都知事: 権力と都政 (中公新書 2090)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020901

作品紹介・あらすじ

都知事は首相より強い権力者と言われる。首相が頻繁に交代するなか、もう一つの政府とも言える都知事は原則四年間変わらない。一三〇〇万の都民を背景に、GDP世界第一〇位以内の実力を持つ東京都は、日本で突出した力を持ち国政に影響を与え、また公害をはじめとする新たな問題と格闘してきた。本書は、都知事のもと、国家の一歩先を走ろうと試行錯誤した歴史を辿りながら、大都市東京の実態と可能性を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 東京都はGDP換算で世界10位以内の実力。首都東京がしっかりしていれば日本は大丈夫という東京機関車論もあるくらい。
    日本の国税の収入も4割は東京からあがる。知事は当道府県という自治体を代表し行政を統括する執行機関として位置づけられる。
    知事の身分は常勤の特別職地方公務員。
    直接公選された首長と議会には、それぞれ執行機関と議事期間の役割がある。
    日本の自治体は首長が条例案や予算案の提出権をもち、予算編成は議会の関与を認めな首長の独占的権限としている。第二に首長に議会の解散権をあたえているのが特徴。
    首長には予算提出権以外にも、職員の任免、課税徴収、議会の解散権などのおおくの権限がある。
    都知事は直接公選によって選ばれる。約1000万の有権者の票を得てるというのが都知事の力の源泉。
    なぜ都知事は強大な権限者といわれるのか?財政規模は特別会計をいれて12兆円、警察消防学校職員を含めると17万人の組織。
    自治体では首長以外はすべて補助機関。副知事は実質上この補助機関の頂点。
    都知事は執行機関であるがそれをささえる膨大な官僚機構を補助機関と呼ぶ。
    任期中になんとしてもこれだけは実現してみせる、というセリフをのべるものは少ない
    分権時代の都庁幹部に求められるのは政策能力であり経営能力。都知事には人事制度をかえる権限がある。
    東京都新財源研究会という組織をつくって国とたたかってきた歴史
    都財政の危機を生み出すおおきな要因は、景気変動の影響をおおきくうける法人二税(法人事業税、法人都民税)への依存
    東京都の財政は、一般会計、特別会計、公営企業会計の3つでわかれる
    余剰は基金として積み立てられる
    集積のメリットをうける大企業と集積のデメリットを被る都市住民の間の費用負担関係が妥当なものとなっていない。グローバル化の進行のなかで法人税はさげるべしの論調が高い一方で、住民の消費税は所得税は増税すべきの声も強い。法人税に依存している大都市財政はより厳しい局面に。
    東京都の2008年度の国税総額20兆円。国税総額50兆円の約40%。法人を含め都民ひとりあたり150万円を納税。位峯、国から都民に対しての行政サービスは一人当たり10万円で還元率7%にすぎない。100万円の納税に対して7万円の還元。島根県民は還元率500%。
    現在の都区関係には、双方の役割が不明確、住民への行政責任が不明確、都は広域自治体としての大都市行政が弱いの課題がいわれる。都の仕事を減らしいかに区の仕事を増やすかが重要。

  • 2011年1月に発行されたわりと新しい本です。
    無知な私としては、第2章「都知事と都政」が都政の歴史を知る上で役に立ちました。
    久しぶりに東京都の政策に触れました。。。たまにはお勉強本を読まなくてはですね。

  • 東京都の行政について、東京都の特徴、都庁の組織、戦後歴代知事の政策、今後の課題等について、網羅的に解説した本。

  • 都知事は首相より強い権力者と言われる。首相が頻繁に交代するなか、もう一つの政府とも言える都知事は原則四年間変わらない。一三〇〇万の都民を背景に、GDP世界第一〇位以内の実力を持つ東京都は、日本で突出した力を持ち国政に影響を与え、また公害をはじめとする新たな問題と格闘してきた。本書は、都知事のもと、国家の一歩先を走ろうと試行錯誤した歴史を辿りながら、大都市東京の実態と可能性を明らかにする。(2011年刊)
    ・はじめに
    ・第1章 都知事とは何か
    ・第2章 都知事と都政ー戦後六〇年の軌跡
    ・第3章 都議会ー真の立法機関へ
    ・第4章 都庁官僚ー「二〇万人体制」の現在
    ・第5章 都知事と政策決定
    ・第6章 都財政ー常態化する危機
    ・第7章 独自の大都市制度ー都と特別区の関係
    ・第8章 石原都政の大都市経営ー転換を試みた一二年
    ・終 章 大都市東京の行方ー三つの焦点
    ・あとがき

