- Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120055225
作品紹介・あらすじ
『商う狼』で新田次郎賞をはじめ数多くの文学賞を受賞。
大注目の作家が紡ぐ、知られざる鎌倉時代を生きた女性たちの物語。
「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」
建久六年(1195年)。京の六条殿に仕える女房・周子は、宮中掌握の一手として、源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉へ入る。気鬱の病を抱え、繊細な心を持つ大姫と、大きな野望を抱き、それゆえ娘への強い圧力となる政子。二人のことを探る周子が辿り着いた、母子の間に横たわる悲しき過去とは――。
「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内。
その背後には、政治の実権をめぐる女たちの戦いと、わかり合えない母と娘の物語があった。
感想・レビュー・書評
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続けて鎌倉関連本。今回は大姫入内計画について。
先日読んだ『修羅の都』で京での鎌倉派介入策として送り込んだ九条兼実と丹後局との政争がここでは違う形でクローズアップされた。
最初は丹後局、九条兼実、卿局の三グループの関係が分からなかったので自分で相関図を書きながら読んだ。
帝の寵愛を受け、男児を生むか女児を生むかでこれほど運命が変わるとは。
主人公は丹後局の命を受け、大姫入内計画を進めるために鎌倉へ下向した女房名「衛門」こと周子(ちかこ)。
なぜ彼女が選ばれたのかと言えば、大江広元の娘だからだ。これが史実なのかフィクションなのかは分からないが、周子が広元の娘であることはこれまでの人生においても、鎌倉での日々においても良くも悪くも影響を与える。
この作品での大姫は『修羅の都』の大姫とはまるで違う。当初は虚ろな目をして何を考えているか分からない、かと思えば突然子供のように激高する扱いの難しい娘だ。それは義高の死による『気鬱の病』からだろうと言われているが、ここで描かれる大姫と義高の物語は現実味があって興味深かった。たった七歳で義高に愛を捧げる大姫よりはよほど理解できる。
当初はこのミッションを成功させ、大姫入内の際には『一の女房となる』立身出世の欲を抱いていた周子だっただけに、大姫の心許ない様子に最初は戸惑い苛立つ。だがやがて彼女の心中を知ると別の想いが湧いてくる。
周子は父・広元が京を見限り鎌倉へ行ってからは母と二人で生きてきた。学問や様々な知識を武器に己の才智で二十年の人生を『魑魅魍魎が跋扈する』京で生きてきたのだ。
丹後局のような『強さ』こそが憧れだった彼女にとって、大姫との出会いは自分の価値観や人生観をひっくり返すものとなった。
ただ大姫の最期は分かっているだけに、周子がその後どうなるのか、京に戻れるのかどうなのかが気になって読み進めた。
大姫と関わるうちに見えてきたのは、北条家なしには頼朝ですら安泰でいられない鎌倉幕府の姿。頼朝・政子夫婦、政子と大姫を始めとする四人の子供たちの関係、そして鎌倉での勢力争いは実に危なっかしい。
『鎌倉もまた都と同じく魑魅魍魎が跋扈する』場所であったことを知る周子だった。
政子は…ただただ恐ろしい。この政子はこれまで読んできたどの作品とも違う、ダークというのとも違う、別の怖さがある政子だった。
タイトルの『女人入眼』は九条兼実の弟で天台座主の慈円の言葉。
『男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは女人であろうと私は思うのですよ。言うなれば、女人入眼でございます』
『泰平の世を寿ぐ晴れやかな気持ち』で聞いてから二十数年後、それが全く違う意味になっているとは。
丹後局が都で繰り広げた『女の戦』など愛らしいものに見える。彼女は男の戦を『碁石をまとめて碁盤の上にばらまいてしまう』と表現したが、鎌倉の戦は碁石を蹴鞠で碁盤ごと倒してしまうようなものだった。
大姫の死の真相がどうなのかは分からない。『修羅の都』の大姫の死も驚かされたが、こちらもまた斬新で辛い話だった。周子が鎌倉でやったことは意味がないどころか苦しみを増しただけだったのか。
周子のその後がまた興味深い。あまりにも苦すぎる鎌倉での日々を経て、丹後局とも政子とも違う強さを手に入れたということか。周子が長寿だったら鎌倉の凋落の兆しを見て留飲を下げたかも知れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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以前から気になっていた本です。”にょにんじゅげん”と読むのも新たに知った次第で恥ずかしい・・・。サイドストーリー本で、直木賞候補作、図書館に...以前から気になっていた本です。”にょにんじゅげん”と読むのも新たに知った次第で恥ずかしい・・・。サイドストーリー本で、直木賞候補作、図書館に予約を入れてあります。2022/07/31
