エンデュアランス号漂流記 (中公文庫 B 9-5 BIBLIO)
- 中央公論新社 (2003年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122042254
感想・レビュー・書評
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およそ100年前、初の南極大陸横断を企てた英国のシャクルトン隊長自らによる探検記。
氷に閉ざされた世界で遭難しながらも奇跡の生還を果たす隊長自らの手記というだけあって、過酷で困難な旅の様子が緊張感をもって描かれていました。
よくもここまで残されているものかと、その記録の正確さにも目を見張りました。
そして、なんと言っても作者自身の隊長としてのリーダーシップの在り方には、現代にも通じ、とても考えさせられました。
自分のリーダーとしての力を磨かねばと思うのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
南極の氷に阻まれ、氷漬けにされ、さらに船を壊され…厚い氷の上を転々として救助を待つ探検隊の、全員が無事に救助された実話。極寒の中で波をかぶったり、テントの下の氷がいきなり割れて体が海に落ちたり、心身ともに諦めが支配してもおかしくない状況で、みんな協力して陸地を目指すのが、本当に探検家ってサバイバルに強い精神力を持ってるなーと。捕鯨船って南極近くまで行ってたんだ!あんまり感情に関する記載は多くないが、事実に目を向けて、今自分が何に対処すべきかに集中していた結果だと思う。
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南極探検時に起きた実話であり、どうやって過酷な状況から生還できたのか興味を持った。
次々に起こる非常事態の連続もそのシーンが目の前に浮かぶほど臨場感にあふれている。
本書から、絶望的な状況を乗り越えるのに必要なのはリーダーの様々な事態を想定する力、卓越した判断力、信頼できる仲間と少しばかりの運と思った。
我々の日常にも言える事で、常にプランBを準備し、自分の後を託せる者を育て、ポジティブでいることが大事だろう。
様々なシーンの中でも、限られた荷物を厳選し取捨選択する際に「文明社会でなければ用のない金貨を捨て家族の写真を携えることにした」場面が印象深い。 -
冒険・探検ものとして、もっとエキサイティングな筆致かと想像していたら、シャクルトン隊長による淡々とした航海・遭難の振り返り。第一次大戦の頃、こんな極限地帯で1年以上も遭難・漂流し、だれ一人の死者も出さずに生還できたことに驚き。人間の適応性、チャレンジ精神、協調性、リーダーシップなど、ポジティブな面がすべて詰まっている感じ。
他の感想・書評を見ると、経営のリーダーシップの題材としても取り上げられているというのは納得。VUCAでありOODAだろう。
誰でもリーダーになれるというわけではなく、やっぱり知識・経験・知力・体力を兼ね備えたうえで、しっかり準備をこなした人がリーダーになれるのだろう。(ちょっとしたリーダーシップ研修を受ければリーダーになれるのではなく、日々意識を持って取り組むという土台がないといけない、と思う。)
地図に経路と日付が付してあり、それをたどりながら読み進めることで、楽しさが増す。
Stay Homeで不満を言っても、家にはインターネットもあるし、本もあるし、料理も注文できる。彼らがおかれた境遇に比べれば、楽園ではないか。 -
本書は、1914年に最初の南極大陸横断を目指したシャクルトンが、壮途なかばエンデュアランス号を氷に砕かれて遭難し、氷海に投げ出されて孤立無援となった探検隊28名を率いて、全員を生還させた報告書の抄訳である。
その行程は、1914年8月にロンドンを発ち、同年12月に最後の寄港地南ジョージア島を出帆、南極大陸に接近しようとしたが、ウェッデル海の浮氷群に閉じ込められてしまう。1915年10月にエンデュアランス号が粉砕された後は、6ヶ月間浮氷に乗って漂い、1916年4月にエレファント島に上陸。直後、シャクルトン隊長は、22名の隊員をエレファント島に残し、救助隊を求めて、5名の隊員と共に全長わずか6mのボートで800マイル(約1,300㎞)離れた南ジョージア島へ16日間の決死の航海を敢行する。そして、南ジョージア島上陸後、3名の隊員を上陸地点に残し、2名の隊員と共に島の反対側にある捕鯨基地へ、雪に覆われた山と氷河を越える36時間の横断行を成し遂げる。南ジョージア島を発ってからなんと17ヶ月後が経っていた。更に、エレファント島に残った隊員を救助するために何度も船を出したが、浮氷に遮られて残留地に近づくことができず、彼らが救助されたのは1916年8月、シャクルトン隊長が救助を求めてエレファント島を離れてから4ヶ月半後のことである。
シャクルトンの自著であり、筆致は意外なほど淡々としているが(現代のノンフィクション・ライターなら遥かにドラマティックな表現をするのではあるまいか)、その記録は、本当に人間とはこれほどのことに耐え、ここまでのことが成し遂げられるものなのかという、驚くべきものである。
シャクルトンは、「わたしは当時のことを回想するとき、たしかに神の加護があったとしか考えられない」と記しているが、それに先立って、シャクルトン隊長と隊員たちの固い団結心、生死の境にあってなお失われることのなかった深い友情と信義、隊員たちの不屈の精神の、いずれかが欠けていても実現しなかったに違いないのである。
数ある冒険・探検・遭難からの生還の記録の中でも、稀有な感動の手記である。
(2017年10月了) -
1 どんな本?
