月はすごい-資源・開発・移住 (中公新書 2560)

著者 :
  • 中央公論新社
3.82
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本棚登録 : 198
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025609

作品紹介・あらすじ

一番身近な天体、月。地球から約38万kmを回る唯一の衛星だ。本書では、月とはどのような天体かという謎に迫る。大きさや成り立ちの有力説など基礎的なことから、地下トンネルの構造など、最新の月探査での発見までを解説。さらには、人類が月利用を進めることを想定し、水や鉱物資源を採掘できるか、エネルギーや食糧はどう確保するかなども詳述。複数の月探査プロジェクトに携わる著者が、わたしたちを月面へと誘う

感想・レビュー・書評

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  • 背表紙面のオビアオリに曰く「月で一旗揚げたい人のためのガイドブック」とある。
    もはや、月は遠くに見上げてただそこに在れば良いというシンボル的な物ではないようだ。

    いよいよもって月面移住を見据えた時に、月ってどんな所なの?持って行くべきものは?気を付けるべき点は?ウサギはいるの?…etc.とあたふたしないように備えておく意味でも、月研究の動向は追っておいた方が先々において思いもかけないようなチャンスを掴む事が出来るかもしれない。特に若ければ若いだけ、マジで生きてるうちに渡月の可能性があるかも、くらいに思っておいて良いように感じた。

    やっぱり差し当たって最大の障害は降り注ぐ放射線への対策だろう。そんな中いきなり月面地上に基地を建設するのはシンドイだろうと思うので、如何にして地下洞窟空間(と思われるスペース)を確保するか否か、良い場所取り競争に勝つ事が重要。現時点で言えば最も宇宙開発分野で勢いがあるのは中国という事になるのだろうが、今後勝ち馬がどの国になるのか、あるいは企業なのか、見定める目が必要になってくる。
    また、月移住どうこうを抜きにしても、昆虫食というものは今後一層着目される分野だと感じた。人口増大による食糧危機が叫ばれて昨今、昆虫食の可能性について目に耳にする機会も増えてきた。今はまだゲテモノ趣味嗜好の域を越えていないが、これから先は間違いなく’昆虫料理研究家’’昆虫生産者’の存在感は増してくるだろう。そしてp142でも言及されているように、月に持っていって持続的に生産可能そうな食材の候補に昆虫は間違いなく挙げられることだろう。
    月面だろうが海底だろうが、暮らすとなれば衣食住の考慮は不可欠。将来的な月面移住を視野に、これら生活インフラの分野に関して真剣にリアルな想像を巡らせておくのもアリだと思う。


    本書執筆時点では’予定’とされていた計画等のうち、
    ・インドのチャンドラヤーン2号は2019年2月に打ち上げには成功したが、月面着陸には失敗。
    ・日本の月探査機SLIMの打ち上げは2023年期中に延期。
    ・ispace社は2025年以降実施のアルテミス計画に参加予定。
    …のようだ。

    いずれそのうち、月面産のチタン(=ルナ・チタニウム合金)でガンダムが本当に建造される日が来るのだろうか。というか、この設定を考えた人は月マニアだったのだろうか!?


    1刷
    2022.10.2

  • 月にまつわる様々なことがコンパクトにまとまっています。

  • 月に行くことはすでに夢物語ではなくなった。今では月をどのように活用するのか議論・実証実験がなされている。その執筆時点(2019年)での最新状況を伝えている。月での資源(水、鉄、水素など)をどう採掘するのか、月基地は溶岩トンネルのような洞窟に建築すると効率的だとか、熱や放射線対策が重要だとか、月で人類が活動するために課題となっていることを知ることができる。米国やロシア、中国など宇宙開発に積極的な国々の政治的な駆け引きなど、「世の中そうなっているんだ」という気づきもある。

  • アポロの月面着陸しかイメージ持ってませんでしたが、レゴリス、宇宙放射線等で月探査の難しさを認識できました。中国はもとより、イスラエル、インド等の動き。日本もはやぶさで喜んでばかりはいられませんね。 それから、月って以外と大きい、ということを太陽系の天体大きさ比較で教えてもらいました。

  • 満月の明るさは半月の8倍

    高日照率地域に着陸、探査開発のためにも、ピンポイント着率技術が必要(半径50m以内)

    太陽風から得られるエネルギーはどのくらい蓄えられるのか、今後の研究課題←めっちゃ多い!今後明らかになることがたくさん

    ダイソン球 恒星を覆ってエネルギー有効活用←発想のスケールが違いすぎる……そんな巨大な人工物、建造にどのくらいのコストがかかるのだろう……

    「宇宙というだけで面白がっている人が宇宙に住んでも、きっと退屈な日常生活が待っているに違いない」

    最高にワクワクする本でした

  • 最近、日本の民間企業のispace社が探査機の月面着陸に挑んだニュースがありました。
    結果は残念ながら失敗でしたが次回に期待です。
    こんなニュースもあったので、この本を読んでみ
    ました。
    月に基地を作り、人類がそこに住むということが夢物語ではなくて、現実の話として可能性があるということがわかりました。
    月は毎日50分くらい遅く地面から昇ってくるとか、月の地面には太陽から飛ばされてきた水素が突き刺さっているとか、いろんなことを知ることができました。

