上皇の日本史 (中公新書ラクレ 630)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121506306

作品紹介・あらすじ

2019年、江戸時代の光格天皇以来、200年ぶりの譲位が行われる。長い天皇の歴史のなかで、「上皇」という存在は、どのような政治的、制度的、社会的な役割を担ってきたのか? その誕生から今日まで、歴史のなかの上皇を、第一人者の人気歴史学者が徹底解説する。

感想・レビュー・書評

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  • まるで紳士録のようだった「名前でよむ天皇の歴史」の関連書のつもりで手に取ったから、彼我のギャップに驚いた。とにかく「俺が俺が」の、ものすごく濃い自己主張。
    「これまでの通説はこうだったけど、私の見るところ真相はコレ!」とか、あげく「こんな妄説を後生大事に抱えてる世間の研究者どもはみんなアホwww」と言わんばかりの挑発的言辞とかを並べたてられても、話が専門的だし、そもそも人口に膾炙しているとは言いがたい中世の朝廷史の問題だしで、こっちとしては「はあ、そーですか」としか。誰に向かってシャドウボクシングしてるんだろう、むだに攻撃的だよなー、コレダカラオトコハー(おっとw←こんな感じでちょいちょい挟んでくるんですよね)、などと言いたくなってしまった。
    研究の内容としては真面目で深くて斬新なのだろうが、一般人に読ませる新書としてはいただけなかった。そーゆーことは、内輪の学術雑誌とかでやってもらいたい。

    2018/9/18~9/20読了

  • 摂関政治の脆さについての見解はすごく腑に落ちた

  • 「上皇」は英語訳がないんですね!
    つまり、英語圏には王が退位したあとは権力をもたない、ということ。
    他にもイロイロと内容たっぷりでしたが、冒頭に記載されていた、これが一番驚きました。
    日本の権力構図はわかりにくい。
    特に鎌倉時代後期の北条家と将軍家。

  • 奈良時代から現代までの天皇・上皇の歴史を振り返る。藤原摂関政治とその後の院政、幕府との力関係、南北朝が分立したときなどわかりやすく解説。平成天皇が生前退位され、上皇となった今だからこそ読みたい一冊。詳細→
    http://takeshi3017.chu.jp/file8/naiyou28102.html

  • 3.7

  • 上皇の歴史を紐解く一冊
    『上皇の日本史』著者の本郷和人先生は、大河ドラマ「平清盛」の時代考証も担当されました。
    まず、前書きで、「地位」か「人」かということを述べています。

    皇帝や王様はその国で最上位の権限をもちます。だからひとたべ皇位・王位を獲得した人は、死ぬまで地位を手放しません。「終身在位」が当たり前。「地位」こそが「人物」を正当化するからです。
    (中略)
    これに対して日本は異なるのです。「世襲」の観念が強固である。世界のどこの国でもどこの地域でも、世襲は強力な原理として機能しますが、日本はとくにその傾向が強い。そのため、「地位」よりも「人」が重視されます。
    「人」を正当化するのは第一に血統であり、家柄です。「地位」が人に権限を付与するのではなく、大きな権限を創りあげた「人」がしかるべき地位を選び取る、という順番になります。

    実は天皇を退いた人、上皇という位は日本にしかありません。他の国では前皇帝、前国王とは呼ばれても、それに当たる地位は無いのです。
    しかし、「地位」より「人」を優先した日本では、上皇という独特の地位が誕生しました。

    本書では、ヤマト朝廷の大王(おおきみ)の時代から始まり、奈良時代、天皇・上皇の誕生、平安時代の摂関政治を経て院政期、武士の台頭、鎌倉時代の承久の乱、乱後のシステム化されていく上皇、室町時代には足利将軍に取って代わられて行き、戦国時代には天下人の権威を飾るための存在になって行く。江戸時代には、太平の世で儀式に関する需要が高まり皇室の存在が思い出されるようになるも、光格上皇を最後に上皇の位は途絶えます。

