ヴォイド・シェイパ - The Void Shaper (中公文庫)
- 中央公論新社 (2013年4月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122057777
作品紹介・あらすじ
人は無だ。なにもかもない。ないものばかりが、自分を取り囲む-ある静かな朝、師から譲り受けた一振りの刀を背に、彼は山を下りた。世間を知らず、過去を持たぬ若き侍・ゼンは、問いかけ、思索し、そして剣を抜く。「強くなりたい」…ただそれだけのために。
感想・レビュー・書評
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森博嗣は読もう読もうと考えていたが、なかなかてを出せなかった作家。それはタイトルと装丁か小難しそうで読了に時間がかかりそうと踏んだからだ。
間違いだった!
この本は非常に面白く1日で読み終えてしまった。
ひとりの少年の成長を時代劇の形で追っていくのだが、「強さ」「死」「無」などに答えを見出そうと苦悶する主人公ゼンの心の内がテーマになっている。
テンポがよく、行間の余裕も素晴らしく、この作家の力量を感じた。代表作のミステリーも読んでみたくなった。 -
好きすぎてシリーズ3周しました。静かにゆっくり考えながら読める本です。世界観がとても良い。
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森 博嗣の著書は結構読んだけど時代物はちょっと……となんとなく避けていたシリーズ.良くも悪くも淡々と話が進むがテーマが濃いのでそれでバランスが取れているような印象を持った.伏線を張る段階だろうしここからどう話が転がるかわからないので評価は保留の意味を込めて星3.続刊に期待.
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森さん唯一の時代物シリーズ第1巻。控え目に言ってもめちゃくちゃ面白い!実際の歴史上の人物は登場しないフィクションなので、歴史分からなくても全く問題なく読めるのも良いところ。主人公ゼンは山奥で剣の達人によって育てられ、山から出たことも師匠以外の人間と会ったこともなかった。ある日その師匠が亡くなり、ゼンが旅に出るところから物語が始まる。自分の生い立ちも才能も、世の中のことも何も知らなかったゼンが、旅を通して自らのルーツを紐解いていく。クールで洗練されているのに心が揺さぶられる物語です。
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沈黙とは無である。しかし言葉にしてしまえば、それは有限であり、形ができるということは、それによってそぎおとされるものがあることを意味する。
言葉のやり取りによって共感を作り出そうとする限界がここにある。
真の共感は沈黙の中にあるのか? -
とても読み易い。読後感も清々しく、良い本を読んだと満足できる。嫌なことがあったときに読むとスッキリしそう。小中学生くらいの自分に読ませてあげたい。
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緩やかなストーリーと静かな語り口。物語の展開を楽しむというよりも主人公の口から語られる死生観を楽しむ本。
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ここ最近で一番手応えのある読書だった。
これは時代小説という名の哲学書。
人は詮無き事を考える。
でも人間は考える葦なのだ。
思考が流れ、溢れ、まとわりつき、過ぎてゆく。
それが何とも心地よくて、少し泣きそうになる。
「その人間の価値とは、その人間を知っている者が覚えているかぎり。ずっと残るもの。遠くにいても、この世にいなくても、価値は同じ。」 -
時代小説というか剣豪小説。主人公ゼンの一人称で語られるこの小説だが想像していたものより面白かった。時代小説というからもっと生臭い話を想像していたがそこは森先生、人の気配を感じはするもののその語り口はどこか硬質であり主人公の中身の「何もなさ」を表しているような気がする。今作ではカガンの行った事の本質に気付いたゼンだけれど、これから先はどんな事を知り気付いていくのか気になるところ。