平成の経済政策はどう決められたか-アベノミクスの源流をさぐる (中公選書 107)

著者 :
制作 : 土居 丈朗 
  • 中央公論新社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121101075

作品紹介・あらすじ

21世紀最初の二〇年間の日本の経済政策は、財政健全化とデフレ脱却を追求し続けてきたと言える。官邸主導で展開されてきた「アベノミクス」も突然生まれたわけではない。本書はその源流を小泉内閣期の経済財政諮問会議の議論に辿り、諮問会議の民間議員を務めた経済学者――伊藤隆敏、岩田一政、大田弘子、竹中平蔵、吉川洋の各氏の証言とともに、経済学に裏付けられた政策の実現がどこまで可能かを分析し、理論と現実のギャップをみる。

感想・レビュー・書評

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  • 小泉政権から第二次安倍政権までの約20年間の経済財政政策がどのように形成されてきたのかを、そのプロセスに当事者として関わった経済学者たちとの対談を交えながら振り返っている。

    今から振り返るとかなり昔の話のように感じるが、小泉政権は財政健全化を政権の最重要課題に掲げていた。それに対して安倍政権の政策の重心は、デフレからの脱却、そして成長戦略へとシフトしていった。

    「改革なくして成長なし」と「成長なくして財政再建なし」というそれぞれの政権のスローガンの違いにもみられるように、因果関係の捉え方における優先順位の違いはある一方、財政と経済成長が一体的な関係性を持っており、それらの間でいかにバランスを取っていくかということが、平成の経済政策の一貫したテーマであったこともよく分かった。

    リーマンショック、東日本大震災、そして令和に入ってからではあるが新型コロナウイルスと、大きなショックに度々見舞われ、それに対する緊急措置が多く取られたことから忘れがちになるが、平成の経済政策を根本的なところで形作ったのがこの問題設定だったということは、大切なポイントだと思う。そういった意味で、これらの政権の間には一連の繋がりがある。

    一方で、政策形成のプロセスは両政権の間で差があり、興味深かった。

    小泉政権では、経済財政諮問会議にアジェンダ設定から骨太の方針による方向付けまでの権限を集中させ、それによって首相や民間委員によるリードを可能にしていた。一方、安倍政権では、成長戦略会議や規制改革推進会議、産業競争力会議など、それぞれの時期に応じて経済財政諮問会議と並行する形で様々な会議体が設けられ、経済産業省を中心に、霞が関も関与しながら政策形成が行われた。

    財政再建が中心テーマだった小泉政権と、成長戦略を議論の中心に据えた安倍内閣の違いが、このような点にも表れていると思う。一長一短はあるが、明確な数値目標と政策・予算のコントロールを可能にしたのは、やはり小泉政権のやり方だったのだろうと思う。

    いずれにしても、過去の政策形成の過程を当事者にも取材しながら記録していくことは、事後の検証や今後の政策プロセスを考えるうえでも貴重な取組みであると思う。政策の効果の分析だけではなく、政策形成過程の評価ということの重要性を感じられる本だった。

  • 第2次安倍内閣の経済政策は小泉内閣と何が似ていて何が違うのか。諮問会議の民間議員を務めた経済学者たちが見た政策の理想と現実

  • 東2法経図・6F開架:332.107A/D83h//K

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著者プロフィール

慶應義塾大学経済学部教授。

「2023年 『現代金融と日本経済』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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