南極横断を壮図するシャクルトン隊長の手記を
書籍化したもの。船を失うが、全員の命を救う為
に過酷を極める状況の中、諦めず艱難辛苦を乗り
越えるお話(ノンフィクション)。己と比較して自
己の現在の幸運、幸福に気づかせてくれる本。訳
者の機転により専門用語等を省略しているので読
みやすい本。
2 何で読んだの?
(1) 自己を奮い立たせる為に。
(2) 己が如何に恵まれてるか実感したい。
(3) 日々を前向きで生きる状態になりたい。
3 構 成
全7章191頁
ウェッデル海に出発するところから始まり、エレ
ファント島での生活で終わる。最初に海図で説明
があるが理解出来ないが、読後見るととても分か
りやすい。
4 著者の問題提起
自己の使命は?
5 命題に至った理由
船を失い、過酷な海でリーダーとしての責務を
果たさなければならない状況から。
6 著者の解
隊員を安全に帰還させる事
7 重要な語句・文
(1) 浮氷
(2) 氷丘
(3) ペンギン・アザラシ・アホウドリ
(4) エレファント島
(5) 南ジョージア島
(6) 戦争
8 感 想
元気が出た。シャクルトンの様に常に目標に対
して真摯に行きたいと思った。
刺さったのは、何回も諦めないところ。普通の
人は4回は絶望すると思う。こうなる事も事前に
考えていたとの記述もあるので準備の大切さを感
じた。
深く知りたい事は、色々道具の事。持っている
物はもちろん、アザラシの油のランプとかどうや
ってんだろ?
人に勧めるなら、艱難辛苦を乗り越えた人々で
も戦争の話を聞いて驚愕している事。戦争ばりに
辛い思いをした人たちが驚くのは争い殺し合う部
分だろう。
最初の海図のおかげで読後の振り返りが容易。
タイトルの船は早々に失うのが意外。事件とし
てはタイトル通りかな。
差別心かもしれないが、外国人でこんなに我慢
強く誇り高い人達が居るのは驚きだ。人類は皆同
じだと感じた。
9 TODO
(1) 次の艱難辛苦を乗り越えたノンフィクション
の購入
(2) 目標の作成・見直し(目指す先があるから計
画や努力が出来る。)
10 問 い
人種や国籍とは?
