マリー・アントワネット フランス革命と対決した王妃 (中公新書 2286)
- 中央公論新社 (2014年9月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022868
作品紹介・あらすじ
「高慢」「浪費家」とも非難された彼女が、今なお高い人気を保ち、人々の共感を集めるのはなぜなのか。波瀾の生涯を鮮やかに描く。
感想・レビュー・書評
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何となく為政者と見られがちな人物を1人の人間目線で見ると全然違う風景が見えます。フランス革命の進行とともに犠牲者になってくる姿が切ない。ルイ16世もだいぶ印象変わりました。
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マリー•アントワネットさんが苦労したところがわかった。
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ひどく馬鹿な女でも威厳ある王妃でもなく、ただただ時代の激しく移り変わる境目に居合わせてしまった人間、という感じで泣けてしまった。ルイ十六世も同じ。違う時代に生まれていたら…と思ってしまう。
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しっかりした評伝。ツヴァイクの名著『マリーアントワネット』の誤りも正していて有益。ベルばらとか好きな人は楽しいのでは。
革命勃発のころ,マリーアントワネットは王太子であった長男を7歳で亡くし,悲歎に暮れていた。そして,それに国民が無関心であることにも深く傷ついた。
国民はそれどころではなかったから当然だが,彼らが全く違う世界に生きていたことをよく示すエピソードだと思う。パンがないなら云々よりも。
ヴェルサイユ行進,パン不足を訴える女達が国王夫妻に掛け合ってパリに連れ帰ったって何となく良さげな話だけど,もっと血なまぐさいのな。
掛け合うというより宮殿内になだれ込んでの実力行使による強要で,近衛兵が何人も惨殺され,その首が槍の穂先に掲げられパリへの行進の旗印になったという…。
1789.7.14のバスティーユ襲撃でも守備隊司令官の首級が同じ扱いをされていて,初めて知ったときはドン引きだった。
1791年夏至のヴァレンヌ逃亡事件も,捕らえられてパリへ戻るとき,挨拶にやってきた地方貴族が目の前で群衆に殺されたりしていて,イメージだいぶ変わるんですけど…。
かといって,ヴァレンヌから連れ戻されたマリー-アントワネットの髪が,35歳の若さにもかかわらず真っ白になっていた,というのはさすがに誇張だろうと思う。
他にも歴史のエピソードに散見される「一夜にして白髪に」って生理学的にあり得るんだろうか?一種のレトリックとして捉えてるのだが。
革命裁判所で死刑判決が下った後,数時間の猶予の間にマリーアントワネットは王妹エリザベートに宛てて手紙を書いた。
感謝と誇りに溢れたその手紙は結局届けられず,エリザベートも恐怖政治の中断頭台の露と消え,手紙を止めたロベスピエールも二ヶ月後に同じ運命を辿る。
数奇な手紙すぎる…! -
最期までフランス王妃であったマリー-アントワネット(著者に倣って)の伝記。
当時の情勢、民衆の感情も並列で書いてあるため、王家の行動の何が悪手だったのか初めて理解したかもしれない……。
彼女は目立ち過ぎてしまったし、(当時としては当然だが)王権神授説が正義だった。外交取引にも使えなかったし、末路は哀れかもしれない。
ただ、だからこそ後世で人気が出たのも事実。
フランス革命が当時の世界に与えた影響ももちろんあるけど、彼女がいたから『1789』や『ベルサイユのばら』のような作品が生まれるのだろう。 -
序章 バラ色の門出
第一章 ヴェルサイユ宮殿
第二章 トリアノンの女王
第三章 革命勃発
第四章 チュイルリー宮殿
第五章 革命の嵐の中で
第六章 囚われの日々
終章 歴史は流転すふ -
[図書館]
読了:2016/11/27
「美術品でたどるマリーアントワネットの生涯」とかなり重複しているところがあった。向こうの参考文献に載ってたかな。
向こうの本で中野京子さんがかなりのマリーアントワネットびいきなのに対してこちらはどちらかというとルイ16世びいき。
「些細な人事ではアントワネットの望みを聞いてご機嫌とりするが、重要な政治事項については流されることはなかった」と評しているけど、だとしたらアントワネットのエチケット廃止をサクサクと受け入れて王権の下支えしてきたものを無くしたり貴族の反感を招いたりしないと思うんだけどな〜。 -
マリーアントワネットファンとして関連本は何冊か読んではいたけど、この本は大好きな花總まりさんが帝劇舞台1789でアントワネット役を演じるにあたり読んでいるとブログで知り、(1789観に行く身としても)絶対読みたい!!と思って購入してみたものだったが、想像以上の良書で、読んでよかった。
今までのアントワネットとフェルゼンの関係性や、特にルイ16世像の捉え方が違っていて興味深く面白かった。
マリーアントワネットという人は、あの時代のフランス王家にさえ嫁がなければどんなに幸せで愛された一生を送れたか、、、と思うと胸が痛む。母性、愛情に溢れ、一女性としては本当に魅力的な人物。ただ、賢さが少し足りなかった。マリーアントワネットもルイ16世も今までの負の遺産を一身に背負わされた不幸の王と王妃だった。
いたるところで、ここで違う判断をしていれば助かったし、違う未来があったのに!とやきもきさせられもした。
しかし、この本のテーマ「いかに美しく敗れるか」をその身をもって体現し、気高く王妃として断頭台の露と消えたことで後世こんなにも名を残し後に愛される王妃として蘇ったのかと実感した。 -
フランス革命に関する人物伝を数多く発表している著者によるマリー・アントワネット伝。著者は歴史学者ではなく、フランス文学者。おそらく、本書にも独自の想像が含まれているのだろうが、読み物として割り切れば、歴史の世界に没頭させてくれる良書だ。
本書のマリー・アントワネット評は、あまりに王妃のプライドを持ちすぎ、フランスを統治するのはフランス王室以外にあり得ないという観念に縛られた悲劇のヒロイン。そんな頑固な姿勢が、夫ルイ16世をフランス脱出に駆り立ててしまった。その失敗が理由で、夫妻は革命政府によって監禁され、その後処刑される。
しかし、当時の社会では人が生まれながらの身分を持っていることは当然であり、王室の下に国民が位置するのも当然。フランス革命で唱えられた人権主義、平等主義なんてことは想像外だし、それは国民だって同じ。今になってマリー・アントワネットをコチコチの王室原理主義者と批判するのはかわいそうだ。フランスからの脱出も彼女にすれば、単に実家オーストリア王朝に力添えを頼むだけの軽い気持ちによるものだった。
結局、彼女はそれほど優秀でもないが、劣悪でもない、平凡な王妃であった。たまたま、在位中にフランス革命が起こったために、後世から注目される存在になってしまった。 -
歴史的にも著名な王妃であるマリー-アントワネットの伝記です。彼女を読めば、そのままフランス革命を知ることができるという位に、フランス王室そのものだったのだなと思いました。王政が倒される過程において、国王と王妃は確かにいくつか間違いを犯し、そのために滅んでしまったのですが、国王にも正しいところもありました。それを滅ぼしてしまった、血を流してしまったところに、フランス国民もまた間違いを犯してしまったのだと思います。その後、第五共和制になった現代も、フランスは栄光というものには届いていないように感じます。それはこの歴史の転換点での選択に原因があったのだとわかりました。
王妃として優雅に生きた前半と、囚われてからの王妃としての使命に目覚めていく過程が、とても魅力的で読ませてくれました。