韓国現代史: 大統領たちの栄光と蹉跌 (中公新書 1959)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019592

作品紹介・あらすじ

一九四八年、日本の植民地から米国の占領を経て、建国した大韓民国。六〇年の間に、独裁国家から民主国家、途上国から先進国へと大きく変貌した。本書は、歴代大統領の「眼」と「体験」を通し、激変した韓国を描くものである。「建国の父」李承晩、軍事クーデタで政権を奪った朴正煕、民主化に大きな役割を果たした金泳三、金大中、そして「ポスト民主化」時代の盧武鉉、李明博。大統領たちの証言で織りなす現代史の意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史というより伝記。
    自伝からの引用があるので、事実かどうかわからないところもあるが、
    韓国政治でなにを良しとするか、ということを知ることはできる。

  • 本作は韓国政治を専門とする木村先生が、韓国の現代史を概説した一冊となる。新書という形式を取っている上にページ数もそれほど多くないため、自分のように韓国史の知識がほとんどない人間でもスラスラと読むことが出来るというの素晴らしい。薄い知識を目一杯引き伸ばしてこの量になったのではなく、豊富な知識の中から読者に向けて適切に切り出したということがよくわかる構成となっている。

    本書の構成がユニークなのは、それぞれの歴史的な出来事に対して、歴代の大統領がどのようにその事件と向かい合ったのか・・ということをまとめて一つの章としていることだ。(今はそういう言い方をしないのかもしれないが・・)歴史を書く時には、編年体か紀伝体のどちらかと考えているような人間にとっては、ちょうど歴史を輪切りするようなこのアプローチはかなり興味深かった。

  • 歴代の韓国大統領の生い立ちから執政、退任までを丁寧に描いており、それぞれの執権時の内外の環境などがわかりやすい。
    また、それぞれの時代の懸案についても解題がなされており、現代韓国を理解するには必読と思われる一冊です。

  • 人物に焦点を当てることで、激動で複雑な韓国戦後史をよく理解できる。筆者の力に感服する。
    こうしたことを理解しておかないと隣人理解などできやしない。

  • 韓国が好きで興味・関心がある身として、かの国の歴史、とりわけ激動の近現代史をひととおり知っておきたいと思っている。何冊か関連した本も読んだけど、なかなか頭のなかで年表や出来事の相関図が描けずにいた。そんな折にふと手に取り読んでみたこの本、1945年以後の韓国現代史を李承晩から李明博までの歴代の大統領を軸に紹介していく。大統領として何をしたかというだけでなく、たとえば朴正煕が大統領だったとき、李明博青年はどうしていたかといった感じ。各人の色合いが強く出るかと思いきや、無個性に通史を並べた本よりも出来事と出来事の関係性が結びつけやすく、将来大統領になる人物が何をしていたかという、いわばサイドストーリーと併せて知ることで各時代の状況がよく見えてくる。著者のアイデアか編集者のアイデアか知らないけど、この切り口はすぐれもの。
    特に面白かったのが、歴代の大統領の治世下でもずーっとその活動の流れを追っていける金大中と金泳三の対比。同じ民主化を目指しながらなぜかたいてい違う立場で共闘することなく、しかも(生まれた家からして)うまく表舞台に立ち続けることができた金泳三に対し、過酷な状況におかれることの多かった金大中。日本ではどちらかというと金大中のほうが知名度、親近感がある感じがするんだけど、金泳三のほうが少なくとも大統領になるまでは実力を買われていた様子がわかった。だから先に大統領になったわけか。
    韓国の民主化が、少なくとも軍政からの移行においてはスムーズにいったという見方もなるほどと思ったところ。光州事変やソウルの春などの過程は確かに相当大変なものだったけど、本書によれば、①権威主義政権側が、自らが極端に追い込まれる前に、「六・二九宣言」を出して、民主化勢力の要求を飲んだこと、②野党側の失策もあり、「新軍部」の流れを汲む盧泰愚が、「第六共和国」初代大統領に当選し、かつての「新軍部」勢力は、全斗煥前大統領に近い一部の勢力が、「第五共和国」時代の政治腐敗と光州事件の責任を取って排除される一方で、多くが政権にとどまることができた、③民主自由党の結成とその後の同党内での主導権争いの結果、金泳三の政治的覇権が確立し、これにより、政権・与党内部に残っていた「新軍部」勢力は、国会内の与野党対立や、激しい街頭活動によってではなく、民主自由党の勢力争いにおいて金泳三に各個撃破されるかたちで排除されていった――ということ。確かにソウルオリンピックがあった1988年に盧泰愚政権がスタートしたこととその後の変化を思えば、相当早くスムーズにその後の民主化が進んだことがわかる。それがあってこその今日の韓国なわけで、過酷な歴史の連続のなかのわずかな好事という印象。
    とにかく大統領になる人物を柱に韓国現代史を紹介するという趣向の勝利。著者の筆力の冴えもあってかぐんぐん読み進めることができる。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/1959/K

