シルバー民主主義 - 高齢者優遇をどう克服するか (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023742

感想・レビュー・書評

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  • テーマ・着眼点としては秀逸。
    もっとわかりやすくテンポがあったら、なお良かった。
    また、諸外国と比べて日本の悪いところが強調されているが、諸外国の失敗事例と分析がもっと多いと隙がなくなると思う

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685433

  • 要約)
    現代の日本では、増加の一途を辿る高齢者層から票を得ることを目的とした、高齢者優遇政策が不作為のものを含め公然と行われている。年金制度もその一つであり、この制度は、制定当初とは社会情勢が大きく変化した現代(平均寿命の伸長など)でも、一度の年金受給開始年齢の変更を除いて、大きな改革はなされていない。年金の本来の目的は高齢者の中でも貧困に苦しむ人々を救済することであるが、積立方式(高齢者自身が保険として積み立てしたものを老後にもらうこと)から賦課方式(勤労世代から高齢者に給付すること)に変わり、更に高齢化したことで、裕福であるはずの高齢者をも優遇し、勤労世代の負担が増加しているのが現状である。
    したがって、裕福な高齢者が相対的に貧困な高齢者を救済するシステムに代えるべきである。また、就労が可能な高齢者の労働力も年金問題を解決するためには重要であって、シルバー市場の整備も早急に着手されるべきである。
    シルバー民主主義の下、現状を打開する抜本的な改革を講じるには、死に逃げを防止するためにも高齢者の合意が前提条件となる。具体的には赤字国債に全面的に依存した現在の年金制度はいつか崩壊すること、それに構わず維持したとしても、自分たちの孫世代が返済に苦しむことを高齢者に理解してもらうことが挙げられる。

    感想)
    高齢化社会と民主主義の関係は密接だということを本書を通じて知ることができた。国民の代表たる政治家は集票するために、増え続ける高齢者層を優遇する政策を掲げることは単に当選するだけのためなら合理的であるが、他方それは将来を考えていない愚かな行為である。そうして若者の意見を蔑ろにすることは現行の政治への失望をもたらし、ポピュリストの台頭をも招きかねないものだと言える。既得権益と古臭い価値観を護るために自分たちに不利益な制度や価値観の導入を真っ向から否定する高齢者層をいかに納得させるか、それがシルバー民主主義が抱える問題点を克服するためのカギとなるであろう。

  • キャッチーなタイトルでどうかと思ったが、なるほどちゃんとした議論をしている。
    年金の話ばかりではなくて、保育の社会化や、配偶者控除の見直しといった社会保障全般についての考え方にも言及していて参考になる。

    税制についても、社会保障目的消費税導入の意義を、所得税のもつ「雇用税」的な側面の問題性や、資産をもつ高齢者からの同世代間での再配分の可能性から論じており、一定の説得力がある。

    良書。

  • シルバー民主主義とは、人口比の大きさに加えて投票率の高さから高齢者にとって都合の良い低負担・高福祉政策が選択され、後の世代にツケを回すことを指す。全く著者の指摘通りで、富裕な高齢者から困窮した高齢者に世代内で所得移転をすることが有力な解決策だが、”ネコ鈴問題”を解決することは難しいだろう。もう絶望しかない。
    極論に聞こえるかも知れないが、本当に必要なのは消費税ではなく相続税の課税を強化して福祉目的税とすることと、寿命の延びを抑えること=高齢者向け保険医療範囲の大幅な縮小だと思う。後者は近年ようやく「残りわずかな寿命を延ばすためにその医療は必要か?」という議論が始まったが、もっと国民的に議論されてしかるべきだ。『寿命』の概念を考え直す必要がある。

