李光洙(イ・グァンス)――韓国近代文学の祖と「親日」の烙印 (中公新書 2324)

著者 :
  • 中央公論新社
4.00
  • (2)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 58
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023247

作品紹介・あらすじ

李光洙は韓国の夏目漱石である。近代文学の祖とされ、知らぬ者はいない。韓国併合前後に明治学院、早大で学び、文筆活動を始めた李は、3・1独立運動に積極関与するが挫折。『東亜日報』編集局長などを務め、多くの小説を著した。だが日中戦争下、治安維持法で逮捕。以後「香山光郎」と創氏改名し日本語小説を発表。終戦後は、「親日」と糾弾を受け、朝鮮戦争で北に連行され消息を絶つ。本書は、過去の日本を見つめつつ、彼の生涯を辿る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最近、どこかの新聞の書評だったと思うけど、イ・グァンスの「無情」と、この中公新書の紹介を見た。
    この本を読んだだけでは、今の悪化した日韓関係を理解することは難しいと思うが、日本人と朝鮮人がどういう結びつきであったか、その一片を知ることができた。多くの朝鮮人の若者が学ぼうと日本にやってきて、そこで生まれた日本人との交流や友情もあった。ただ、欧米列強への脅威から、日本は朝鮮半島を隣国・友人として扱うことができなかったのかな、と思う。その日本を取り巻く環境の変化が、このイ・グァンスの考えの変化に映し出されている。彼は日本語もでき、日本の学友もいる。朝鮮が自立・発展するための方法として、日本という隣国をどう活かすか、という視点を持っていたのだろう。それが「親日」とみられ、彼の哀しい晩年へとつながる。
    日本と韓国は、切っても切れない隣国だけど、知らないことが多すぎる。今の日韓関係の元になっている戦中・戦後の作家の作品を通じて、色々韓国を理解する手助けになるかもしれない。

  • http://komusume.hatenablog.com/entry/2015/10/15/224528

    finalventさんの極東ブログで紹介されており、面白そうだったので読んでみました。

    [書評] 李光洙(イ・グァンス)――韓国近代文学の祖と「親日」の烙印(波田野節子): 極東ブログ


    李光洙は「韓国の夏目漱石」と呼ばれ、「無情」などの著作が有名。韓国の近代文学の発展に大きく貢献しました。若かりし頃、日本に留学し早稲田で学び、その後日本語と朝鮮語で多くの著作を残しました。朝鮮の独立運動で活躍しますが、途中から転向し、日本に協力的な姿勢を取ります。しかしそのために解放後は親日派として糾弾され、北朝鮮に連れ去られ消息を絶ったといいます。

    本書を読了し、2点のことを思いました。

    1つは、中国・韓国の近代文学の発展には、日本の影響が大きいこと。これは、普通に日本史を学校で習っていても、意外と得難い視点だと思います。だから日本って凄いんだー、みたいな安直な感想もアレですが、当時の日本の先進性ってすごかったんだなー、とは素直に思いました。



    2つは、李光洙をどう見るか、ということの無意味さ。これには、finalventさんの書評に改めてしみじみと共感しました。以下、引用します。

    ---------
    一つは、ひどい言い方だが、李光洙をどう見るべきだろうか、として焦点化して見る必要はないのではないか、ということだ。彼はけっこう気まぐれな感情で行き当たりばったりに生きて、そしておそらくイケメンの典型的な人生の影響もあって、まあ、結果的にそうなった、そしてそうなったことが時代というものだったなあ、ということでも言いように思えることだ。
     めちゃくちゃなことを言うようだが、誰の人生も、早世で余程明確な意志がなければ、後半生に至って、些細な支離滅裂さを覆う凡庸のなかに収束するものだ。むしろその凡庸さの自覚のなかで、何を築き上げたかという達成が問われるが、その意味では、李光洙は韓国近代文学を作ったということだし、それはもっと卑近に言えば、現代の韓流物語の枠組みを作ったということもあるだろう。
    ---------

    彼がどれぐらい愛国者だったのか、どれぐらい反逆者だったのか、日本にどれぐらい親しみや敬意を、あるいは脅威を抱いていたのか、アジア解放という大東亜戦争の大義名分にどれぐらい共感してたのか、またはその態度はあくまでフェイクだったのか・・・なんてことを検証するのは、重要なことではないのだと思います。

    その行動のひとつひとつにぶれない明確な彼の意志があったのかというよりは、彼は韓国併合といった大きな時代の変化にうまく「適応」して生き、その意味でそれなりに平凡に生き、その平凡さの中で偉大な著作を記したことに重要性があるのでしょう。

    それにしても、李光洙という1人の聡明な朝鮮人の人生を通してみる日本史は、非常に面白く、説得力があります。ここ数年で読んだ韓国・朝鮮半島関係の書籍のなかでは最も面白いもののひとつでした。

  • 難しかったです。

  • 2015年8月新着

  • 李光洙は韓国の夏目漱石である。近代文学の祖とされ、知らぬ者はいない。韓国併合前後に明治学院、早大で学び、文筆活動を始めた李は、3・1独立運動に積極関与するが挫折。『東亜日報』編集局長などを務め、多くの小説を著した。だが日中戦争直前、治安維持法で逮捕。以後「香山光郎」と創氏改名し日本語小説を発表。終戦後は、「親日」と糾弾を受け、朝鮮戦争で北に連行され消息を絶つ。本書は、過去の日本を見つめつつ、彼の生涯を辿る。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

新潟県立大学名誉教授。韓国近代文学。著書に『李光洙――韓国近代文学の祖と「親日」の烙印』(中公新書、2015)、『韓国近代作家たちの日本留学』(白帝社、2013)、『韓国近代文学研究――李光洙・洪命憙・金東仁』(白帝社、2013)。翻訳書に李光洙著『無情』(平凡社ライブラリー、2020)、金東仁著『金東仁作品集』(平凡社、2011)。主な論文に「東アジアの近代文学と日本語小説」(日本植民地研究会編『日本植民地研究の論点』岩波書店、2018)ほか。

「2020年 『韓国文学を旅する60章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

波田野節子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×