重金属のはなし - 鉄、水銀、レアメタル (中公新書 2178)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021786

作品紹介・あらすじ

重金属と人類とのつきあいは古くて新しい。IT産業にはレアメタルが欠かせず、私たちの体にも釘一本分の鉄が含まれている。一方で、調味料として鉛が利用されたローマ時代には中毒が多発し、水銀やカドミウムの汚染は今や全世界を覆っている。ビッグバンに始まる重金属の歴史、その特徴、利用法を解説。さらに、メリットとリスクを同時にもたらす重金属と人間の関係を水俣病などの事例に学び、つきあい方を再考する。

感想・レビュー・書評

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  • 重金属の産業や生命での利用、そして環境に与える悪影響が記されている。製造業に携わるなら覚えておきたい話だった。

  • p.70 酸素呼吸の過程で活性酸素種が発生するが、それを除去するため、銅を中心とする重金属を利用した抗酸化酵素が発達したと考えられる。

  • 化学・工学的な有用性ではなく、毒/環境への負荷としての重金属の話がメインだった。公害について読むのは久しぶりだが、どの件も足尾銅山の頃からずっと判で押したように同じ展開で気が滅入る。

  • 新書文庫

  • 重金属がなぜ、生物の中に必須元素として取り込まれ、取り込まれた筈の重金属がなぜ、毒となり、人の健康をむしばむのか。著者は、地球の歴史の中で、生物の生活の中にに余計に取り込まれなくなった重金属が、人間が掘り起こして、活用することで、再び、生物の生活を脅かすようになっていると。公害の事例など、知っているようで知らなかったこと、レアメタルを掘り起こしていることがこれからどんな影響を起こすかなど、考えさせられる。

  • 銅や鉄、更に水銀、カドミウムといった重金属。宇宙の歴史に密接しており、人間の体内にも重要要素として極微量含まれてます。
    一方、生活にも深く関わっていて、昔は絵の具、今はケータイ・電化製品と大活躍!文明の発展には欠かせないスゴイものなのです。
    しかし、使用過多による公害、時には、国際問題を引き起こしています。
    市場主義の悲喜。

    産業の発展に伴い便利・裕福にはなったが、筆者の投げかける「足るを知る」の言葉が重い。満足ってナニ?

  • 前半は重金属の紹介。物理、歴史、人文などの幅広い知識に裏付けられた文章に、感服しました。
    後半は重金属による環境汚染の話し。珠玉の前半を踏まえての、被害者の立場に立った考え方は、非常に納得性がありました。

  •  重金属と人間の関係性を書いた本、一部の重金属は必須元素ではあるが、過不足が生じると人体に様々な影響を及ぼす。水俣病やイタイイタイ病は学校でも教えられるが、せいぜい症状とその原因物質程度。単に重金属を科学的観点から人体にどう影響するかを捉えるだけでなく、社会的な背景、現実的感覚で記述されている点が印象に残る。特に被害者の症状だけでなく、被害後の対応は悲惨。土呂久鉱毒事件の描写は際立っていたように思う。環境分析をする自分にとって、改めて何のために分析をするのかを考えさせられた。
     また、公害は過去のものでなく、法的整備のなかった時代に、土壌や海中に投棄された産業廃棄物から浸出する汚染物質の影響が現代にになって現れてくること、そして人体への影響が不明な点が多いレアメタルに警鐘を鳴らす。文明を支えてきた重金属との上手な付き合いが望まれる。

  • 重金属は、文明にとっての必須元素である。金、銀は宝飾品や富の象徴として重要な役割を果たし、銅や鉄は農具や武器として文明の発展を支えてきた。鉛や錫、水銀なども古くから使用されていたし、最近は各種レアメタルが高度な科学技術の根幹を支えている。
    一方で、重金属には、よく知られたように人体への毒性を持つものも少なくない。ヒ素や鉛、水銀は言うまでもなく中毒を引き起こすし、カドミウムやクロムなども廃液処理では必ず問題になる。
    本書によれば、そもそも重金属が人体への害を持つ理由は、生物の進化の過程において、重金属に対する暴露が稀な現象であったから、とのことである。一方で、カルシウムやカリウム、鉄、果てはヒ素に至るまで、人体への必須性が確認されている重金属も多い。
    重金属の奥深さを垣間見ることができる一冊です。

  • 重金属類とそれに付随して引き起こされた様々な公害問題,近年のEU諸国を中心とする新たな規制的手法に至るまで,極めて網羅的に書かれており,とても勉強になります.

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著者プロフィール

大阪経済大学名誉教授

「2023年 『会計と倫理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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