  • 現状分析と政策提言が多くなされている。
    反対する方も多いだろうけど、行政職員必読だろう。
    基礎的な事実を網羅的に集めている。良書

  • 2015年時点で・・・
    日本人の4人に1人が65歳以上のジッチャンバッチャン・・・
    4人に1人って、改めて考えても凄いですよね・・・
    これが益々増えてくってのがまた恐ろしいところですが・・・
    少子高齢化が進みまくっている日本・・・
    今後も止まらない日本・・・
    少子高齢化が政治・政策に影響与えまくり・・・
    ジッチャンバッチャンは人数が多いだけでなく・・・
    ちゃんと投票する人が多いので・・・
    選挙に勝たなければただの人である政治家は、当然ジッチャンバッチャンに振り向いてもらうために政治を行うようになりがちに・・・
    ジッチャンバッチャンが望む政策を重視するようになる・・・
    で、ジッチャンバッチャンの関心が1番高いのはやはり社会保障関連なんですよね・・・
    年金、医療、介護などですね・・・
    自分らの暮らしに直撃するから、そりゃ切実ですよね・・・
    なもんで、社会保障をなるべく手厚くしてくれそうな政党・政治家が選ばれやすくなる・・・
    こんな状況をシルバー民主主義という・・・
    社会保障の充実は別に良いことでは??
    うむ・・・
    確かに・・・
    でも・・・
    その社会保障・・・
    めっちゃ赤字状態なんですよね・・・
    保険料で賄ってるのって約6割で、後は税金(国と地方)で賄ってます・・・
    税金で賄ってますって言ったって、一般会計見れば分かりますがこれほぼ借金です・・・
    国債発行して賄ってるということです・・・
    うむ・・・
    今後ますます社会保障費が増えてくのに、働いている人減ってるので、保険料収入はあまり増えませんので、税金面の投入がさらに増えてく・・・
    つまり今でも巨額の日本国の借金がもっともっと増えてくってことですね・・・
    日本国の借金増えてる主因はこれです・・・
    そんな中で・・・
    シルバー民主主義によって、さらにジッチャンバッチャンを優遇するということは・・・
    ・・・
    返して行くのは我々世代・・・孫世代・・・曾孫世代・・・
    ジッチャンバッチャンのための年金やらの社会保障の4割(あくまでも今の時点)は・・・
    子や孫の将来の負担増によって賄われているとも言える・・・
    日本国債返さなくても大丈夫説もありますが、たぶんそんなことはなくて、マーケットの動向次第のはず・・・
    このまま財政状況悪化して・・・
    国債、日銀の信認がアウトになったら・・・
    国債に買い手がつかない、国債が売られまくる状況になったら・・・
    社会保障の税金で賄ってる分が賄えなくなるってことだから・・・
    強制的に年金カット・医療費、介護費用負担大幅増とかってことになるわけで・・・
    ジッチャンバッチャン自身にも跳ね返ってくるってことになるわけで・・・
    今のうちからの、なるべく早めの年金給付の抑制や、医療保険の自己負担率の優遇見直しは・・・
    ジッチャンバッチャンイジメではないってことです・・・
    ジッチャンバッチャン自身にとって大切な、暮らしの基盤である社会保障制度を持続させるためにも不可欠な改革であるってことで・・・
    シルバー民主主義の主役であるジッチャンバッチャンにこそ、ご理解とご納得とご協力が必要なわけですが・・・
    ジッチャンバッチャンどうでしょう?
    っていう本・・・

    シルバー民主主義の最大の弊害は・・・
    増える社会保障費の削減も、そのための増税のいずれにも反対、というジッチャンバッチャンの声の高まりの結果、政府の借金が際限なく増えることで・・・
    それによって世代間の格差が拡大することと、充実していると思っていた社会保障制度がパンクしてしまうこと・・・

  • 少子高齢化社会に対応した社会保障の枠組みとは?-「年齢不問」社会

  • 豊富な参考文献をもとに、シルバー民主主義の問題点と克服策を示す一冊。
    それにしても、「シルバー民主主義」気が重くなりますなぁ。

    付箋は18枚付きました。

  • 「増える社会保障費の削減も、またそのための増税のいずれにも反対」と言って、優遇恩恵を受けるシルバー民主主義のわがままは、政治のポピュリズムが許している実態だが、それが非論理的で矛盾に満ちていることを詳説している。後の世代への負担の先送りは止めなければならない。シルバー民主主義を解消する必要があるが、人も政治も自己中心的である限り解消することは難しい。世のため人のための当たり前の政治が、いかに難しいことか!また、年金も健康保険も目的消費税で充当する説は初耳で新鮮だった。

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著者プロフィール

昭和女子大学副学長,特命教授

「2022年 『日本経済論・入門〔第3版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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