嗤う伊右衛門 (中公文庫 き 31-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122043763

作品紹介・あらすじ

幽晦との境界が、破れている。内部の薄明が昏黒に洩れている。ならばそこから夜が染みて来る…。生まれてこのかた笑ったこともない生真面目な浪人、伊右衛門。疱瘡を病み顔崩れても凛として正しさを失わない女、岩-「四谷怪談」は今、極限の愛の物語へと昇華する!第二十五回泉鏡花文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 京極夏彦が描く「四谷怪談・於岩さん」。
    お岩さんとして、民谷岩を凛とした武家の娘に、伊右衛門を堅物だけれども、岩を思い民谷家の家督の為生きようとする堅実で優しい夫に。
    にしても、伊右衛門の上司、伊藤喜兵衛がワルでねえ。巷説の又市が登場しているから、どうにかしてくれるかと思ったけど、今回は助演の脇役でそれもままならず。
    夫と家督の為、伊藤に騙されて、家を出て一人暮らす岩。せめて伊右衛門の幸せを願って。そんな小さな願いも叶わなせず、怪談を悲恋に昇華させた作品でした。

    東京四谷に於岩稲荷田宮神社があって、縁切り神社として紹介されていて、何年か前お参りに行ったことがあります。田宮家のお屋敷の邸内社らしい。。
    という事は、お岩さんも手を合わせてたって事ですね。今更、ちょっと怖いわ、D瓶さん。

    • みんみんさん
      やっと伊右衛門が借りれまして…
      次に控えております( ̄▽ ̄)
      四谷怪談といえは天知茂…
      悲恋なのね?
      怖い?いや図太いから大丈夫なはずだ
      やっと伊右衛門が借りれまして…
      次に控えております( ̄▽ ̄)
      四谷怪談といえは天知茂…
      悲恋なのね?
      怖い?いや図太いから大丈夫なはずだ
      2023/01/14
    • 土瓶さん
      天知茂?
      といえば明智小五郎しか出てきません。
      暗くて静かな箱の中で読んでください。
      ダメか! 目が悪くなるな((´∀`))ケラケラ
      ...
      天知茂?
      といえば明智小五郎しか出てきません。
      暗くて静かな箱の中で読んでください。
      ダメか! 目が悪くなるな((´∀`))ケラケラ
      2023/01/14
    • おびのりさん
      おはようございます。
      土瓶さん、京極夏彦のことになると、語るよね!お好きなんでしょう。
      作品は、怖いというより悲しいね。そして、京極さん独自...
      おはようございます。
      土瓶さん、京極夏彦のことになると、語るよね!お好きなんでしょう。
      作品は、怖いというより悲しいね。そして、京極さん独自のお岩。
      遠野物語からの作品も出しているみたい。読んでも読んでも終わらない。
      2023/01/15
  • おどろおどろしい四谷怪談が京極先生の手によって読後暫く放心してしまう程、美しい純愛小説に。
    四谷怪談といえば、伊右衛門は極悪非道。お岩は控えめで、夫からの理不尽な仕打ちで亡くなり怨霊となって出てくる恐い女、というのが長年のイメージでした。
    ところが、嗤う伊右衛門での二人は全くの別人となっています。
    伊右衛門とお岩は本当は愛し合っているのだけど、不器用で、気付くのが遅かった。もしくは知らないままの方が良かったのか。

    ラストの二人は美しいです。

  • 時代ミステリー。素晴らしかった。
    京極夏彦氏の小説を読むのは4冊目くらいだと思うが、今まで読んだ妖怪ものと違う感じだった。
    とにかく切なさがあふれてきて、小説で久しぶりに泣いた。
    ストーリーは一言でいうと、ある下級武士が縁あって婿入りし、いろいろな事情に巻き込まれる。
    京極氏の描写もうまいし、複線の置き方も絶妙で、ミステリーとしても申し分ない完成度。
    それにしても、なかなかここまで救いがない小説は思い浮かばない。最後に「そうだったのか…」と心臓を握りつぶされるような痛みを感じた。

