小説、という感じではありません。話の大枠はそれでも、風景描写というか風や樹々、山あいの景色、名もわからない鳥の鳴き声、季節や時間が自然がゆっくりした速度でうつろう様子が想像でき、それもこの小説の持つ魅力のひとつだと思います。

    5作とも引用は国内の書籍でかなり良い雰囲気です。反して、メインタイトルと各エピソードのタイトルは英語で統一されており、こういうのが海外にいくと面白いんじゃないかなと思うけど、どうなんでしょう。
    文庫の幾何学的な装丁も悪くはないけれど、単行本の、山、竹林、紅葉、霧、最後は桜の色彩豊かな写真も素敵です。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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