プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書 2423)
- 中央公論新社 (2017年3月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121024237
作品紹介・あらすじ
1517年に神聖ローマ帝国での修道士マルティン・ルターによる討論の呼びかけは、キリスト教の権威を大きく揺るがした。その後、聖書の解釈を最重要視する思想潮流はプロテスタンティズムと呼ばれ、ナショナリズム、保守主義、リベラリズムなど多面的な顔を持つにいたった。世界に広まる中で、政治や文化にも強い影響を及ぼしているプロテスタンティズムについて歴史的背景とともに解説し、その内実を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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ルターの「行動」の結果と現代まで残るその影響についてまとめた一冊。
プロテスタンティズムといえば、おもな登場人物としてルターとウェーバーの2名だけ押さえておけばいい気もしないでもない。その2名のうちのどちらかというとルターの基本的なところは思ったよりもまとまりがあって読みすかった。
ただ、そのマックス・ウェーバー的な「現代まで残る影響」についてはどちらかというと否定的なところはそれはそれで良いのだけど、「否定的な見方が主流」というその根拠がほとんど示されていない。ウェーバーから入った人は「で?」だと思う。
オビには「保守とリベラルの源流」とあるが、結論として「近代世界の成立への貢献は限定的」と読めなくもないところがちょっと自分には読解できなかった。 -
プロテスタンティズムの全貌を理解するのにうってつけの入門書。1517年のルターの「95ケ条の提題」から今日のアメリカに至るまでの変遷を丁寧にたどる。(本書で読売・吉野作造賞を受賞したが、研究不正により取り消し)。
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宗教改革の意味合いからその後のプロテスタンティズムの展開を詳述した労作。兎角一括りにされがちなプロテスタントの多様性がよくわかる。著者もあとがきで触れているが、カルヴィニズムへの展開にも詳しければ、さらに良かったかなと思い、今後に期待する。今の欧米の状況を理解するために必読の書である。
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現在の西欧中心の世界の成立に大きく関与しているはずなのにプロテスタンティズムについてちゃんとわかっていなかった反省があって…かと言ってマックス・ヴェーバーなんか読んでもちんぷんかんぷんだろうし…と思っていたら図書館にこの本があったので。自分の従来の理解では金儲けに走ったカトリックに対してルターが立ち上がりプロテスタントという宗派ができてプロテスタントが盛んな国では資本主義も盛んになった、という大雑把なものでこれがかなり間違っていることに気付かされた。つまりルターやスイスのカルヴァンが目指したのはあくまでカトリックの改革であって宗派を作ることではなかった、そしてこれらは言わば古プロテスタンティズムであって更に新プロテスタンティズムがあると。識字率の悪い時代はとにかく教会の言うことに従っていれば天国にいける、という素朴な信仰が殆どであり悪名高い免罪符などの原因になったわけだが識字率の向上と印刷技術の発達によってプロテスタンティズムの聖書に帰れ、という運動の結果、解釈の相違によって様々な流派が誕生した。その中でも「予め救われる人間は神によって定められていて経済的に成功した人間は神に祝福されているのだから成功をめざすべき」という考えの一派が~つまりプロテスタンティズム全部ではない~資本主義の発展に寄与したという説明は特に腑に落ちた。西欧がなぜいまのようになったのか、について非常に分かりやすく説明されていてものすごく面白かった。カトリックの高校とプロテスタントの大学出てるのに今更で恥ずかしいけれども…。
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難しそうと思ったけどそんなことなかった。
サクサク読めて面白かった!
贖宥状に関して、本人たちは大真面目なんだろうけど笑ってしまう。お金を払うと罪が帳消しになり、天国へ行けると信じるなんて。今と比べると寿命も短く、死と隣り合わせなので仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないけれど。
良いか悪いかは別として、アメリカの影響を大きく受けている日本で、プロテスタンティズムを受け入れられなかったことは興味深い。
宗教を学ぶのは面白いですね。 -
一口にプロテスタントといっても様々あり、保守系にもリベラル系にもつながっているというのが面白い。教義を聖書に求めたが、聖書の解釈には様々あり、取りまとめるような存在がいないと。
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コンパクトにさくさく読める良著。現在のルターイメージはドイツナショナリズムとの協力のなかでつくられたものであり、ルターの等身大の姿が描かれる。また、ルター派などのプロテスタンティズムを古プロテスタンティズム、アメリカにわたったものなど、を新プロテスタンティズムとし、その対比を描く。とても勉強になり、カールレーフラーがなければ多くの人にすすめたかもしれない。