- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121505750
作品紹介・あらすじ
ゴリラの世界は、誰にも負けず、誰にも勝たない平和な社会。石橋を叩いても渡らない慎重な性格で、家族を愛し、仲間を敬い、楽天的に生きる。人間がいつのまにか忘れてしまった人生観を思い出させてくれる「ゴリラ的生き方」とは何か?京都大学総長と旭山動物園前園長が、ゴリラの魅力について存分に語り合った話題の一冊!
感想・レビュー・書評
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生き物と真摯に向き合い、つぶさに観察してこられたお二人の対話に、度々感涙した。科学技術が発達し、生活は便利になれど、人は生きる力を急速に失ってきている。自然がお手本で、その歴史を遡るとヒトの生きてきた時間は僅かであり、祖であるサルの仲間にもそれぞれ特徴があって、ゴリラの生き様の凄さが比較してよくわかる。難しい言葉が使われていなくて、どんどん引き込まれた。
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ここのところ、類人猿に関する本をいろいろ読んでおりまして、その過程で見つけた一冊。
また、山際先生の話は、3年ほど前に、まったく違う文脈で聞いたことがあり、その話が面白かったこともありまして、借りて読んでみました。
ゴリラを中心に、類人猿に関する話題が多いですが、野生動物を観察する意義や、動物園の意義など、野生動物について、いろいろな視点から語られており、興味深く読むことができました。
進化論的な観点からも、また、動物とヒトの差異からも、ヒトの特質性を理解するのによい本だと思います。
また、動物たち(自然)と人間の共存を考える上でも、いろんな示唆を与えてくれる、という意味でもよい本だと思います。 -
気軽に読める割に、含蓄のある本でした。
群れのリーダーのオスゴリラの立ち振る舞いや、ゴリラの生態などを知ると、いまがむしゃらに経済社会を生きている自分の生き方が、必ずしも絶対的なものではないことに気付かされます。
あとは動物園の存在意義が語られていて、これまでと見方が変わりました。 -
京大総長の霊長類学者と旭山動物園の元園長の対談。
ゴリラの人となり?は面白い。どんな動物でも自分たちの種族内でそれなりに充実したコミュニケーション手段を持っているけれど、ゴリラと人間はいとこみたいなもんだから、それなりに通じる。新しい餌をもらうと自分で食う前に飼育員に食わしてみるとか、ゴリラ同士で喧嘩して怪我すると飼育員に助けを求め、傷を見せてくれるとか。で、飼育員のほうも繁殖を成功させるためにダイエットさせるとゴリラがひもじがるのでもうイヤだ! と怒るとか。犬と人間とはまた違う、異種族間の友情。
ただ、話はだんだん説教臭くなってくる。ゴリラを見習えと言われてもなあ。ふーん、と思うところもあるのだが、イヤミに「おフランスでは~」と言われているような気分になって、素直に読めなかった。まあ、このへんは気分の問題なので、謙虚に読んだほうが得だろう。
実は本書で「動物園是か非か」みたいな議論を期待していたのだが、そういう話にはならなかった。ちらりと「動物園に反対する人たちは~」みたいな話が出て来る程度。
ぼくは動物が好きなので、自分が動物園が好きだと思い込もうとしていた。でも、つまらなそうにぼーっと立っている象や、狭い檻の中で虚ろな目で見物客を眺めているトラやライオンを見ると居心地が悪くなる。で、ふと気づいた。ぼくは後ろめたいのだ。実は旭山動物園にも行ったことがあるが、印象はたいして変わらなかった。
水族館も同じ。丸い目の魚たちは楽しそうなので見ている方も楽しいが、ペンギンやアザラシは大丈夫なんだろうか。シャチやイルカについては、本を何冊か読んで彼らの豊かな生活史を知ってから、イルカショーのそばに寄る気がしなくなった。
動物園のスタイルにもよると思う。自然への窓として動物園の果たす役割は大きいという言い分もわかる。でもぼくが象やゴリラだったら、二度と出られない檻の中で、冷暖房完備、三食昼寝つき、お抱え医師つきで一生ぼーっと暮らすより、雨に晒され風に吹かれて、腹が減ったり怖かったりしてもいいから、どこかの山や草原で、太く短く生きたいと思うのではなかろうか。
せっかくの元園長なのだから、その辺の話が聞きたかった。
原生林や大海原の只中にあって、人間のほうが檻の中に入って、偵察に来る動物を眺められる動物園や水族館があったら、ちょくちょく行くんだがな。芸達者な人間を集めて「人間ショー」をやって、面白がった動物が集まってきたら楽しい。それがあるべき形という気もする。 -
冒頭の、山際寿一による「ゴリラの学校」という章に、ぐっと心をつかまれて、あとは一気に読んだ。山際寿一は、動物園は「野性の窓」であり、「超スマート社会の到来で、人間が自然と離れていくのを食い止めてくれる」役割を持つと書いている。人間が野生動物から学ぶことはたくさんあり、「野性を失った時、動物園も人間も進化の歴史から切り離されたただの人工物に成り下がってしまう」とあるのが深く心に響いた。
動物をよく知ることは、すなわち、人間について知ること。人間が他の動物と際だって違うのはどういう点なのか。また、本来自然の一部である人間が、いかに自然から隔たってしまっているか。あれこれ思い巡らせずにはいられない。
本書の帯には「ゴリラから幸せな生き方を学ぶ」と、なんというか結構呑気な感じのことが書いてあるが、対談の雰囲気とはちょっと違う。ゴリラやサルをはじめとした動物についての話題が中心ではあるけれど、旭山動物園前園長の小菅氏が、今後の動物園の新たな展開について意気盛んに語り、山際氏は現代社会のありようについて危機感をにじませて発言する。かなり「硬派」な一冊だ。
このお二人が初めて顔を合わせた、三十年前の学会の話が印象的だった。動物園での観察に基づいた小菅氏の発表に対して、たった一人だけ、真剣に受け止め声をかけて励ましてくれたのが、若き山際氏だったそうだ。やっぱり山際寿一はたいしたもんだ。少し前、ある式典で山際氏のスピーチをきく機会があったが、まったく格式張ったところがなく、妙に媚びてくだけた感じでもなく、訥々と、淡々と語っていて、本当にエライ先生ってこうだよなあとしみじみ思ったのを思い出した。 -
●「1人ゴリラ」オスは大体、一旦自分の生まれ育った群を出て、1人ゴリラとして武者修行をするわけです。ニホンザルにも1人猿というのがあるのですが、ずっとひとりでいるわけではありません。1人ゴリラは本当に寂しそうなんですよ。
●ゴリラはメスや子供たちが仲裁に入る。雄たちは戦わずして、一応これで収めておくかと喧嘩を止める。これがゴリラの共存ルール。
●あえて加藤寿ない、でも負けないゴリラ社会。勝ち続けていけなければ自分の地位が脅かされるニホンザル社会。
●ゴリラの繁殖が、旭山動物園ではうまくいかなかった。やはりゴリラは群れで飼わなければならない。
●あと、子供の頃に年上の個体の交尾を見ると言う経験が、将来的に自分が交尾をする場合に役に立つと言うのは重要なポイント。 -
ゴリラ、サル、チンパンジーは似て非なるものだった。人間の目指すべきところはゴリラである。
旭山動物園の前園長との対話形式で読みやすい。ゴリラの繁殖方法など、野生とは異なる動物園で試行錯誤する様子も描いている。サルやチンパンジーなどとの比較もおもしい。 -
ゴリラから、人の生きる道を探る
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ゴリラは周りから押されてリーダーとなる。サルは群れ内で威張るボスとなる。