11 答 え
いずれ一つになるもの
(3)
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新上司に勧められて。
1900年初頭イギリスの探検家、シャクルトンの南極横断手記。
人間って根性あんな。10分とて無理だわ。22ヶ月。。。
結局失敗してるんだけど、その道中の超過酷状況でのリーダーとしての判断、、、
近年見直されてるらしいです。もう少し調べてみよう。
訳本としてはなかなか読み進めづらく大変でした。 -
アムンセンとスコットが南極点到達を果たした直後の1914年、今度はシャクルトンによって南極大陸横断が企図された。だが、シャクルトン隊は大陸にたどり着くことなく、氷の海に閉じ込められ、前進も後退もできなくなってしまう。エンデュアランス(「不屈の精神」の意)号を氷に押しつぶされて失い、浮氷に乗って漂流するほかなくなった。割れ始めた氷上のキャンプを捨て、極寒の氷海にボートを漕ぎ出し、死に物狂いで全員が無人島にたどり着くも、救助を求め、シャクルトンは再び暴風圏の海に戻るのだった。この緯度特有の疾風と怒涛、あり合わせの材料で補強したボート、氷が付いて重くなった帆、腐った寝袋、塩分の入った飲み水、極度の疲労、地図にない場所…と、生還がまさに奇跡の大冒険劇が綴られているのが本書である。
シャクルトンのことは本書を読むまで知らかなかった。南極点に到達しなかった人物で科学史には残らないからだろうか、訳出も少ないらしい(本書も原著から省略されたところがあるそう)。シャクルトンは極点には達しなかったかもしれないが、不可能と思われることを可能だと証明した。「我々は不屈の精神でここまでやれる、どんな状況でも頭を上げて立ち向かう力がある」と人類の可能性や潜在能力に前人未踏の塚を築いたという意味で、極点到達と同等かそれ以上にこの冒険は意味があつたと思う。
奇跡の生還を果たした人たちのうちの何人かはその後すぐ戦争で亡くなった。彼らの生に対する決意、帰還への執着といったものが無碍にされたようで悔しく無念に思うのは、きっと現代のカウチポテト読者のセンチメンタルな解釈だろう。探検も戦争のように国威をかけて行われていたのだし、何より艱難を求める者でなければわざわざ南極など目指さないのだから、生還したところで何度でも死地に赴くだろう。そのDNAを引き継ぐ者たちが、代々の人類を新たな場所に連れて行ってくれているのかもしれない。
*完訳でなく、ロス海支援隊の部分が割愛されているのには注意が必要
*その後、隊のほぼ全員が叙勲にあずかるが、シャクルトンが全員は推薦しなかったという…(ケリー・テイラー=ルイス『シャクルトンに消された男たちー南極横断隊の悲劇』参照) -
世界初の南極大陸横断を目指したシャクルトン率いる探検隊の顛末を綴った手記。隊長であるシャクルトン自らが書き記したものだけあり、細かく鮮明に描写されている。
シャクルトン隊の船、エンデュアランス号は1914年
に亜南極の島から出航する。しかし、エンデュアランス号は南極本土に上陸する前に巨大な流氷に挟まれ身動きが取れなくなった上に船も破壊される。
シャクルトンらは船から脱出して流氷の上に乗って漂流、流氷の上を伝って北上する。そして救命ボートを出して荒海を渡りサウスジョージア島に辿り着き、誰ひとり欠くことなく生還する。
まずストーリーが壮絶。描写も生々しい。南極の激寒、厳しい大自然、絶望、絶望のなかにもなんとか希望を見出そうとする強靭な意志、仲間への信頼、読んでいるだけなのに非常に緊張感を感じた。今から100年以上前、現代に比べれば装備も遥かに貧弱な中でこの冒険をやり遂げた人たちがいるというのはとんでもないことだ。
私はそこに人間の本質的なベンチャースピリッツを見た。危険を厭わず未知を開拓するという姿勢が、人類をアフリカのジャングルから世界中に拡散させてきたのだろう。
またシャクルトンらが南極から生還した時、本国イギリスは第一次世界大戦の真っ只中にあったが、それに際して彼らが抱いた感想が個人的には面白かった。
「われわれは死の世界から、狂気の世界にかえってきた人間であるように思えた。
われわれが去ってきたつめたい氷の世界とはちがって、戦争とはなんと陰惨で熱いものなのだろう。」
彼らが半死半生、自然と格闘して必死で生還した文明世界では、人間たちが文明の力を遺憾なく使って互いに殺し合いをしている。なんと人間の愚かなことか。
(とはいえシャクルトンらはその後、強く従軍を希望し、実際に参戦している。大義のために命を懸けるという意味では同じ穴の狢なのかもしれない。)
100年以上前の手記であり、前提条件も表現も違うため冒頭は読みずらかったが、徐々にこの本の世界に嵌まっていった。
雄大な自然と人間の格闘、極限状態で浮き彫りとなるリーダーシップの本質が味わえる名著。 -
寒いのが苦手なのでわしには絶対無理な漂流である。
人間を狙うサカマタクジラ。後で調べたらシャチをサカマタと言うらしい。
アザラシとペンギン。味はともかくたくさん居てよかった。