理科系の読書術 - インプットからアウトプットまでの28のヒント (中公新書 2480)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 909
感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024800

作品紹介・あらすじ

本を読むのが苦行です――著者の勤務する京都大学でも、難関の受験を突破したにもかかわらず、そう告白する学生が少なくないという。本書は、高校までの授業になかった「本の読み方」を講義。「最後まで読まなくていい」「難しいのは著者のせい」「アウトプットを優先し不要な本は読まない」など、読書が苦手な人でも仕事や勉強を効率よく進めるためのヒントが満載。理科系の合理的な読書術を伝授する。

感想・レビュー・書評

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  • 良書:わかりやすかった

    この本の特徴は、「読書があまり得意ではない」人に向けた読書術。読書が苦手の人のために読む技術の「基礎の基礎の基礎」を伝授する入門書である。
    第Ⅰ部では、「楽しく読む読書術」、第Ⅱ部では、「効率よく読む読書術」、最後は増え続ける本への対処法を解説している。

    読書の苦手な人の悩みと対策

    ①億劫で読み始められない
    ⇒毎日少しづつでも本に触れる時間を持つ、読みはじめても、最後まで読まなくてよい、と決めておく
    ②読みはじめても最後までたどり着かない
    ⇒合わない本はちゃんと読まなくてもいい、読めない本は誰にでも存在する、関心のある部分だけを読めばいい
    ③読む時間がない
    ⇒15分単位で集中して読む、目次をよむ、本のタイトルとサブタイトル、帯にまず目を通す
    ④ビジネス書と、小説の読み方の違いがわからない
    ⇒ビジネス書の読書には目的がある、中身をすべて読む必要はなく、大方の筋がわかればいい
    ⑤そもそも読書がなぜ大切なのかわからない
    ⇒知らないことばかり書かれた本は、なかなか読み進めることができない

    気になったこと

    ・小見出しごとに読む
    ・巻末の解説から読む、ラベルの意味は、解説やあとがきに書いてある
    ・わからない部分は先送りにする棚上げ法と、分からない部分をバラバラにして考える要素分解法で、難解な書の読破をめざす
    ・文章は、短文、重文、複文のどれか。主語と述語を確認しながらよむ。

    ・速読には目的があり、多読には目的はない。
    ・速読とは、著書が述べたい本質を書かれた文章から速く読み取る技術
    ・専門書は、きちんと構成だっているので、速読は難しい
    ・ある程度基礎知識を身につけておかないと、速読はできない
    ・遅読法とは、一行一行念入りによむこと。本質的な内容が一か所でも見つかればよいとする。
    ・内容を理解するには、三回読み方を変えながら目標を立ててよむ。

    ・良い書に出会う方法
     ①新聞の出版広告:相応の広告料がかかっていて、売れている本がならんでいる
     ②書評を読む
     ③読書の感想を乗せたウェブサイトを参考にする

    ・本の最大の特徴、投資する金額に対して得られる利益がはるかに大きい
    ・入門書は、三冊買う。しかも、一冊は、新書をふくめたほうがいい。
    ・版を重ねている本を優先としたい。
    ・レファレンス本、辞典、年鑑、図鑑は、辞書のように引いて使う

    ・本に自由に書き込んだり、線を引いてもいい。そのためには、まず本を買うこと。借りてはできない。
    ・書き込みは鉛筆を使う。なぜなら、あとから消せるから。
    ・古典は、原典を読むのは、無謀。まずは、読みやすいガイド、解説書をよんでいい。

    目次は以下です。

    はじめに

    第Ⅰ部 苦手な人のための読書術

      第1章 本と苦労なく向きあう方法
      第2章 難解な本の読み方
      第3章 多読、速読、遅読の技術

    第Ⅱ部 仕事を効率よくすすめるための読書術

      第4章 アウトプット優先の読書術
      第5章 本の集め方、整理の仕方
      第6章 読書メモの取り方
      第7章 読まずに済ませる読書術

    おわりに

  • 読書の苦手な人にとって、とても知的なイメージのある中公新書を手に取ることはハードルが高いと思う。ところがこの本は、読書が苦手な人向けに、丁寧に構成されている。筆者が教鞭を取る京大の学生だけが対象ではなく(決して優秀な人が対象ではなく)、本を手に取らない世の中の人達全般に向けられた「読書法ガイド」である。

