大東亜共栄圏-帝国日本のアジア支配構想 (中公新書 2707)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027078

作品紹介・あらすじ

大東亜共栄圏とは、第二次世界大戦下、日本が盟主となり、経済的なアジア統合をめざす構想である。それはドイツ・イタリアと連動し世界分割を目論むものでもあった。この構想に政官財界も積極的に関与、占領地域に石油、鉱業、コメ、棉花などを割り振り、日本企業を進出させる。だが戦局悪化後、「アジア解放」がスローガンとなり、諸地域の代表を招いた大東亜会議の開催など、政治が前面に出ていくことになる。本書は、立案、実行から破綻までの全貌を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 大東亜共栄圏の構想から瓦解までを解説している一冊。
    現代と同様に輸入に頼っていた日本は、欧州勢力の不均衡に巻き込まれ経済的に疲弊していきます。
    戦争を前提にしていない立場にも関わらず、自給圏の拡大は欧州植民地であるアジア諸国へと向かうことになります。
    そんな場当たり的な流れで日本の無茶なプロジェクトは進められ管理しきれずに終わっていくのですが、敗戦後の賠償が経済的なものではなくアジア開発のための役務賠償となった点はある意味誇れると感じました。
    当時の日本は敗戦しても指導的な立場を強制されるほどに役立つ存在であったということです。
    まともに計画をすればこのような失敗はなかったと思いますが、情勢悪化が先進国の冷静さを失わせてしまったのでしょうね。
    現代にも通づる教訓がこの時代には沢山あります。

  • 第2次大戦下の国策であった大東亜共栄圏の概説。日本を中核とする排他的な経済自給圏の構築こそがその本質というのが、筆者の視点である。だが、大東亜共栄圏構想は当初から場当たり的であり、最終的には輸送力の低下によって瓦解していく。

    場当たり的な例は色々あるが、フィリピンでの綿花生産の失敗は印象的である。綿花不足を補うため、日本はフィリピンでの綿花増産を目論むが、気候風土に適せず、また治安悪化の影響も受けて、失敗する。と同時に、綿花への作付転換の影響も受けて、主要輸出産業であった砂糖の生産量は100分の1にまで激減した。

    そして、このように当初から無理のある構想であったため、占領地住民の生活保障は二の次であった。日米開戦を決めた御前会議において、大蔵大臣の賀屋興宣は「相当長期の間、現地一般民衆の生活を顧慮するの暇ほとんどなし」と既に明言していたと、筆者は指摘する。

    経済を通じて歴史を視ることの有効性を教えてくれる1冊。

  •  東アジア、東南アジアを一つに統合して経済的な自給を果たそうとする試みを、日本がどのように構想し、実行したのか。結局は破綻したが、なぜ破綻したのかを書いた本。
     構想の段階で問題点を指摘する人はいるんだけど、意思決定できる地位の人まで届かないのがもどかしい。働いていてもよくあること。
     この本のいいところは、計画の立案や実行過程を詳しく説明してくれるところ。このときにこういう決定したから後々こういう結果になった、という流れがわかりやすくなっている。東南アジアの独立の過程あたりは本当にわかりやすい。

  • 経済自給に着目し、輸送や進出した企業の分析はとても参考になる。

  • 【請求記号:210.7 ア】

  • 構想は場当たり的、運営は独善的かつ一方的、大東亜共栄圏構想は決して誇れるものでなし。
    何故にこのようなやり方がまかり通ったのか、不思議でしかない。

  • 戦時中、日本が掲げるひとつの目標であり、その理念と理想を込めた言葉であった「大東亜共栄圏」。日本を盟主にアジアの統合をめざす国策だった。第一次大戦後に日本が置かれた政治経済状況と歴史を踏まえて、矛盾と欺瞞を孕んだアジア統合へ向けた政策の立案構想、実行そして破綻までの全貌を丹念に辿り描いた内容である。
    戦局の悪化につれて「アジア解放」という掲げた理念と、経済面で英米依存から脱却し自らの自給圏を作るために汲々とする帝国日本の本音との乖離が鮮明となる。資源のない日本の地理環境と場当たり的な国家政策とその破綻。77年前に瓦解した大東亜共栄圏に変わらない「国のかたち」を垣間見た思いで考え込んでしまう。

  • 英米への経済依存を断ち切り、自らが盟主となる自立した経済自給圏をつくろうと、大東亜共栄圏へ。しかし、あまりに準備不足だった。大東亜共栄圏は建前は自主自立であった。

  • 戦争の悲惨さは戦いだけ見てもダメということがよくわかった。
    日本がなぜこんな無謀な戦争をしたのか、そしてそれは今の時代もよく似ていることだ

  • そもそもが無理なのだろうが、もっとうまくできたのだろうか。また、他国はもっとうまくやっていたのか。そういう次なる疑問を引き出してくれる名著

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著者プロフィール

安達宏昭
1965(昭和40)年東京都生まれ.2000年立教大学大学院文学研究科史学専攻博士課程後期課程修了.博士(文学).03年東北大学大学院文学研究科助教授,准教授を経て,13年より教授(専攻・日本近現代史)。著書に『戦前期日本と東南アジア――資源獲得の視点から』(吉川弘文館,2002年)『「大東亜共栄圏」の経済構想――圏内産業と大東亜建設審議会』(吉川弘文館,2013年)他共著多数

「2022年 『大東亜共栄圏 帝国日本のアジア支配構想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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