花闇 (中公文庫 み 17-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122019560

感想・レビュー・書評

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  • 北森 鴻の『狂乱廿四考』で知った歌舞伎役者・三代目澤村田之助。

    やばい。
    ハマってしまったみたい。

    この江戸末期に咲いた、妖艶で壮絶な華のような役者をもっと知りたい一心で
    手にした皆川作品。
    元々好きだったこの人のひやりと冷めた、それでいてまとわりつくような
    エロティシズムを醸し出す筆致が、
    咲き誇り、人々の欲望をかきたて、やがて腐乱して果てた田之助と
    彼を取り巻く“江戸歌舞伎”の終焉を見事に描き出している。

    私は歌舞伎についてけして明るくはないけれど、
    この本の解説者・今野裕一氏によれば
    「今の“板の上”(現在の歌舞伎の現状)は余りに健康すぎる」
    のだそうだ。
    これには何だか至極納得してしまった。

    男が女の身なり・仕草を真似、どこにもいるはずのない幻想の女を演じる
    歌舞伎の世界。
    それだけで私には既に倒錯の世界のように思われる。
    ちなみにこれは私の中では褒め言葉です。念のため。

    強烈な香りで人々を圧倒した華はまた、
    強烈な腐臭を放って朽ちてゆく。
    しかし腐れば腐るほど
    その身は純度の高いものと化してゆく。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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