  • 少年時代に宇宙に関するテレビ番組などで宇宙に興味を持ち、JAXAなどに関わるようになった筆者。月の資源、開発、移住の可能性から宇宙探査と移住にまで話が広がっている。

    月に人が行くだけでもどんな困難があるかを科学的に、しかし極力分かりやすく解説されている。大気がない故に猛スピードで飛んでくる隕石の欠片や太陽風と放射線などがある。また、「地球から物を移動させるコストが1kgあたり1億円」というのは、月面開発をするなら資源を現地調達しなければならないという大前提として説得力がある。

    結びでは「なぜ宇宙開発が必要か」という壮大なテーマに少し触れている。ガンダムなどSFの世界でも多く語られてきており、筆者が言うように人間の価値観や宗教観などもひっくり返してしまうくらいの話に広がっていく。

  • 538-S
    閲覧新書

  • 月はすごい

    著者:佐伯和人
    発行:2019.9.25
    中公新書

    著者はJAXA月探査「かぐや」プロジェクトの一員で、惑星地質学、鉱物学、火山学が専門。月の地質や鉱物などが中心に書かれているが、もっと広い範囲で月についていろいろ勉強できる。潮の満ち引きについての説明まである。

    月に水はないが、水の氷(月では水以外の氷も存在可能らしい)が存在する可能性があるのないのって大騒ぎしているのを、僕は不思議に思っていた。月に人が住めるわけでもないし、水があったらどうだというのだ?と思っていた。最も期待されるのが、ロケットの燃料らしい。水は酸素原子と水素原子でできているから、電解すると水素ガスと酸素ガスができ、これらを低温で液化したものが、日本のH-ⅡAに使う燃料と酸化剤そのものだとのこと。つまり、大量の水があればロケットの燃料ができる。

    地球から月に物資を運ぶコストは、1キロあたり1億円だそうだ。水なら1リットル1億円。だから、月で金が見つかっても意味がない。地球に持って帰ると1キロ1億円になるから。著者はいいたいのは、月に人は住めないとしても、火星なら住めるかもしれない。そのために月に水や資源があるなら、そこを拠点にしていろいろと生産して宇宙進出を果たせばいい、というようなことのようだ。

    ******(メモ)******

    月の夜の長さは2週間、極寒。機械なども止まる。年間を通して80%以上の期間が日向になる地域があり、そこなら太陽電池で発電した電気を蓄電すれば有人基地をつくることが可能。

    月の広さは、アフリカ大陸とオーストラリア大陸をあわせたぐらい。

    観察可能な宇宙の範囲だけでも地球を中心に半径約464億光年。いうまでもなく、宇宙全体はそれより遙かに広大。

    月探査するなら月食の予定に注意。月食中は太陽電池パネルに太陽が当たらないので発電できない。

    月面の砂(レゴリス)は非常に細かく、直径0.1㎜以下。静電気で宇宙服にひっつく。アポロの船外活動の宇宙服が汚れているのはそのせい。

    一部のクレーターから放射状に線が出ているが、それを「レイ」と言う。宇宙風化と関係がある。

    月面は大気がないため宇宙放射線や微小隕石が降り注ぐ危険な空間。基地をつくる場合は厚さ数メートル以上の壁をつくる必要。

    木星や土星の衛星には氷で覆われたものが多数存在するが、その中でも内部に液体の海があると思われる天体は、地下の海に生命が誕生している可能性があり、多くの科学者の興味を引いている。木星の衛星ガメニデ、エウロパ、土星の衛星エンケラドス、タイタンなど。

    日本を含めたアメリカ以外の国が、宇宙に関する非常に大きな成果をあげても大きなニュースにならない。理由は、世界中のメディアがNASA発のニュースばかりに注目するため、他国が成果をあげたときに自分たちの権威が落ちないようにNASAはわざと同じ日に自らのニュースをぶつけてくるから。大したことないNASAのニュースであっても、他国の成果はかすんでしまう。

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著者プロフィール

1967年、愛媛県生まれ。
大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻准教授。東京大学大学院理学系研究科鉱物学教室で博士(理学)取得。
専門は惑星地質学、鉱物学、火山学。
ブレイズ・パスカル大学(フランス)、秋田大学を経て、現職。
JAXAの複数の月探査プロジェクトに参加。
著書は『世界はなぜ月をめざすのか』(講談社ブルーバックス)、『月はぼくらの宇宙港』(新日本出版社)、『月はすごい-資源・開発・移住』(中公新書)など多数。

「2021年 『月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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