- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121024701
作品紹介・あらすじ
倭の五王とは、中国史書『宋書』倭国伝に記された讃・珍・済・興・武を言う。邪馬台国からの交信が途絶えてから1世紀後、中国へ使者を派遣した王たちである。当時、朝鮮半島では高句麗・百済・新羅が争い、倭もその渦中にあった。本書は、中国史書から、中国”への接近”の意図や状況、倭国内の不安定な王権、文化レベルを解読、天皇と五王との比定などを通し、5世紀の倭の実態を描く。
感想・レビュー・書評
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「本書に意義があるとすれば、
記・紀に多少言及するにしても依拠せず、
中国・朝鮮史料や考古学的な成果から
描き出したことであろうか」
と、あとがきにあるように、
5世紀の東アジア情勢を背景とした考察は興味深い。
「ワカタケル」と「武」を、同一とする違和感。
「武」は「ム」であって「タケル」と読む訓が、
5世紀にそもそもあったのか・・・など、
もやもやしていた疑問を述べていることに好感を得た。
しかし、
「倭の五王」は、謎のままのファンタスティックな響きを残しているところがいい。
継体天皇をも少し読もうかな。。。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
倭の五王の正体について無理に記紀の記述にあてはめようとはせず、最も客観的と思われる視点からアプローチしようとする。
最も客観的な視点とは、中国による倭国の支配者への官位の叙任、巨大古墳の分布状況、朝鮮半島の情勢、記紀による内紛の記述、国内の出土品などである。少ないヒントを頼りに五王が統治したであろう日本の古代国家に迫る。継体以前にも複数の大王輩出の系統があったことや、国内の権力バランスが常に一定ではなかったことなど詳細に説明があり、豊かな想像力で歴史的テクストを読ませる。緩やかな三王朝交代説を様々な視点から補強する論述となっている。 -
五世紀に中国南朝へと遣使した倭の五人の王について、記紀に依拠せず中国史料と考古学の成果に基づいて、その実像を検討する内容。記紀の天皇との比定に関する従来の議論についての批判も章立てされており興味深い。
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讃・珍・済・興・武ら五王の中国との交流を通し、倭国の王権、文化レベル、中国・朝鮮半島との国際関係など、5世紀の倭の実態を描く
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古事記、日本書紀をベースにした半親和的な古墳時代の天皇家の系譜を宋書をベースに再解釈を試みる。また、朝鮮半島、および中国の王朝の政治的状況を分析し、ありえたこと、ありえなかったことを考えて、日本の政治状況を推理している。
8世紀に成立した古事記、日本書紀は江戸時代から本格的に分析されているが、宋書と突き合わせてみると本当に5世紀に訓読みが存在していたかもわからず、倭の五王が本当は誰か、讃、珍、斉、興、武の最後の武が、獲加多支鹵(ワカタケル)であり、雄略天皇であるという定説が本当に正しいのかもわからない、とする。
訓読みのみならず、長子相続ではなく、兄弟あるいは一族の有力者が家督を相続していたようだし、架空の天皇、誇張の外交文書もあったと思われる。 -
2018/05/12:読了
倭の五王について、中国、朝鮮の資料から当時の状況を説明している本。
日本の日本書紀、古事記については、たまに比較のため参照しているだけ。
百済、新羅、高句麗、北魏、南宋の関係、伽耶の状況など、初めて理解できた気がする -
中国を中心とした東アジア情勢を視野に入れないと日本の歴史を知ることはできません。古墳から考古学的に読み解けるものがある。記紀に縛られない。安易に天皇を比定しない。当たり前のことですが新鮮でした。この時代は王族集団が並立したこと。ホムタワケ系から継体系への移行など、時代をダイナミックに捉えることができる好著です。
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良かった。倭の五王。中国の歴史書ベースで語られるその姿、当時の東アジアの様子、倭の様子。
日本では記紀をベースにしたものが主流らしいが、読んでみればわかるが、全く資料としてあてにならない。単に事実に興味がある私としては中国の資料をベースにしてるこのような本はありがたかった。彼らにとっては倭国は属国というか、どうでもいい、書き換える必要のない国であるため、割と事実が書かれてそうだと納得もできる。
最後に年表もあるし、嬉しい作りです。 -
前半は中国、朝鮮そして日本の朝鮮半島をめぐるAD5世紀頃の争奪戦の考察。白村江の戦の前哨戦。
後半は倭の五王の推察。
ロマン溢れる新書でした。 -
記紀のキャラに比定とか不毛なことをせず、宋書のみから人物像を描出する。面白い試み。