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しずくさん、おはようございます♪
表題の読み方は私もこの作品を読んで知りました(^_^;)
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ているお陰で、...しずくさん、おはようございます♪
表題の読み方は私もこの作品を読んで知りました(^_^;)
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ているお陰で、登場人物の人間関係もすぐに分かって楽しめましたよ。
しずくさんも図書館の順番が早めに回ってくるといいですね(*^^*)2022/07/31
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尼将軍政子のひととなり、当時の政略結婚が主軸であっはあったが、個人には不幸=呪いの概念がかなり浸透していて面白かった。
政子とのコントラストをつけるためか、頼朝がだいぶ穏やかだったのは少々違和感を感じた。 -
初読作家作、まあ、そこそこ面白かった。大変ゾッとする。ただ、前半波にのれず苦戦した。
北条政子はもともとエキセントリックで恐怖なイメージを持っていたが、本作に描かれる政子の怖いことといったら、何度もゾッとさせられた。これは、ホラー。毒親(毒母)政子の描かれ方がほんとに恐ろしい。
そして、大姫の最後が
全て政子に責任が被さるように逝くところが
結構むねがすいた。
言葉はわるいが”ざまぁ”って感じではある(正直なところ)
とはいえ、政子にはたとえ大姫が死をもった訴えをしたところで、
全く理解はしていないだろうというのも窺える。
個人的に、うちの母とまったく同じタイプなので
身につまさるというか、トラウマが蘇りまくる。
こういう人、
なにをどうしても、自分の中にあるフィルターを通して理解し、
そのフィルターに恐ろしいほどのブレがないので
いつまでたってもどこまでたっても理解しあえることがないという。
パレXチナとユXヤみたいな、、
結局、
話し合いで理解し合うことは無理な場合が多々ある。
たとえ、家族であっても、
どうやっても理解し合えない、ということですな。
無駄。
「しかし、あの御方は過たない。何故、過たないかご存知ですか」
「過ちを認めず、誰かの責にするからです。(中略)己を責めて嘆く人の心など分からぬのです。」
超個人的読了感→脱力感
地雷だった、、。
鎌倉関係は10年ぐらい前に仕事上の理由もありこってりと学習したときに、自分なりの解釈が出来上がってしまっているので、なかなかそこらへんを打ち破るのが難しい。逆に違うイメージや見解の書籍など、ギャップはとても楽しめる。-
2022/09/05
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猫丸(nyancomaru)さん
心遣いありがとうございます。
地雷もまた刺激、いい文章ということでしょう。
ケア不要でございます。み...猫丸(nyancomaru)さん
心遣いありがとうございます。
地雷もまた刺激、いい文章ということでしょう。
ケア不要でございます。みんな悩んでおおきくなるんです〜2022/09/06 -
2022/09/11
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平家滅亡後、京では後白河院の亡き後も力を持つ丹後局は後鳥羽帝の跡目争いの布石として、鎌倉殿の娘大姫の入内を目論む。命を受け周子は鎌倉へと向かう。北条政子の異常にも思える娘への愛。そして様々な人達の思惑が入り乱れる中、周子は大姫の心に深く入りこんでいく。
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都から鎌倉へ、政子の娘である大姫の入内教育者として使わされた周子の目から見た政治。鎌倉殿を楽しんでいる人なら絶対面白いと思います。ちなみに私は歴史オンチ&歴史小説系苦手人間なので少し読むのに苦労しましたが、最後は一気読みでした。政子恐ろしか~。
鎌倉殿は最初の数回で断念したのですが、この小説読んでも、政子はベストキャスティングだけど、頼朝…。ドラマでも合ってないと思ったけど、やっぱり歌舞伎・能あたりの血筋の役者さんが向いてるよ。みんな、大泉洋には一目惚れしないって。芸能人としては好きだけどね~。 -
大河ドラマで旬な、鎌倉時代の物語。
源頼朝と北条政子の長女、大姫をとりまく壮絶なお話でした。おんな達の生き様がどれも強く逞しい。