宇宙はどこまで行けるか-ロケットエンジンの実力と未来 (中公新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025074

作品紹介・あらすじ

かつて、宇宙ロケットの打ち上げといえば、国家や国際機関が手がける一大プロジェクトだった。だが、宇宙開発の主役は大学や新興企業に替わりつつある。ロケットの超小型化・量産化が進んだことで、低コスト・高頻度の打ち上げが可能になったからだ。ロケット開発や宇宙探査は現在どこまで進んでいるのか、月や火星まで人を運ぶにはどのような技術が必要なのか、人類は太陽系を飛び出せるか――宇宙の今と未来に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 途中まではリアル。
    そこから徐々に徐々にファンタジー成分が混入してきて、気がつけばSFになっていた。
    その境目が曖昧なところが、実に嬉しい。
    やはり研究者というものは夢を追って、霞を食って生きてもらいたいものだ。
    そんな彼らを笑って支えられるだけの度量のある世界を作りたい。
    彼らの実績を実用化するのは、別の人間がやればいい。
    いいぞ、もっとやれ!

  •  面白くなかった。解説としても欠けていることが多い。構成に一貫性がなく、締め切りに追われて理屈を書き並べただけといった内容の本。何よりも、タイトルの問いにまったく答えておらず、シンギュラリティ、遺伝子編集でお茶を濁している。技術屋肌の饒舌以外の何者でもない。
     あちこち解説のアラやバランスの悪さが気になったので、途中から覚めた目で読みすすめ強く感じたのが、宇宙開発も所詮は国家事業なのだということである。人を傷つけないだけ戦争よりはましであるが、人を搾取し、疎外していることから目を背け、こういう中身のない話…蓋然的な可能性の検討、費用の話、そもそもの意義を問わない目的志向…があたかも人の生きる/活きる力たる技術である、希望である、前向きであると語られる点で、この分野は科学ではないし、国家的な英雄しか生まないつまらない営みなのだと直感し嗚咽がした。

    蛇足:小説などには構成やプロット、表現に対して厳しい評がされるのに、本書のようなノンフィクション/解説本には全く出てこないのが不思議でしょうがない。「読みやすい!」っていうのが誉め言葉なのか?

  • ロケットについての専門的基礎知識を丁寧に説明してくれている。
    素朴な驚きが随所にある。
    最後はアクロバティックだが、想像力豊かで楽しかった。

    ・小惑星帯はかなりスカスカ。
    ・非プラズマ状態は、宇宙でまれな状態。
    ・この本では、月より遠い宇宙を深宇宙という
    ・地球に突入する際の、運動エネルギーが熱エネルギーに代わるのは、摩擦ではなく、空気の圧縮が主因。
    ・外惑星の場合、「表面」の定義は大気圧が地球の1気圧になる場所のこと。

  • ロケットのエンジンを題材に、宇宙に行くにはどういうテクノロジーが必要なのか、現状からSFの世界までを紹介。コンパクトに全てがまとまっている一方、著者の熱意も随所に感じる力作。
    化学推進で現在地球脱出速度7.7km/秒を出すが、そのために多段階ロケットが必要。それは推進力と重量のバランスを常にとっていないといけなく、燃料が少なくなる(軽くなる)ごとに早くしていく必要がある。
    ファルコン9は62億円で、半分の輸送能力のH2Aロケットは100億円。汎用部品、再利用、軽量化がきも。

    地球の重力を、宇宙からだとは考えなくてよくなるので、宇宙で推進剤の調達、組み立てができればより効率よく他の惑星へ行くこともできる。

  • 昔のSFの世界では、宇宙開発は民間企業の仕事だった。現実の世界では、宇宙開発どころか、宇宙探査をするだけで、国の一大事業になった。想像どおりにはいかないものだと思っていたが、もしかしたら、昔のSFの世界が実現するのかもしれない。子どもの頃に読んだ本に、遠くまで行くならイオンエンジンがよいと書いてあったが、これは今も変わらないようだ。惑星探査機用の小型エンジンとはいえ、イオンエンジンが実用化されていたとは、「はやぶさ」が話題になるまで知らなかった。ソーラーセイルは、JAXAが実証実験に成功したそうだし、宇宙エレベーターは、カーボンナノチューブを使えば建設可能かもしれないという具合に、昔からある発想は、少しずつ実現に近づいているように見える。びっくりしたのは、宇宙探査の本にクリスパー・キャス9が出てきたこと。遺伝子操作で人間の寿命を延ばせば、生きている間にアルファ・ケンタウリに到達できる。それはそうかもしれないが、とにかく宇宙は広い。星は遠い。「10光年の道も一歩からである。」(297ページ)と言われても、あまり勇気づけられた気はしない。2018年9月25日初版。2019年1月10日再版。定価本体1000円+税。2018年11月4日付け読売新聞書評欄。

  • 宇宙における推進系の話が体系的に記載されていておもしろかった。言い回しの軽妙さや例え話が的確であることにも驚いた。とても読みやすかった。
    惑星探査のシミュレーションはSF的で非常に参考になった。最新や未来の推進技術も、実現可能性含めて知りたかったことがまとめられていてありがたかった。

  • 火星にいってもすぐに帰ってこられない?こんな楽しい本を自分でも書けたらと、著者の才能に嫉妬。

  • 現在と未来の宇宙開発についてロケットエンジン開発者の立場で考察した本。人工衛星から、月、惑星探査、恒星探査まで、エンジンの理論を踏まえながら解説する。
    著者は東大の現役のロケット開発者で、自分の経験も踏まえて詳しく説明しており、図表等も適切に使われていて、大変判り易かった。ロケットの構造、惑星の重力と探査機の航路の関係、スイングバイの仕組み等、言葉では知っていても、それがどのような事なのかイメージが掴みにくいのだが、著者は事例や例え話を上手く使っていて、自分のような素人が読んでも大変判りやすかった。(それでもイオンエンジンの仕組み等はなかなか理解できなかったが)
    人間の時間スケールでは惑星探査までが限界で、恒星になると飛躍的に難易度が高くなってしまう。その段階に行くには、技術的なブレイクスルーが必要だ。以前、アメリカの未来学者の同様の著作を読んだことがあるが、その本でも恒星探査になると現在の知見ではSF的な見解にならざるを得ないということだったが、この本の著者も同じ意見だ。
    読んでみて、薄い新書でありながら内容はよくまとまっていて、この分野の入門書としてはとても良い本だと思う。自分は50代。残された人生の時間を考えると、人類がもう一度月に行くとか、新しい宇宙ステーションを建設するところまで見られそう。できれば、人類が火星に降り立つ姿を見たいけれど、今の開発ペースでは難しいかも。

  • 地球から宇宙空間に物を運ぶための条件やそれを運ぶためのロケットの仕組みの説明から始まって、より遠くの宇宙へ行くためには、と章が進むごとに内容がSFチックになていく。
    かなりてんこ盛りな内容で読み応えあり。

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著者プロフィール

1977年東京都生まれ。2002年東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修了。2006年博士(工学)(東京大学・論文博士)。2003年同大学大学院研究科助手。2007年JAXA宇宙科学研究所助教、2011年東京大学大学院工学系研究科准教授などを経て、2015年より同大学大学院新領域創成科学研究科准教授。 「はやぶさ」イオンエンジン運用および帰還時のカプセル回収隊の本部班としてオーストラリアでの回収に従事。小型衛星に用いるイオンエンジンなど推進系の世界最小クラス開発のトップランナー。小型衛星プロジェクトやベンチャー企業における開発にも携わる。

「2021年 『人類がもっと遠い宇宙へ行くためのロケット入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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