  • またまた、今更読んでみたシリーズ。なぜ今頃、この本に行き着いたのだったかな?うーん、全く思い出せない。

    四谷怪談の京極先生による新解釈。いや、解釈と言うより、京極版、と言うような。良く知られた「お岩さん」の話とはずいぶんと違っている。
    「木匠の伊右衛門」から始まるが、蚊帳が嫌いだと言いながら毎日必ず蚊帳を吊る伊右衛門。その日訪ねてきた直助と話しながらも、何だか夢なのか現実なのかもはっきりとしないような、蚊帳の内と外は、伊右衛門の思考の内側と外側のようにも感じられて、、、。とにかく、何だろうなあ、これ、と言うような始まりに、早くも、うーん、相変わらず京極先生の小説はちょっと読みにくくて、なかなかエンジンかからないんだよなあ、なんて思ってしまう。
    しかし、徐々に物語が進み、断片的に語られている人物や出来事がつながり始めると、伊右衛門と岩はどうなっていくのか、とページを捲る手が止まらなくなる。
    そして、最後まで読むと、伊右衛門がかたくなにこだわっていた蚊帳は外と内に境界を引く象徴のように感じてくる。伊右衛門や、それだけではない岩も梅も、皆そうかもしれない、内面は一向に外側には出てこない。出さないことで何か一線を設けて、自分を保っているかのような。
    それにしても、読んでいて辛くなる、救いのない話だった。裏表紙には「極限の愛の物語」とあったが、私には、ただ悲しいだけの物語だった。
    そして、なぜ、梅や四谷左門殿町の人々も、お岩の起こしている怪事だと思い恐れたのか。それは、疾しい気持ちがあるからだ。自分たちがお岩を追い詰めていた、と。それを思う時、本当に怖いのは人間だ、と、また悲しい救いのない気持ちになってしまうのだ。

  • 四谷怪談がこんなに面白くなると思わなかった。
    読ませるー。
    さすが京極夏彦。

    京極堂シリーズ以外ではじめて読んだ。
    映画にもなってるし、…まだ見てないけど。
    お岩を小雪のイメージで読んでしまった。
    伊右衛門は唐沢のイメージじゃないよなー。

    四谷怪談、有名なお岩さんの話。
    真面目な伊右衛門、凛としたお岩、その他 いろんな魅力的な登場人物もいい感じだったし なによりあの、おどろおどろしい四谷怪談が こんなきれいな話になってうれしかった。
    映画、見ようかなぁ。 でも、なんか、抵抗あるなぁ。

  • 怪談の中でも有名なお岩の話を全く違う目線で捉えた、新解釈の「四谷怪談」。いたずらに美辞麗句を弄するでもなく、冴え渡った夜の湖面のような、それでいて鮮やかな色彩が眼前に浮かぶような文体で壮麗なまでの演出を施し、畏るべき愛の物語に仕上げている。おぞましいほどの姿となってようやく成就する、この上なく、その愛の最後のかたちの美しさよ。後世に語り継ぐべき極上の恋物語。

  • 四谷怪談の話は、片顔崩れたお岩さんが怨霊となり、
    恨んだ相手を呪い殺す、くらいのことしか知らなかったけど、
    お岩さんの夫、伊右衛門を中心にした新解釈のお話し。

    岩の気高さ、頑固さ、聡明さが描かれていて、怪談話ではなく
    歴史小説として読んだ。
    ぶ厚いけど、文体のテンポがいいのでどんどん読める。

    喜兵衛の悪徳っぷりが徹底している。
    又市のキャラが好き。
    一番怖いのは、梅。
    最後はぞっとするけど、純愛にも感じる。

  • 読んでいて苦しかった。
    わかったことは妖怪や幽霊などよりもよっぽど人間の方が恐いということ。
    うまくいかずに自分のいいように捉え隠し明るく生きてみても、綻んだ瞬間の雪崩のような出来事にただただ、恐怖を感じる。
    小さなすれ違いから大きな誤解を生み、でもそれを埋めるにはそもそもの環境が違うわけで、解決方法さえわからずにいる…
    人間ってやはり複雑だなぁ、と。

    この小説、私は嫌いでした。
    ジワジワくる嫌悪感を持ちつつ、ただひたすら終わるのを待つだけ。
    でもやっぱり圧倒的なパワーがあって、読んでいて辛いのに途中で放り出すことはできないもどかしさ。
    また10年後読んでみたら違う感想が出てくるのだろうか。
    こんなにも嫌なのに間違いなく印象に残る一冊です。

  • 11月の9冊目。今年の195冊目。

    『しゃばけ』に続き、時代物を読みました。面白かったですね。ただ、残念なことに私の知識不足のせいで、いまいち建物や道具などがうまく頭の中でイメージできないですね。もともと『四谷怪談』という話が元ネタにあるらしいですが、それとは全然違うっていう話ですね。まぁ元ネタはこれを読むまで知らなかったし、内容もかじった程度なので、全然わかりませんがね。ただ、それでもこの本はそれ自体面白い。何が面白いって訊かれると難しい。色々後から来る感じですね。じわーっと。

  • 高田衛さんの解説により、又さんが四谷雑談集生まれと初めて知る…。
    こうなったらそちらも読んでみなきゃって読みやすいのあるかな。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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