    以前読んだ岩波新書の本と勘違いして購入。読み進めていく内に情報が新しい事に気がつく。
    ネットの書評を読むと、結構評価が高いが、自分としては、それほど感銘も受けなかったし、新鮮味も感じなかった。(あとがきには2003年刊の東京都政と一部類似の部分もあるとしている)

    万事に渡って、完全無欠な政治というものは無いと思うので、著者が過去の都政の功罪を論評するのがどうにも気になる。限られた時間と経営資源(人、物、金)の中では、万人の納得を得る回答は無い。価値観も多様化しており、賛成する人もいれば反対する人もいるのだ。
    その中で、何を優先するのか。本書にも答えがある訳ではない。結局は、有権者と選挙で選ばれた政治家が決めるしかないのだろう。

    制度面での課題や見直しについても言及されているが、現時点では学者の空論に過ぎない。著者は、現在、大阪市の特別顧問を勤めているというが、今後、大阪がどの様になっていくのか、大阪市政を通して、仮説が実証されるところを注視したい。

  •  東京都知事とは東京の行政システムについての入門書。

     戦後の東京都知事の歴史や、副知事や議会、官僚との関係、これからの課題まで幅広い内容が網羅されている。
     読んで知って驚いたこと二つ。一つは東京都は国や他の地方自治体みたいなⅠ種とかⅡ種という区分がないということ。もう一つは地方交付税を唯一もらってない東京都だが決して財政的な余裕がないということ。東京について知らないことだらけだと気づかせてくれる。

     都知事候補は必読の一冊。

  • 題目こそ都知事ではあるが、
    都政について議会や官僚なども含めた仕組みから、
    戦後の都政史、直近の石原都政など広く解説する一冊。
    国との関わりやビジョンの確率など、都知事の影響は強く、
    またその一方でそれらが過去あらゆる面で困難を産んだことから
    都市経営の難しさを感じさせる。
    議会に求められる役割については非常に共感でき、勉強になった。

  • 都知事とは
    歴代の都知事の時代背景と特色
    政策決定パターン
    財政
    東京都と23区の関係
    石原都政
    今後の地方自治における東京都

    さまざまな角度から、過去から今、さらに今後について論じています。
    「東京都政」より分かりやすいかも。


    ざっと流れを把握するにはとても良い一冊でした。

  • 都知事、都行政、都議会について概略が書かれている。普段都民に馴染みの薄い都政についての入門書として適切かもしれない。

  • 表題のとおり、歴代の都知事の政策についての記述が軸となっているが、都財政や特別区制度などにも触れられており、読み応えがあった。都採用試験の対策にも使えるだろう。

  • 財政に余裕があると思っていた東京都。しかし、地方交付税の不交付団体でもあるものの、財政状況は厳しく、歴代の知事も行政改革を断行してきたことが分かる。財政に余裕がない理由として、投資に「選択と集中」がなされてこなかった理由もあるが、東京一極集中と言われるように、他の都市にはない公害問題や渋滞問題、人口過密問題が山積していることが挙げられる。行政サービスの需要の急増により、一人勝ちとされる東京都ですら、財政は厳しい局面を迎えている。この局面を打開するためには、現行の都道府県制度そのものを見直す必要があると筆者は警鐘を鳴らしている。既に大阪都構想や中京都構想が打ち出されているが、筆者は道州制の導入を提言している。
    筆者の描く理想の地方分権型社会についてはあまり紙面が割かれておらず、十分なイメージを持つことはできなかった。しかし、本書では都知事のほか、都議会、都財政、都職員、都の歴史についても詳しく書かれており、地方自治を幅広く知る上での良い参考書となる。また、都の予算規模が韓国に匹敵することや大江戸線の名称を知事が独断で決定したことなど、ちょっとした豆知識も得ることができ、都民以外の人が読んでも為にはなるだろう。

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著者プロフィール

中央大学教授 法学博士

「2013年 『大都市行政とガバナンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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