科挙: 中国の試験地獄 (中公文庫 み 22-18 BIBLIO)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122041707

感想・レビュー・書評

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  • 科挙については、浅田次郎の「蒼穹の昴」以来、興味があったが、本書はその内容を丁寧に説明してくれている。

    以前読んだ「西太后」もそうだが、中国や中国人の考えの成り立ちを思う上でとても参考になった。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    中国の隋王朝に誕生した科挙制度
    試験で官僚を登用するために誕生した制度であるということは知っていたが、制度が清王朝まで中断を挟みながらも継続して実施され続けた事や年数を経過する中で複雑化していた事は初めて知った。
    一方で科挙で広く官僚を集めたことで政治において、貴族による世襲が徐々に衰退し、皇帝による中央集権化が進んだということは非常に面白く感じた。

  • 子供のころから選抜されて何度も何度も試験、進士まで資格がいくつか。
    隋代から始まり1904年まで。武挙や制挙もあったが重用されず。
    文が武を支配下に。
    官吏登用試験はヨーロッパより1000年も早かった。
    カンニングや賄賂も横行。
    閉じ込められて試験、気がふれるものあり、怪談あり。
    学校制度とは別に。

  • 中国の昔でも環境による教育の差はあった。
    官僚に求められるのは風采、荘重な応対、技能
    恩顧と親分子分

  • 新書文庫

  • 受験戦争のための題材は科学・数学ではなく四書五経と詩…もしこれが科学であったら中国、ひいては世界の発展にどれほど寄与したのか知れない。当然のごとく流された「科学・数学は商人・町人がやるもの」という一節はなかなか興味深い。

    科挙の受験制度は面白い。もし受験前にこれを読めば受験に対する考えは大幅に変わっただろう。賄賂が当たり前と読む前は思っていたが、天子にとってみれば有益な人材を登用したいわけだから、ここまで徹底して平等にとこだわるのも納得がいく。

    何度も試験をくぐり抜け、いよいよ科挙に合格しても、末年には飽和していたというのには、どれほど難解であろうと合格者をとり続ける限り、訪れる当然の結果ではあるが、現代においてもこれは見られる問題であると思う。

    全体としてはとても面白かった。現代日本の教育制度についてはいろいろ文句たらたらだが、本書を読むと凄まじく進歩しているのだと実感できる。

  • ○中学生にとって四書五経の暗記は当たり前!なんて時代だったら、試験はどうなるのだろうかと思います。西暦は6世紀、隋の文帝によって設けられた科挙制度(”科”目による選”挙”)。本書は科挙がもっとも発展した清朝末期に焦点を当て、その試験地獄の姿を描き出します。

    ○貴族政治による弊害に対して、天子がその権力を確立し、優れた人材を集めるための科挙制度。文帝の試みは次の唐代に入ってようやく一定の成功を収め、科挙全盛期の時代が始まります……とはウィキペディアでもわかることなのですが、この本が面白いのは、広い視点で科挙制度を軸にした官僚制を検討するだけでなく、細かな視点で科挙制度の厳しさ、はびこる迷信を鮮やかに描き出していることです。

    ○科挙制度の問題はいくつかありますが、ぼくが印象に残ったのは学校を有名無実にしてしまったということです。学校は科挙試験への踏み台にすぎないからと、学校内の歳試を平気ですっぽかす生徒(生員)。そして、優秀な人材は科挙で集まるからといって教育制度への投資を行わなかった政府。科挙制度を中心にしてきわめて先進的な官僚制を作り上げた中国でしたが、のち清朝に入ると欧米に対して教育での遅れが明らかになります。学校制度の重要性を唱えていたのは、王安石ただ一人だったのでしょうか……。

    ○ほか、試験中にこれ幸いとばかりに復讐を行う幽霊が現れたり(たとえ呪い殺されても試験中も門は開かれないので、死体は窓から捨てます!)、科挙に合格したころには老人になってしまったという人が年齢を聞かれて「五十年前二十三」と答えたという話があったり、カンニング本や四書五経を書いたカンニングシャツなるものがあったり、もうとにかく何でもアリといった感じでとても面白いです。

    ○いろいろ書きたいですがまとまらないので再読したいです。

  • 西暦6世紀の隋の時代から始まった有名な試験制度。優秀な官僚を育成することにより貴族政治から脱却を図った。四書五経だけでも43万文字があり、それをすべて暗記しなければならないのでとんでもなく過酷な試験で、学校に入るための試験(学校試)が県試、府試、院試の3段階あり入学が許可される、学校でさらに定期試験にあたる歳試があった。この後に本当の科挙と呼ばれる3年に1回開催される試験が、郷試(地方で開催される)、会試(中央に集まって開催される)、院試(天子の前で試験を受ける)と3段階あった。倍率は100倍くらい。郷試、会試は1カ月にわたり外部との接触を遮断された独房生活を強いられる過酷な試験であった。

  • 主に清時代の完全形態としての科挙に焦点があてられ、これでもかというほど詳細に記述される。科挙にまつわるエピソードが非常に多く伝えられていることが印象的だった。どれほど心血が注がれていたかが推察される。今の日本の受験戦争が顔負するように感じられるのは、そこに掛けられたものの重みが圧倒的に劣るからだろうと。

  • 雑然とした施設に二晩三日閉じ込められ、中には、精神的に追い詰められて発狂した受験生が登場するくだりを読むと、かつては「受験地獄」と評された日本の大学受験なんて、科挙の足下にも及ばないと分かる。中学・高校の時にこも本を読んでいたら、また違った人生になったかも。

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著者プロフィール

1901-95年。長野県生まれ。京都帝国大学文学部史学科卒業。京都大学名誉教授。文学博士(京都大学)。文化功労者。専門は,東洋史学。主な著書に『東洋に於ける素朴主義の民族と文明主義の社会』(1940年)、『アジア史概説』全2巻(1947-48年)、『雍正帝』(1950年)、『九品官人法の研究』(1956年、日本学士院賞)、『科挙』(1963年)、『水滸伝』(1972年)、『論語の新研究』(1974年)、『中国史』全2巻(1983年)ほか多数。『宮崎市定全集』全24巻+別巻1(1991-94年)がある。

「2021年 『素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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