オスカー・ワイルド - 「犯罪者」にして芸術家 (中公新書 2242)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022424

作品紹介・あらすじ

『サロメ』『幸福な王子』『ドリアン・グレイの画像』など多くの著作と数々の警句で知られる「世紀末芸術の旗手」オスカー・ワイルド。アイルランドに生まれ、オックスフォード大学在学中から頭角を現した青年期に始まり、同性愛裁判に敗北し、保守的なイギリス社会から追放される晩年まで。「私は人生にこそ精魂をつぎ込んだが、作品には才能しか注がなかった」-どの作品よりも起伏と魅力に富んだ彼の生涯をたどる。

感想・レビュー・書評

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  • 書評『オスカー・ワイルド「犯罪者」にして芸術家』宮崎かすみ著 |AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2014020400025.html

    オスカー・ワイルド|新書|中央公論新社
    http://www.chuko.co.jp/shinsho/2013/11/102242.html

  • 最後は、さまざまの友人の前で、それぞれ異なった自分像、改悛した者、男色へ生きる者、家族を想う者、才能の枯れていない者、を演じ分け、それぞれに対して、いない者への悪口を述べていた、ということか。それでもなお、残された作品のうちのいくつかの煌めきは後世にまでとどろくものであったことは否定できない。「私の人生における二つの大きな転機は、父が私をオックスフォードに送り出したときと、社会が私を監獄に送り込んだときであった」p.18「ぼくの青磁にふさわしく生きるのは、日ごとに難しくなってきている」p.20「詩人になって、作家になって、そして劇作家になる。とにかく有名になる。たとえ悪名でも名を売るよ」p.34ワイルドは「ペン・鉛筆・毒薬」という評論で描いたトマス・グリフィス・ウェインライトのように、「若い洒落者として何者か」になろうとしていた。p.35ワイルドは人々の話題の的になろうと決意し、とてつもなく目立つ服装をして人の目を惹き、ウィットの利いた会話で、見るだけでなく聞くにも値する男であることを証明してみせた。こうしてオスカー・ワイルドは、何の作品を生み出すこともしないままに、よそ者にとっては難攻不落の年、ロンドンをやすやすと征服したのである。p.40「何か申告するものはありますか?」「何もありません、才能のほかには」p.47「芸術をそれ自身のために愛せよ、されば汝の求むもの、すべて与えられん」p.48彼は、リスペクタビリティ(中流階級独特の上品ぶった振る舞い)を笑いものにして中流階級を敵に回したにもかかわらず、中流階級が稼いだ金はほしかったのである。p.55「彼の犯罪はそのスタイルに強烈な個性を与えた。これは初期の作品には欠落していた資質だった」p.67このような芸術(肖像画)と人生(ドリアン)の関係性の?倒は、「人生は芸術を模倣する」という「嘘の衰退」のテーマをプロットで表現したものである。p.93こうして緑色のカーネーションは、わかる人だけにわかる秘密の符号として、その夜の劇場を彩った。p.109『真面目が肝心』は、ワイルドの社交界喜劇としては、四作目にして最高の出来映えとなった傑作である。p.128「神々や芸術家たちというのは、常に曖昧さを備えているものだよ」p.138「本当は...私が嘘をついたの」(「理想の夫」)p.141「真の友人ならそんあことは言わない」(ダグラス)p.155「破産裁判所へ移送されたとき、ロビー(ロス)が裁判所の陰気な長い廊下で待っていてくれた。野次馬が群がる中、手錠をかけられ、うなだれて通り過ぎた私に向かって、彼はうやうやしく帽子を取ってくれたのだ。その様子が気取りのない、とても素敵なものだったから、群衆もシンと静まり返ったほどだったのだよ」p.200友人から借金をしてまで、囚人たちに金を施す。これがワイルドの慈善の流儀なのである。この話は、自分の宝石や金箔を剥いで困窮する者らに施す幸福な王子を彷彿とさせる。p.229ワイルドがダグラスのことを悪しざまに言いながら、ダグラス本人には愛情のこもった手紙を書いていたことはジッドが証言した。ダグラスも『自伝』中で、釈放されてからのワイルドが自分に対して二枚舌を使っていたと、困惑しつつ書いている。そしてワイルドがそんなことをした理由は、酷薄なダグラスに裏切られたかわいそうな自分を演出して人々の同情をかい、財布の紐をゆるめさせるためだったのだろうと推測する。なぜなら、ダグラスにはやはりロスやハリスのことを、ケチだの送金がなだのと悪口を言っていたからだ。p.244晩年のワイルドが友人たちに寄生しながら、その陰で彼らの悪口を言っては同情を集めていたというのは、残念ながら本当のようだ。p.245多くのワイルド伝の伝えるところは違って、実際にはダグラスとパーシーは、出獄以降、ワイルドに相当な額を援助していた。さらに二〇〇〇ポンドを求めるというのは、強欲のそしりも免れない厚かましさである。p.268