  •  最近韓国政治が騒がしいので再読。一般人は、首脳以外の他国の政治家には詳しくないのが普通だろう。しかし、どんな首脳にもそこに至るまでの政治キャリアがある。本書では、1945年以降の各時期を、時の又は後の大統領がその時何をしていたかという視点から取り上げている。
     崔圭夏・盧泰愚・全斗煥は省かれているし、存在感があった金鍾泌も、大統領になれなかった以上単なる脇役扱いである。しかし、一つの時期を様々な人物の立場から見るという、通史にも人物史にもない不思議な感覚に襲われる。たとえば朴正煕による1961年の5.16軍事クーデタの頃、尹潽善は当初協力、後に決別。金泳三・金大中は野党政治家として一定期間政治活動を禁止された後に解禁。1980年以降の第五共和国時代、盧武鉉は民主化運動を契機に人権派弁護士へ。李明博は現代建設社長として政権に圧迫される。金大中は光州事件後に亡命せざるを得なくなり、金泳三は国内での民主化運動。
     軍事政権対民主化運動、という対立軸はもちろん正しいだろうが、実際には朴正煕時代、特に維新クーデタ前には野党側にもそれなりに政治活動の空間はあった。また民主化後も、金泳三は盧泰愚と、金大中は金鍾泌と手を組んでもいる。韓国政治はもちろん今後も続いていくが、民主化・制度化された現在では、これほどのドラマにはならないだろう。
     巻末に掲載された政党・憲法の変遷と年表は大変ありがたかった。本文を読み進む中で何度参照したことか。朴槿恵大統領が突如大統領の任期・再選を定める憲法の改正に言及したのも、このような歴史を知ると一層理解できる。

  • 韓国の歴史を大統領の生涯を通じて紹介する形式。かなり濃密にキャラが立ってるけど、韓国は総じてそうなのか、占領下から朝鮮戦争軍政の激動がそうさせたのか。1人に絞ってじっくり書かれた評伝があれば読みたい。

  • 戦後の韓国史をあまり知らない人にとっては、通史がコンパクトにわかり便利。各時代を、7人の大統領それぞれの状況の視点から書かれており、それぞれの階層からみたい時代背景のイメージがつかめる。韓国の戦後は、政党が次々と誕生しては消えていくのだけれど、巻末に変遷図も収録されていて、その複雑さが理解しやすい。物足りないのは、政党政治に主眼が置かれていて、経済や社会の変遷の説明が極めて少ない点。それは他の本で補うしかないだろう。

  • 韓国現代史を大統領の人生から読み解く一冊。
    イ・ミョンバクは成り上がりですごいなーという感じ。金大中とか金泳三とかは完全に政治屋なんだなと初めて知った。

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著者プロフィール

神戸大学大学院国際協力研究科教授

「2022年 『誤解しないための日韓関係講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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