- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121600936
感想・レビュー・書評
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高坂正堯 「宰相 吉田茂」
戦争で負けた後に 経済で勝った 吉田茂の政治姿勢、外交手腕、戦後復興の在り方を論述した本。
吉田茂の民主主義の考え方〜世論とナショナリズムを拒否し、民主主義を 政治のルールと考え そのルールを守る〜が 戦後復興を進めた とする論調
著者の言葉「これから 我々が生きていくのは、ナショナリズム と インターナショナリズム と 個人主義の絡み合った複雑な世界」は現在にも通じる至言
吉田茂の凄さは 「 戦争で負けても 外交で勝った」外交手腕
*外交とは 条約の権力を活用して 国家利益を追求するゲーム
*軍事力は 肯定も否定もせず、二次的な地位しか与えない
*経済的な力と国家的利益の立場で国際政治を考えていた
*国際関係において最も重要なのは その国が富み栄えていること
*日本は経済関係の網の目を張り巡らすことが立国の基本〜国際政治において軍事力は二次的
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「真実の教養とは、それまでの生活で得たものに自信を持つが故に、新しい状況などには驚かず、『新知識』に劣等感を持たず、堂々と自己の生き方を貫く能力に他ならないのである」(264頁)
返却期限が迫っていなければ、もう一周読みたかった。そうすればもっと理解できただろうなぁ、と思う。 -
吉田茂論のみかと思いきや、
吉田以後についても取り上げていた。
また、一緒に収録されている「妥協的諸提案」も興味深い。
前からメディア報道に対して抱いていた違和感を
上手く代弁してもらった気がする。
ネットの出現で世論の形成がどう変わっているのやら。
この手の本を読み始める前は、
吉田茂については講和と安保の人というイメージしか無かった。
本書により、彼がいかに類稀な外交能力を持っていたことが分かり、
その能力を戦後直下の状況でどう発揮したかが分かる。
特にGHQとの駆け引き、折衝にそれを見ることができるだろう。
そしてその能力と性格故に、復興を始めた時期の日本の政治には
いかに適さなかったのかが分かる。 -
バランスのとれた吉田茂評。今読んでも鋭い洞察(特に、妥協的諸提案)がちりばめられた一冊。大きなシンボルに頼るのではない、実務的な政治を理想とした筆者の考えに共感。
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新書で1500円もするなんて・・・!
とレジでびっくりしましたが、読み進めていくうちにその価値がある一冊だと感じました。
本書の主題である「吉田茂」は、日本の現代史を語る上でさけては通れません。なぜなら彼が残した遺産は、今なお日本外交に影響を及ぼしているからです。それが一体何であるかは、是非よんで確認してみてください。 -
現在の日本を取り巻く国際政治が、突然わき起こったことではなく、過去からの積み重ねであることを、具体的事例で読むことができる。
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戦後の日本を牽引した吉田茂に対する高坂正堯先生の論文ですが,扱っているテーマは高坂先生が「あとがき」で書いていらっしゃるように主に2つです。一つは終戦直後の日本を牽引した「吉田茂」に対する論評と戦後の日本の政治の評価,もう一つは「世論と政治の関係」です。
吉田茂に対しては,「吉田茂は偉大な政治家であった。」とし,戦後直後の日本を取り巻く環境から,吉田茂の取った政策を現実主義的な観点から高く評価されています。他の高坂先生の作品でもそうですが,塩野七生さんとの共通点も多く見られます。特に,現実に根ざした認識や外交に対する姿勢などは,塩野さんとほとんど共通しているといってもいいのではないでしょうか。
もう一つのテーマである「世論と政治の関係」では,「現在の日本においては,政治と世論の間の有機的な連関が欠けている」ことが一貫して主張とされています。3つ目の論文の「妥協的諸提案」で世論とマスコミのあり方が取り上げられていますが,当時と現在とでは,扱う問題の内容や,マスコミのあり方が変わっているとはいえ,共通しているところも多くあり,40年近く経っても,日本ではこのテーマに関する状況は大きく変わっていないのではないかと考えられるのではないでしょうか。
日本が直面する課題に対する政治の現状を考えるとき,終戦直後の困難な時期を乗り切った政治家である吉田茂に対する論評と日本の世論と政治の関係を扱ったこの作品が示唆する内容は,まだまだその現代的価値やその意義を失っていないと考えます。 -
戦後における政治家としての矜持。
主張が単純・明快であり、初志貫徹であること。
自分が政治家に求めるものを兼ね備えている・・とそんな単純なものではないかもしれないが、今の政党、官僚に「個としての責任・矜持」を感じられないことの裏返しかもしれない。
2012年9月のNHKドラマ(渡辺謙さん主演)も待ち遠しい。 -
戦争で負けて外交に勝った。
吉田は国際政治について確固たる哲学を持ち、その哲学が指し示す地位を日本に与えようとした。
吉田は日本とドイツの国家関係を作るためには借款が一番よいと理解していた。国家関係を維持していくには借款がよい。
日本を復興させるものは教育以外にはない。自分たちは戦争によって国家を荒廃させ、何も子孫に与えるものを持っていなかったが、せめて立派な教育だけはしてやりたいという気持ちを持っていた。
吉田の葉巻と白足袋姿の贅沢さは、国民の当時の生活とかけ離れていたが、しかし国民はひそかにこ気味よく思っていた。配線によって打ちひしがれていた日本の栄光となごりを見出した。彼が強い信念を持ち、変動する時代の中で筋を通してきた自分つであることを感じ取り、そうした人物を必要としていると判断した。