人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書, 2683)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026835

作品紹介・あらすじ

古人骨に残ったDNAを解読し、ゲノム(遺伝情報)を手がかりに人類の足跡をたどる古代DNA研究。近年、分析技術の向上にともなって、飛躍的な進展を見せる。60万年前のホモ・サピエンス誕生から「出アフリカ」を経て、人類はどのように世界に広がったか。ネアンデルタール人やデニソワ人との分岐・交雑の実態から、日本人のルーツの最新説まで、分子人類学の第一人者が最先端の研究を渉猟し、人類の起源の謎に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 原人、旧人、そして、現生人類、すなわち、ホモ・サピエンスがどのような系統や経緯を経て産まれてきたのか、あるいは、ホモ・サピエンスがどのように世界中に散らばっていったのか、といったようなことについては、少し前までは発掘される遺跡や人骨の形態的特徴をもとに行われていたが、人骨を含む発掘物のDNA鑑定・ゲノム解析をすることによって、より正確に、より詳細に、物事が分かるようになってきた。すなわち、DNA・ゲノムを調べるという技術が確立されてから、学問の方法論が大きく変わったのである。
    本書は、古代DNA研究により明らかになりつつある、人類の足跡を、明らかになっている範囲で説明したものである。テーマとしては壮大で興味深い。ただ、説明が詳細に渡り、また、学問的な正確さをも確保しようとした記述なので、なかなか、簡単に筋が頭に入りにくい(要するに読みにくいということ)。もう少し、「かいつまんだ解説」「素人に分かりやすい説明」があると、もっと面白いのにと思った。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    ここからは、全く別の話
    ブグログには、いくつかの統計的機能が備わっているが、それによると、私の書いた感想数は、いつのまにか2000を超えたことになっていた。我ながら、よく書いたものだと思う。
    ダッシュボードによれば、私の「ブグログ歴」は、今日(2024年1月20日)で、4564日となっている。12年と180日程度なので、「ブグログ歴」が始まったのは、2011年の半ばという計算になる。ただ、私は、既にないブログ「たなぞう」から「ブグログ」への移転者なので、実際に感想をブログに書き始めたのは、もう少し前のことになる。最初に書いた(あるいは、少なくとも初期に書いた)感想は、関川夏央の「汽車旅放浪記」だったような気がする。それの出版は2006年6月、私が感想を書いたのは2007年1月6日のことだという記録が「ブグログ」に残っていた。すなわち、今から17年前のことになる。
    17年かけて2000冊の感想を書いたということは、1年間に約120冊弱の感想を書いたことになる。これも、我ながら、よく続いたものだと思う。

    以前はメモ書き程度の感想しか書いていなかったが、最近は、少し時間をとって丁寧な感想が書ければ良いな、と思っている。感想を書くために、メモをとったり、少し読み返したりすることで、そうしない時よりも、本をよく読めたような気になったりもする。
    1冊の本を読む時間は、本の長さによって全く異なるが、仮に感想を書いている時間を含めて1冊読むのに4時間かかっているとすると、2000冊で8000時間。8000時間を24時間で割ると、約333日。1日眠らずに24時間本を読んでいたと仮定して(そんな仮定は実際には成り立たないが)この17年間のうちの1年間程度は、朝から晩まで本を読んでいたことになる。それは、自分にとっては、とても大切で楽しい時間だったわけであり、あらためて、本を読むことが好きで良かったなと感じる。

  • ホモ・サピエンスの変遷を交雑に焦点を当てて解説している一冊。
    遺伝的要因と地域差を参考に、様々な集団がどのように形作られてきたかをじっくり考察しています。
    日本を含むアジア集団の解説は内容が濃く、残された謎や旅路にロマンを感じました。

  • 人類の起源や移動について、化石の骨格や年代から推定する20世紀の手法に変わり、近年のDNA解析によりわかってきた事実を詳細に書き記している。
    のだが、ゲノムからわかる人類の交配・進化・移動が複雑すぎて頭がこんがらがった。しかもサンプルがまだ足りないときているので、研究はまだまだ続く。
    ものすごい研究であるのはわかるが、ちょっとした興味本位で読んだためカウンターパンチを食らってしまった。
    現代人のゲノム解析をして、ルーツを見ていたのは面白かった。

