新装版 役人道入門――組織人のためのメソッド (中公新書ラクレ)
- 中央公論新社 (2018年11月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121506375
作品紹介・あらすじ
公文書を巡る不祥事が相次ぎ、財務省や文科省など「官」への信頼が失墜している。成熟した政と官のあり方、あるべき官僚の姿とは? 「官僚組織のリーダーが判断を誤ればその影響は広く国民に及ぶ」。34年間役人をつとめた財務官僚による警世と愛惜の書を新装版で緊急出版!
文章の書き方から、国内外での交渉術、上司への仕え方や部下への接し方、人事の心得、心身の健康維持まで――。著者の経験をふんだんに盛り込みながら紹介される具体的なノウハウは、リーダーの育成を心がけている指導者の地位にある人やリーダーとなるべく努力をしている若手など、組織に身を置くあらゆる人に有効な方策となる。
感想・レビュー・書評
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霞ヶ関の本省エリートの方の本だけあって、文章の構成、主張、論拠が整理されていてその点で読みやすい。
係長、課長補佐、課長、審議官、局長、次官に至る霞ヶ関の組織や人事の話は、中にいる人でないと分からない世界のことなので興味深い。
霞ヶ関本省に対する国民からの目線は、過大評価と過小評価が混じっているのを感じた。働いているのは限られた数の人間であって、無限の仕事をこなせるわけではない。「どんなに疲れていても、もう一戦交える体力を残しておかなければならない」という一説が印象的。
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まあまあ、もっとはっきり書いてくれた方が読みやすい
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役人道とのタイトルだが、組織で働く人全員に何かしらの学びがある本だと思う。文体は小難しめだけれど、構成や文構造がシンプルなせいか、とても読みやすい。特に、前半の文書・交渉と、後半の健康の部分が学びになった。また、公務員がどんなことを考えて仕事をしてるのか知らなかったので、それを垣間見れたのも良かった。
文書
・ふさわしい表現、適切な文書はただひとつ
・文書は分析・検討・説得の三種類
・文章は速く書く(通常時間がかかるのは内容を考えるフェーズ)
・机に向かいながらではなく歩きながら考える
交渉
・話を聞くこと。話題の奥の重要事項を探る。
・相手の話し方のクセを見極める。
・意思疎通。述語の使い方。できれば文書化すると良い。
・誰に対しても同じ言葉で説明する。
組織
・上司の発言は0.8で割る
・上司の記憶力は、その人が興味をもつ対象かどうかで著しく変わる
・ポストが低いときにしか学べないことがある
人事
・人は自分自身を過大評価する -
国の役人が働く際のヒントが具体的に、交渉や文章の書き方、組織の中での役割、体調管理などさまざまな側面から書かれていた。役人の仕事や生活の実態について知るのにもとてと良い本だった。係員から始まるキャリアからステップアップするけど、その時のポストでしっかり身につけるべきことを身につけることの大切さや、求められた時のために政策を考えておくことの大切さなど、とても勉強になることが多かった。
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「仕事上の知恵と技法が満載。官僚について知るための最良の書」という佐藤優の推薦に加え、「ビジネスパーソン、中央官庁職員らが絶賛」ということで購入。本書では、文書の書き方から難敵との交渉術、上司への仕え方や部下への接し方、人事の心得、心身の健康維持などが著者の経験をもとに述べられる。大蔵省のキャリア官僚として猛烈に働き、そして数々の成果を生んできた著者が語る仕事上でのノウハウは、役人のみならず、組織に身を置くあらゆる人にとって有益なものだと思う。
著者が「あとがき」で述べている次のことは、本書を貫く著者の思想であるとともに、仕事に対する心構えとして、公務員に限らず忘れてはならないことだと思う。