  • ホワイトケースなどでちょいちょい出てくるオスカーワイルドとは何ぞや?と思って読んでみました。

    ホイッスラーとか最近展示があるし、サラベルナールもミュシャ展のおかげで知っていて名前や時代や関係性がちょいちょい繋がったw

    軽い気持ちで読み始めたけどやっぱりこの程度の興味で人の一生をじっくり事細かに書かれているのを読むのはなかなかつらいものがあったww
    そろそろギブアップしますw
    浅く知りたい人にはこれは深すぎるww
    84

  • 丁寧な調査のもと書かれたワイルドの評伝。当時の英国での同性愛がどう認識されていたかなど背景情報も詳しい。ワイルドがドレフュス事件と関わっていたとは!また、ワイルドの長男は日本に来たこともあったそう。
    一文字も書いてないうちから、天才として自分を社交界に売り込み、傑作をものしたのはあとからだったとか、本人の生涯は作品以上におもしろい!
    おすすめです。

    それにしてもボウジーとの腐れ縁は酷かったのだなあ。どうしても、ボウジーの言動のくだりは頭のなかでジュード・ロウで映像化してしまう...

  • オスカー・ワイルドについて全く知識がなかったが、読み終えることができた。非常に分かりやすく書かれていた。

  • 科研費の成果という点も素晴らしい。

  • 新書だけど、かなり情報量が豊富。一般に流布しているワイルドの「殉教者」としてのイメージを相対化するのが狙いらしい。ダグラス卿に対する二枚舌とか、性科学に対する関心とその利用とか、あとドレフュス事件との意外な関わりには驚かされた。日本ではあまり馴染みのない「変質論」(当時の脳科学みたいなもの)にも多く言及していて、ヨーロッパのゲイ文化史の教科書としてすばらしい。

  • オスカー・ワイルとがアイルランド出身の作家だということは知っていましたが、それ以外はほとんど生涯については何も知らず、パリに墓があることも本書で初めて知りました。ただ、それ以上に、本人の人生が波瀾万丈と言いますか、こんな奴が知り合いにいたら絶対親しくなりたくはないと思わせる、そんな人でした。『サロメ』『ドリアン・グレイ』は読んだことがありますが、だからといって作者が倒錯的な人だとは思っていなかったのですが、むしろ作品よりも作者自身の方が遙かに一線を越えてしまっている、そんな感じです。著者が述べているように、日本人だからこそある程度の距離をもってワイルドの生涯をたどることができていたのではないか、そう思います。

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著者プロフィール

宮崎かすみ(みやざき かすみ)
1961年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。専攻、英文学・思想史。横浜国立大学を経て2009年4月より和光大学表現学部教授。編著書に『差異を生きる—アイデンティティの境界を問いなおす—』(明石書店)、訳書にアルベルト・メルッチ『現在に生きる遊牧民—新しい公共空間の創出に向けて—』(岩波書店、共訳)などがある。

「2009年 『百年後に漱石を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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