    このように、上皇という位の変遷を見ながら、日本の歴史が語られています。

    現代の上皇
    大河ドラマの影響で上皇という存在に興味は持っていたけれど、古代から今に至るまでの上皇の歴史について触れたのは初めてでした。最初の頃は上皇自身が権力を奮っていたけれど、武士が幕府を開いてからは武士に権力を奪われ、そのうち皇位の継承まで介入され…、今では皇室そのものが政治から遠ざけられています(天皇親政の復活などは望んでいませんよ。念のため)。

    私は、陛下がお気持ちを表す前から「第二の人生としての上皇」というポジションがあってもよいのではないかと思っていました。天皇の公務は激務だと言われています。災害が起きれば被災地に行くし、そうじゃない時でもスケジュールがかなり詰まっているようで、もう次世代に譲ってもよいのではないかと。そう考えていたのです。

    ただ、実際にお気持ちを表し、退位(譲位)が現実的になってから、上皇の位の復活は有識者会議などでもかなり渋られていたように思えました。
    私としては、「堅いこと言わずにスパッと決めてあげなよ〜。保元の乱なんて1000年前の話じゃん」などと思っていたのですが、本書を読んで、渋られていたのがなんとなく分かりました。
    上皇というと、歴史を踏まえればどうしても権威が連想されてしまうからです。
    今回の譲位が皇室典範改正ではなく、特例法による措置にしたのもその辺りを考えてのことでしょう。

    しかし、それでも、平均年齢が1000年前とは比べ物にならなくなった今、政治や権威などとは切り離した「第二の人生としての上皇」の位をどうにか作って差し上げられたらと、私は切に願っています。

  • 【二星潤先生】
    平成から令和に時代が変わり、江戸時代以来、約200年ぶりに「上皇」が誕生しました。歴史的に見れば、譲位した天皇を「上皇」と呼ぶことは普通ですが、今回、「上皇」と呼ぶことを決める際には、いろいろな意見があったようです。なぜ歴史的には自然な呼び方である「上皇」を使うのに、ためらいがあったのか。その答えは「上皇」の歴史にあります。
     この本は、「上皇」の登場から現代までを分かりやすくまとめてあります。長い歴史を持つ「上皇」の歴史を知ることは、今後の日本における「上皇」だけでなく、「天皇」のあり方を考えるヒントにもなるはずです。令和という新しい時代を迎えた今、是非読んでみてください。

  • 天皇の歴史は「上皇の歴史」だった! 200年ぶりの譲位を前に、今こそ知っておきたい、上皇についてをすべてを徹底解説。

  •  来年、上皇が江戸時代以来、久しぶりに天皇家にお出ましになる。平安時代後期に隆盛を誇った上皇が一般的によく知られているが、本書は古代からの上皇の系譜から日本史をとらえなしたもので、新しい視点を得たことが新しい問いかけとなっている。

     元々は天皇だったのに、上皇になるととたんに世俗性を帯びて自由度が高まる。日本における皇位継承の認識は、「天皇」に権威による超越性を求めるのだが、上皇になると超越から降りてきて、権力化するのである。

     今後、天皇家の継続も危ぶまれるところにあって、この認識システムが何か貢献できるところがあるだろうか。

  • 上皇という切り口でみた日本通史。誰が時の権力者なのか、その源泉は何か?平氏、源氏、足利氏、豊臣氏、徳川氏の天皇との距離の取り方。九条道家の権力奪取の構想、後醍醐になぜ異形の人が集まったのか、織田信長の時が天皇制最大のピンチとか、読みやすく、読んでいて興味深い叙述がたくさんありました。

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。1983年、東京大学文学部卒業。1988年、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。同年、東京大学史料編纂所に入所、『大日本史料』第5編の編纂にあたる。東京大学大学院情報学環准教授を経て、東京大学史料編纂所教授。専門は中世政治史。著書に『東大教授がおしえる やばい日本史』『新・中世王権論』『壬申の乱と関ヶ原の戦い』『上皇の日本史』『承久の乱』『世襲の日本史』『権力の日本史』『空白の日本史』など。

「2020年 『日本史でたどるニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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