「役人は、国家が国家として成立するための礎であり、これは洋の東西を問わず、また歴史上古今を問わず真実である。繁栄する国には、敏速に正確な政策を立案し、これを満遍なく、また、状況のいかんにかかわらず中立的に、効果的にかつ、タイミング良く実施しうる官僚制度があり、それを可能にする役人がいる。時に応じた政策を立案することができず、その政策の実施が非効率的であったり、その実施の濃淡が地域やその対象者によってバラつきがあったりすれば、それは国力を弱め、はなはだしい場合にはその国を滅亡させる。その時代の、その国のおかれている環境に最も適した官僚制度を持ち、それを的確に動かしうる役人を持つことは、国の存立にかかわることである。役人は、アマチュアであってはならない。彼らは、公務員であることにおいてプロフェッショナルでなければならない。そして、彼らをプロフェッショナルたらしめているのは役人としての技術である。そして、その技術たるや法律、土木、経済といったその専門分野についての技術に尽きるのではない。正確な文章を書くこと、論理に基づいてキチンとした交渉をすること、といったプロフェッショナルな役人として当然の技術を持っていなければならないのである。役人たる者、なかんずく役人のプロたらんとする者は、常にこの技術の修得、質の向上に努めなければならない。その道の蘊奥を究めるべく、日夜研鑽に励まなければならない。そして、果たして自分は己れの給与に見合うだけの技術を持っているだろうか、それに値する働きをしているだろうか、ということを、常に自らに問いかけなければならない。」(「あとがき」) -
財務省に長らく奉職し、2000年に国土次官を務めて退官した人物が、34年間の役人人生で見出した役人道について説く。わかりやすく読みやすく、頭がいい人が書いたんだろうなと思う。そして役人としての矜恃というのがヒシヒシ感じられる。おかげで役人という仕事の重要性と求められる倫理のようなものも見えた。
専門分野ではなく一般に役人に求められるものが列挙されており、文章、交渉、組織、人事、健康、そして世界の役人の6章から成る。
特に文章については、厳密かつ正確な文章を書くことが古今東西を問わず役人にとって重要な仕事であり、それがいかに難しいか、そしてそれに苦吟したことがなければそういった文章を正確に読み解けないという話は、その文にこもった筆者の思いが感じられて胸が熱くなった。また、読む人や状況を考えて書いたり、歩きながら考えるといいといったコツなども紹介されている。
他にも実体験に基づいた面白い話がいろいろ。 -
役人に求められる資質は、文章力、交渉力、健康。
ハウツーから組織論、制度論まで、幅広く役人とは何かがわかる本。
新書サイズに、著者の役人人生が濃縮されている。
公務員なら座右の書としても良いくらい、民間の組織人であっても得るところの多い本だと思う。 -
■文書に3種類
・分析の文書
・検討の文書
・説得の文書
■多忙の仕事が長く続く場合の対処の仕方
①無用の体力の消耗を防ぐ
②どんなに疲れていても常にあと一戦を戦えるだけの余力を残しておく -
半分著者の自分語りなのは否めないものの、かつての霞ヶ関官僚がどんな価値観で仕事をしていたのかを知る一端になる本。
冒頭の章で、官僚にとって文章を書く力は重要。官僚の文章は分かりにくいと言われるけど正確を期しているから。という論があるけど、ここはなんとなく法務の見られ方にも繋がるな〜と。契約書の文章分かりづらいって文句言われますけど、解釈にブレがないよう正確に書こうとするとだいたいこう収束するんですってのを分かってもらいたい。(ただの自分の愚痴)
あと自分の個人的な学びポイントは、我の強い部下に上司としてどう接するかについて、「解釈の議論は対等だが価値判断は上司である自分を優先する」というルールを作ったというところ。自分が上司より正確な解釈をしてるとはゆめゆめ思ってないけど、全てについて上司確認を取ることはできないわけで、少なくとも価値判断であるポイントについては上司に必ず判断を仰ぐという基準ができた。 -
国家公務員の考え方を如実に語られており、巷で発行される経済雑誌の記述よりも、大変リアルである。
また、公務員に対しては、業務で必要な知恵や知識を与えてくれる。
組織人として生きていく上でも必携の書。