神の代理人 改版 (中公文庫 し 4-7)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (617ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122025554

作品紹介・あらすじ

枢機卿のポストでサヴォナローラを懐柔しようとしたアレッサンドロ六世、遊びと祭りが大好きで巨額の借金を残して死んだレオーネ十世ら、ルネサンスに君臨した四人の法王たちの、宗教と政治の間に展開される生臭い権力葛藤のドラマ。原史料を駆使し、精巧な構成と新鮮な語り口で史伝の面白さを伝える。

感想・レビュー・書評

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  • ルネッサンス時代のローマ教会に君臨した四人の法王をえがいた歴史小説です。

    「最後の十字軍」は、聖戦の理念を掲げてヨーロッパ諸国に十字軍の結成を呼びかけるも、その意志を実現することがかなわず苦悩するピオ二世をえがいています。

    「アレッサンドロ六世とサヴォナローラ」は、フィレンツェの人びとを熱狂の渦に巻き込んだサヴォナローラが没落していくまでの経過を冷徹なまなざしで見据えるアレッサンドロ六世の老獪さが、周辺人物の視点をとおしてえがかれています。

    「剣と十字架」は、ボルジア家に勝利して法王の座に上りつめ、その後も戦いに明け暮れたジュリオ二世を、やや突き放した視点からえがきます。

    「ローマ・十六世紀初頭」は、そのジュリオ二世の起こした戦争の後始末を引き受けたレオーネ十世があつかわれています。「わたしは、人間本来の陽気さと、死に対する平穏さに欠けた世界では生きる気がしない」と彼に語らせている著者が、この容易に尻尾をつかませない人物に対して、どこか温かいまなざしを注いでいることがうかがえるように思いました。

  • ルネッサンス期法王4代の話。
    Wolf Hallと最後のほうちょっとだけ時代的にも被ることもあって、面白く読んだ。
    塩野七生はボルジア好きで、現実主義者好きで、理想家は嫌いだよねえ、と改めて思う。まあおっしゃることにはいつも通り一理あります。

    ただ、ボルジアが私欲で動いていても王者として悪くない(最後マラリアにさえならなければ)のはあくまで圧倒的な能力があったからだよなあとか、ルターの改革に関して、北方の人のイタリアに対する気持ちを「嫉妬」で片づけるのは(登場人物に言わせていることなので塩野さんの意見とは違うだろうが)恵まれたものの傲慢だよなあとか思いました。
    世界共通語だったラテン語を比較的簡単に理解できるイタリア人と違って、聖書(に代表される書物)を母国語にしてもらえなかったら、北方人はごく基礎的な知識すら身に着けることが難しかったのだろうから、嫉妬というより死活問題で、そこで母国語で勉強できる道が開けて庶民の教養が底上げされたからこそその後の北ヨーロッパの隆盛があるんじゃないのかなあと。

  • ヨハネ・パウロ2世が、地元にやってきたときのことを覚えている。わたしは小学生で、このときに、「ローマ法王」という人がいることを初めて知ったのだ。その後、ローマ法王が単なる宗教家ではなく政治家であったことを知ったのが、この本。法王が亡くなり、新法王が選出された今、ものすごく読み返したくなってしまった。


    以前読んだ時に、一番おもしろくて気に入っていたのが、悪名高いボルジア家出身のアレッサンドロ6世の章だったのだが、やはり現在読んでも面白い。


    そして今回読んで印象に残ったのが、ジュリオ2世。「全身これ神経」(byマキャヴェッリ)といわれる彼が、10ページに1回ぐらいの割合で、怒り狂い、怒鳴り散らしているのが笑える。法王によるイタリア統治という政治的野心が、利用したはずの外国軍の勢力拡大で叶わないのが、滑稽で哀れだ。じつは現法王が選出されてからというもの、現法王の顔がジュリオ2世の怒る姿にオーバーラップし始めていて、申し訳ないような気持ちになりながらもおかしい。


    取り上げられている4人の法王は全員、非常に人間くさく、ピオ2世以外は俗臭ぷんぷん。そこが面白くもあり、ある意味親しみのもてるところでもある。宗教は、政治力がないと勢力を拡大できないであろうことを考えると、それも当然か。

  • キリスト教って唯一神かと思ったが、聖人がたくさんいるのね。神道みたいな感じ?そして、やはりルネサンス末期のイタリアは面白いなぁ。てか、塩野さんの本は面白いなぁ。

  • 信仰にもとづく行動の善悪はどう判断されるべきか、考えさせられる一冊。結局、同時代ではなく、後世にて広範な視点からしか考えられないことなのであろう。

  • ルネッサンス時代のローマ法皇四人をとりあげた歴史書。創作も多少入っているようだ。ボルジア家、メディチ家、十字軍、イタリア各共和国の勢力争い・・・空前の力を誇った法皇とその周辺の人々の人間模様。

  • サヴォナローラを諭す、アレッサンドロ六世の書簡がとても理性的で戦略的。
    狂信的な彼の矛盾があらわになっていく過程に、一種のカタルシスを感じます。

  • もともとハードカバーの頃に読みました。塩野作品としては比較的初期のものです。ルネサンス期に選ばれたローマ法王のうち、4人を取りあげた作品です。どのローマ法王も、「これが天国の鍵を預かる人物?」と思ってしまうほどの俗物っぷり(笑)。それほどに、塩野さんの筆致は容赦ないです。これは彼らをおとしめているわけではなく、「彼らも結局『人間』である」という視点に立った描写をしているからであり、信仰自体にケチをつけているわけではないのは、最初の数ページを繰れば一目瞭然です。構成からいえば、『アレッサンドロ6世とサヴォナローラ』が面白いと思います。聖職者どうしといえばそうだし、明らかに「俗物 vs. 清貧の行者(ただ、サヴォナローラが本当にそうかということについて、私は詳しくないので深くは触れられませんけど)」の構図ですし…それに加えて、微妙な近親憎悪のような感触が面白いです。また、『最後の十字軍』では、十字軍に幕を引こうとするよりも、「十字軍の栄光再び!」と奔走する、妄執としかいいようのない法王の熱意が強烈に迫ってきます。月日を過ぎても、読むとワクワクしてしまうので、この☆の数です。それに、学生時代に読んでいたときに、表紙を一瞥して「ローマ法王の本ね」とさらっと言った友人に感動した思い出の本でもあります(笑)。

  • 1996年5月19日初読。

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  • チェーザレのお父さんアレッサンドロ6世他、ルネサンス時代の教皇たちのお話。戦争が好きだったり、子どもがいたり、人間復興しちゃってます。教皇たちの物語なのに、サヴォナローラが1番印象に残ってたりします。

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