  • 古代人ゲノムの分析は、スヴァンテ・ペーボが2022年にノーベル賞を取ったことで世の中の注目を集めた。ネアンデルタール人と現代人との混血の証拠や、デニソワ人の進化上の位置づけを明らかにするなど傑出した成果を残し、人類史の精度を格段に進歩させたまさに同賞に値する研究だ。
    この本は、ペーボらをはじめとした研究で、古代人のゲノム分析手法が確立されたことによって明らかになった人類の足跡について、現在分かっている最新の情報をまとめたものである。
    著者の篠田さんは2007年に『日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造』という本を出されたが、そのころから比べると数多くのデータが取得されたことからより精緻な結論が出ている。同書も2019年に改訂版が出されたようなので、日本人の起源を知るにはそちらの方がより多くの情報が詰まっているのだろう。
    本書は、ネアンデルタール人、デニソワ人といった旧人と現生人類であるホモ・サピエンスとの関係、ホモ・サピエンス誕生の地アフリカでの人類の発展と出アフリカ、そしてより多くのデータがそろっていると思われるヨーロッパ・ユーラシアへの人類の進出(農耕と牧畜の拡大、ヤムナム族の進出)、アジア・オセアニア、日本列島集団の構成 (縄文と弥生の二重構造モデル)、アメリカ先住民の出自、と一通りの人類の旅路について記載されている。これらから、これまでの遺跡や人骨に頼った研究とは一段階も二段階も精度と確度が上がった人類史が確立しつつあるということがよくわかる。

    こういった類の本として、デヴィッド・ライクの『交雑する人類』がある。実は、こちらの本の方が読み物として面白い。一方で本書は、新書という制限もあるのかもしれないが、研究からわかった事実を淡々と記載しているという印象がある。事実を網羅的に知るにはこちらの方が効率的だという言えるかもしれない。その意味では良書だと思う。

    著者は、あとがきで、「民族」間の遺伝子の違いよりも、個々人の違いの方が大きく、遺伝子的な違いに価値をおくべきではないと強調する。遺伝子研究において集団の優劣にその研究が使われてしまうことに強い懸念を持っている。例えば、ネアンデルタール人出自の遺伝子の割合は、地域によって大きく異なる。特にアフリカ人には出アフリカ後に交雑があったという経緯から当然ほとんど含まれない。ネアンデルタール人由来の遺伝子には人間の能力に何か違いをもたらすものが含まれている可能性もある。このことをもって集団の優劣につなげて議論されることを懸念しているのだ。おそらくそれから目を逸らすのではなく、より”正しい”理解を持つように啓蒙することが重要だと思う。

    また、この本で取り上げられた古代人の遺伝子解析ができる研究所は数少なく、人も資金も多くかかり、十指に満たないビッグ・ラボでしか実施できないということが書かれている。このことで研究がある地域に偏ってしまわないようにとは思う。

    なお、日本列島集団の分析プロジェクトが2022年で終了し、その成果を発表出るだろうということだ。自分が属する集団がどのように形成されたのか、その遺伝特性とはどのようなものなのかというのは興味のあるところである。



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    (参考)
    『交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(デイヴィッド・ライク)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4140817518
    『ネアンデルタール人は私たちと交配した』(スヴァンテ・ペーボ)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/416390204X
    『日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/414091078X

  • 新書大賞第2位、ということで読んでみようと思った。昔から日本人はどこから来たのか?ルーツは?という疑問が議論されてきている。

    本書でも最新の研究に基づいて述べられているが、やはり混血の繰り返しによって現代日本人は形作られている。また、同じ日本の中でも地方によって混ざり具合が異なるようだ。

    これらの研究は自分の肌感覚でも理解できるところがある。

    昔、40年ほど前にタイへ行った時、「タイという国は、南アジア系、中国系、韓国系、日本系、、様々な人種が住んでいるところで混血の途上なのだろうな。」と深く感心したことがある。

    タイから日本に帰国して身の回りを見回してみると、改めて気がついた。「日本もタイと全く同じような状況ではないか!様々な人種がいる!」

    さて、自分自身は一体どのようなルーツを持っているのか?なかなか自己分析ではわからない。

    しかし、難しい本であった。新書大賞というのは玄人向けの賞なのかもしれない。確か新書大賞第1位の本も難しすぎた。私が馬鹿なだけかもしれないが。

  • 全く専門外の本なので、とても難解に感じたが、分かるところは興味深かった。
    DNAの解析に次世代シークエンサという方法が使われるようになったことで、古代人のDNAの解析が非常に進んだとのこと。
    ネアンデルタール人やデニソワ人などの旧人のDNA解析、現代人とのDNAの乖離、また地域ごとのDNAの乖離、本当に「我々がどこから来たのか」という問いに真摯に向き合っている。

    イギリスで発見されたチェダーマン、肌は褐色。ネアンデルタール人も褐色の肌を持っていたのでは、とこの書籍に書かれている。現在のヨーロッパの肌の白さは人類史の中では比較的新しいものらしい。
    私は金田一少年の事件簿、という漫画が好きだった。あるストーリーの推理の根拠にされていた、金髪碧眼、肌の白さ、に関係性がある、という事象は現在は否定されているようだ。