    まず、目次がとても分かりやすい。気になる箇所から「つまみ食い」できるように、各章がキャッチーな言葉で並んでいる。
    そして、この本は各章の「冒頭」に要約が記されている。まるで新聞の見出しのようだ。章末に要約があるだけでも丁寧だが、冒頭にある本はなかなか無い。つまり、目次を読んで、気になった章のページをめくり、要約を読んでみて、興味が湧いたら次のページに進めば良いのである。読書が苦手な人でも、この本から何か1つでも得られるように、仕組まれている。


    さて、この本から受けた自分なりの読書メソッドは、以下の2点である。

    ①本を「最初から順番に、最後まで慌てて読む」必要は無い
    ・目次をサラッと見て、気になる部分だけ読めばよい
    ・ゆっくり読んだ方が頭に入るので、慌てて読むよりも効果が高い
    ・途中で読むのを辞めて、別の本に手をつけても良い

    ②本の内容を理解できなくても自信を失うな
    ・学者が推敲せずに書いた文章は乱雑
    ・難しい本は、著者が悪い
    ・読書とは既に知っている9割を確認すること
    ・未知の分野の本は速読できないし、一読では理解できない

    鎌田先生の「地球科学講座」は、今も京大の超人気授業らしい。本題の火山の話よりも、ノートの取り方、読書術や勉強法、お洒落の話まで、良い意味での「脱線」が多いのだろうと、察しがついた。
    古本屋で実質200円で購入したが、前半を中心に得るものが多く、鎌田先生の授業を受けているくらいの価値がある。相当コスパの良い投資であった。

  • ノンフィクションは読み飛ばすこと。面白いところから読む。あとは本に読まれないこと。特にこの本に読まれないことは、気をつけていないと気付かないうちに読まれていることがあるから、気をつけたい。

  • 読書をする人すべてにお勧めできる本です。

    理科系の〜とタイトルにありますが文系の人に参考になる内容は多いと思います。

    本書で印象的だったのは以下の内容でした。

    ・読む前に手に入れたい知識を3つに限定すること
    ・読めなくなってしまっても自分を責めないこと。その代わり、読書のシステムを責めること
    ・完璧主義は自己満足。不完全主義こそ、効率よく最小限のエネルギーで知的生産を行う早道。
    ・本に読まれてはいけない。読書家とは持っている本すべてを読まなくても涼しい顔のできる人。

    ★読書という行為は、読む人に何らかの変化が起きてはじめて意味がある。

    『今、ここで』行動を始めてみよう。

  • 本を読むのが苦手な人向けに書かれた内容ではあるが、本好きにも役立つ内容も見られる。
    本書の主張の中には、完璧主義にならない方が良いというものがある。書籍を必ずしも最後まで読みきる必要はないということだが、本書もそのように自分に必要そうなところを拾い読みするだけでも得るものはあるのではないかと思う。
    特に、論文執筆などアウトプットを出すための読書をする上では参考になると感じた。

  • まず、タイトルに「理科系の」とあるのは、これまでの著者の本にもよくあった「理系の~」を踏襲した枕詞みたいなもので、特にそこを気にして文系の人間が敬遠する必要はないと思う。
    本人もあとがきで「カマタの使った読書術」を書いた本だと言っているし。
    「京大式」・「カマタ式」よりはこの方が売れると思った出版社の都合でしょう。

    難解な本は書いてる著者が悪いのだ、と主張する一方、言いっぱなしで終わるのではなく、難解に感じるのは著者と自分とのフレームワーク(思考枠組)の違いが原因なのだから、それをすり合わせることを意識して読み方をしていけばよいのではないか、との提案でこれは読書の仕方として参考になる。というかこういう意識で臨むと、これから先難解本に出会っても心が折れなくて済みそうだ。

    目的をもって読むのだから全部読まなくてもいいんだ、とか、読んでいてわからない部分は棚上げしろ、細かく要素に分解してみろ、とかいった具体的な読書術が列記された末に、最後には「読まずに済ませる読書術」。
    脱帽。というかこれくらいの心持ちで本と向き合えば良い、というその姿勢に救われる。
    著者は、読書へのハードルが高すぎて本から疎遠になってしまっている教え子を仮想読者として、彼らへの処方箋として説いているようなところもあるかもしれない。