    原語と文化、そして遺伝子の特質、関わりがあるところもあれば、ないところもある。人間営みを科学的に証明する一助にはなるけれど、全部を解明することは無理なのかなあ、無理だからこそ追い求めたくなるのかなあ、と本書を読んで感じた。

  • ゲノム解析で何万年前のことまでわかると言うことは、今後も新発見が期待できる。

  • ゲノム解析など新しい技術のおかげでこの10年でだいぶ様相が変わってきている。5年後はもっと新しいことがわかるのだろう。長生きするのが楽しみになる。

  • 歴史的な文系の本かと思いきや、DNA、ゲノム解析等のかなり専門的な話がでてきて、理系科目はつくづく苦手だなと思ったが、食わず嫌いを克服したいと頑張って読み進めた。

    理解できていない部分も多かったかと思うが、近年のゲノム解析技術の進歩によって教科書の歴史の修正にリアルタイムで立ち会えたような感覚を得られて嬉しかった。弥生時代には急に集落が生まれたのではなく、朝鮮から文化や人種が渡来していた。等。

    またゲノム解析を通じた著者の見解も素敵だ。人種という括りは生物学的に明確な境界がなく、恣意的な括りにすぎない。世界中の人類のDNAは99.9一致しており、肌の色や身体能力、知能の差などは0.1%の差でしかない。わずかな差に注目して研究を進めるのは科学としてはオーソドックスだが、現代生活において0.1%の違いに重きを置くべきか、99.9%共通しているという部分に価値を見出すべきか。答えは明白だろう。

  •  化石や、人のいた痕跡(住居跡の土の中のDNA片など)からDNA解析を行う技法を開発した、ペーポ博士が2022年のノーベル医学生理学賞を受賞、と聞いたとき、正直、「そんな画期的な業績か…?」と思った。
     しかし本書を読めば、その技術で遺伝的な近さ、遠さを明示できるようになったことで人類史が大きく前進した、と言うことがわかる。いままで形状的な特徴から、「この種とこの種は似ている」というところどまりだったものが、交雑の有無やその年代まで特定できるのだ。また現生人類のDNAと比較することで肌の色や髪の色、体格までわかる、と。大事なことだが、性別も間違いなく判定できる。
     世界各地の人類化石の分析から浮かび上がってきたものとは…

     人類の遺伝子の99。9%は共通で残り0.1%の違いで違いができる、ということ。これは非常に示唆的で、

     「イギリスに住んでいた人々は5000年前には褐色の肌をしていた」
     「種族/部族の移動があると、交雑して混ざるか、どちらかがどちらかを圧倒して遺伝子を置き換える/イギリスの例でいえば、ストーンヘンジを作った人々はそのあとイギリスに現れた部族に圧倒され、短期間に90%以上のDNAが置き換わった」
     「交雑などで発生したはずだが消えた(絶滅?他の部族に吸収された?)部族も多い」
     
     これを本書を読んで知り、人類のしてきた行いがなんと愚かで根拠のないものだったかがわかる。本書の内容と、私のつたない知識を重ねてみる。

     アーリア人が優れた民族、としたヒトラー。ほんの数千年前まで白人種の肌が褐色だったという。青い目も金髪も白い肌も単に遺伝子の発現によるものでこれら3つはまったく別個の遺伝子情報によるものであり、たまたまこの3つが現代アングロサクソン人に揃っただけ、と知ったら?

     人類の起源はアフリカでそこから各地に人類が広がった、と言うことを知っていたら、アフリカの人々を劣った人として奴隷にできただろうか。

     奴隷制の理論的な支柱の一つが、「彼らは奴隷になることでキリスト教に触れ、神の存在を知るのだから奴隷にされても(しても)よい」という理論だったと記憶するが、このことがキリスト教の成立時期にもし明らかになっていたとしたら、教義は大きく影響を受けたのではないか。

     日本人のルーツについて、①南から渡来した人々が縄文人として日本列島全体に定着、②朝鮮半島経由、大陸内部の民族のDNAを持った人々が渡来して混血、③アイヌ民族は縄文人がシベリアに渡り、そこで獲得した遺伝子を持って鎌倉時代に北海道に入る、ということのよう。

     1万年前頃から手前だと言語学や使用された道具とDNA解析を組みあわせ、より具体的な民族の交流が明らかになる、としている。

     非常に勉強になった。新年に読むにふさわしい本だった。

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著者プロフィール

篠田謙一

1955年生まれ.京都大学理学部卒業.博士(医学).佐賀医科大学助教授を経て,現在,国立科学博物館館長.専門は分子人類学.
著書に『DNAで語る日本人起源論』『江戸の骨は語る――甦った宣教師シドッチのDNA』(岩波書店),『新版 日本人になった祖先たち――DNAから解明するその多元的構造』(NHK出版),編著に『化石とゲノムで探る人類の起源と拡散』(日経サイエンス)などがある.

「2022年 『人類の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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