    また、昨今のビジネス書・自己啓発書の不振について、著者は山田真哉氏の『平成のビジネス書』とは違った見解を述べている。
    曰くこうした書物の「未来はコントロールできる」という思想の怪しさに読者が気づいてしまったのではないか、と。
    「本」という形となったこれまでの「知」を蓄積しても、震災など「想定外」の事態には対応出来なかったという指摘を、愛蔵書にカビが生えてしまったことをきっかけに蔵書の処分を進めた著者自身のエピソードと重ね合わせて論を進める。
    よほどの本でも無い限り再入手することはできるので蔵書を処分しても困らなかったという経験談と、そのことで体が軽くなった、読書も未来志向になった、という告白は、震災以降10年代の断捨離、ストックからフロー、所有から利用・共有・シェア、といった指向に通底しているように見える。

    10年代が到達した読書術の最終形を提示した本。
    今、ここで読む本が、今、ここで生きる自分を変えてゆく。それが読書の終着点、と。

  • 周りの理科系メンバーから学ぶことが多いため、思わず手に取った一冊。

    前半は理科系の視点で「いいとこ取り」の読書術が紹介されている。

    「棚上げ法」など、すぐ試してみよう!もあれば、正直、ちょっと共感できないのも多々ある。

    しかし、この本の一番の価値は補章にある
    "「今、ここで」を生きる読書術"のメッセージだ!

    大切なのは、結局は自分にあった読書スタイルを「カスタマイズ」すること。

    理科系の理屈じゃなく、哲学的なメッセージとなっているが、これがココロにささる!

    買ってよかった!

  • 理科系の読書術というタイトルですが、理系じゃない私でも楽しんで読めたのでぜひ読んでほしいと思います。
    読書というものについて、ただのスキルではないアプローチがされています。

    本との向き合い方
    本の読み方
    本の選び方
    本の使い方

    などなど、理系=理論的で合理的な観点から、
    なぜそうするのか、も含めて書いてあるので、
    今後の読書にも生きると思います。

    あくまで、速読や多読のスキルだけを学びたい方にはおすすめしない本です。
    個人的には、これからの読書に対する考え方に役立つ本だと思うので、大学生や社会人になりたての方に出会ってほしい本だなと思います。

  • 「本を読むのが苦行です――著者の勤務する京都大学でも、難関の受験を突破したにもかかわらず、そう告白する学生が少なくないという。本書は、高校までの授業になかった「本の読み方」を講義。「最後まで読まなくていい」「難しいのは著者のせい」「アウトプットを優先し不要な本は読まない」など、読書が苦手な人でも仕事や勉強を効率よく進めるためのヒントが満載。理科系の合理的な読書術を伝授する。」

    目次
    第1部 苦手な人のための読書術(本と苦労なく向きあう方法;難解な本の読み方;多読、速読、遅読の技術)
    第2部 仕事を効率よく進めるための読書術(アウトプット優先の読書術;本の集め方、整理の仕方;読書メモの取り方;読まずに済ませる読書術)

    著者等紹介
    鎌田浩毅[カマタヒロキ]
    1955年(昭和30年)、東京都に生まれる。1979年東京大学理学部地学科卒業。通産省地質調査所、米国内務省カスケード火山観測所を経て、1997年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。日本火山学会理事、日本地質学会火山部会長、気象庁活火山改訂委員、内閣府災害教訓継承分科会委員などを務める。1996年日本地質学会論文賞受賞。2004年日本地質学会優秀講演賞受賞。専攻は火山学、地球科学、理学博士(東京大学)

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著者プロフィール

鎌田 浩毅(かまた・ひろき)
1955年東京生まれ。筑波大学附属駒場中・高等学校卒業。東京大学理学部地学科卒業。通産省、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・同名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学教育。「京大人気No.1教授」の「科学の伝道師」。著書は『新版 一生モノの勉強法』『座右の古典』(ちくま文庫)、『やりなおし高校地学』(ちくま新書)、『地学のツボ』(ちくまプリマー新書)など。

「2021年 『100年無敵の勉強法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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