いのっちの手紙 (単行本)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120054778

作品紹介・あらすじ

雑誌『婦人公論』での対談がきっかけとなり始まった、双極性障害の当事者である坂口恭平さんと、精神科医の斎藤環さんのスリリングな往復書簡。


「いのっちの電話」と称して自らの携帯電話番号を公開し、10年間で2万人の「死にたい」という人々の電話を受け続けてきた坂口さん。電話をしてきた人で、死を選んだのはひとり。その女性も「ずっといのっちの電話をやってください、楽しかったです」という言葉を残していた--。


精神療法の「プロ」である斎藤さんが、坂口さんの「実践、創造、そして方法に、はなはだしく興味津々」で、その技術を知りたいと、往復書簡を申し込んだ。人が人を助けるとは、どういうことなのか?


12通の、いのちをめぐる対話。

感想・レビュー・書評

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  • 電話番号を公開し、延べ二万以上の人々の「死にたい」思いを聴いてきた坂口恭平さん。
    彼は作家で建築家でパステル画家で、双極性傷害の当事者である。
    そんな彼と友人関係である精神科医の斎藤環さんとの12通の往復書簡が本書。
    基本的に斎藤さんが坂口さんに質問し、坂口さんが答えるといった具合。
    「聖なる人」(渡辺京二さん談)や「無常の人」(斎藤環さん談)と周りに言わしめる、坂口さんのパーソナリティーや信条が興味深い。
    こういう人もいるんだー、と思った。
    斎藤さんが坂口さんを誉めそやすので、(斎藤さんは心から思っているでしょうが)何となく宗教感を感じた。

    シャカやキリストは

    色々ごちゃごちゃ言わずに、困っている人がいたら、敵味方関係なく助けていこうぜ、自分なんかたいしたもんじゃないから、世間に晒して、有効活用してもらおうぜ。

    と言っている、と坂口さんが捉えているのには、難しく感じる宗教が風通し良く感じた。

    野生の勘の鋭さが並外れていて、それを有効利用する知性と技術をも持った人だなと思った。

    • 5552さん
      お気になさらずに。

      竹川さんの新版はよくないのですか。
      2019年の函入り本は検索して見たら物欲を刺激されましたが。
      杉田さんの挿...
      お気になさらずに。

      竹川さんの新版はよくないのですか。
      2019年の函入り本は検索して見たら物欲を刺激されましたが。
      杉田さんの挿絵のはあっさりしてますね。
      イラストによってだいぶイメージが違いますね。
      2022/01/19
    • 夜型さん
      ありがとうございます、コニーさん。

      竹川さん挿絵の旧版なら絶品です!
      図書館になら置いてるかもしれません。
      ぜひご一読ください!
      ありがとうございます、コニーさん。

      竹川さん挿絵の旧版なら絶品です!
      図書館になら置いてるかもしれません。
      ぜひご一読ください!
      2022/01/19
    • 5552さん
      こちらこそ、ありがとうございます!
      探してみます!
      こちらこそ、ありがとうございます!
      探してみます!
      2022/01/20
  • いのっちの電話という活動を通して自分と向き合い自愛に満ちた創作活動をしている坂口恭平さんと精神病理学とその啓蒙活動をされている斎藤環さんの往復書簡。

    往復書簡のスタンスもそれぞれで、それこそが個々を認めている形でとても心地よい。
    躁鬱という気持ちの浮き沈みと共存しながら激しく上がりすぎずにコントロールする坂口さん。
    自分を良く俯瞰して見ていらっしゃる。

    わかった風で上からでもない、風のような返答ができるあたりとても見習うものがたくさんある。
    自分の中に自分がいてそう答えさせているかのような感覚か、人を嫌な気持ちにさせたりせずかと言って過保護にもならず、なかなか出来ない切り返しが出来るのは自分を通して見極めができているからではないか。

    巻末には第二弾も…と書いてあるので楽しみにしたい。

  • 坂口恭平解体新書最新版。『まとまらない人』より他者を通してる分、さらに坂口恭平を知ることができるようなとこもある。斎藤環の話の引き出し方が見事。

  • 面白いし、新たな視点も得られたけど、坂口さんの最後の手紙は躁状態では…?と思ってしまった…

  • 坂口恭平さんの本は、どれを取っても、どう「評価」していいのか、よくわからないでいる。というか、そもそも、「評価」ということができるのかがわからないのである。不思議な文章だ。しかし、よく「わかる」ことも事実なのだ。

  • 自分の薬をつくる、とか、躁鬱大学を読んでいる人にとっては、知ってるよと、思うことが多いかもしれないなあと思う。少なくとも私はそうだった。

    ただ、鬱が自己否定のエネルギーの奔流なので、アウトプットをすることで楽になること、など、やっぱり独特な視点を持ってる人だなあと思う。

    具合悪くてどうにもならん、そう思うときに、
    もういいじゃん、好きなことをすればいいじゃん、坂口さんの本を読んでいるとそう思える。

  • 10年間で2万人の電話を受けてきた坂口さんの、「死にたい人」に対応する技術とは。精神科医の斎藤さんとのスリリングな往復書簡

  • 自分の頭では内容がよくわからない文章もたくさんあった。でも、参考になる文章もあった。『流れ』はすごく大切。その流れとは頭の中にある思考の流れを止めないことが大切ということ。典型的な例でいえば『引きこもり』。完全に思考の流れがとどまってしまっている。そんなときに役立つのが、その人の長所や趣味をみつけてあげること。それらは、思考の『流れ』を再び作り出す突破口になるらしい。自分の好きなことをやるってとても大切なことだ。

  • 「声」への着目の部分で引き込まれ、「流れ」についてのお話で納得しました。「活動の処方」というのもおもしろくて。「生体反応への興味」というのがいいな、と思いました。

    坂口さんの着眼点と方法論には多くの示唆が含まれていて、興味深く読みました。

    自分に正直な方なのだな、と思いながら読みました。
    坂口さんの他の著作も読んでみようと思います。

  • 引用:いのっちの電話に出て、一緒に死なない方法を考える行為自体が、僕にとって、そしてその人にとっての創造行為になっている可能性も僕は否定できません。

    治療者の指示やアドバイスって、すごく優しくてまっとうなんですよ。でも、正しすぎて、どこか息苦しい。…治療者のアドバイスって、クライエントの病気や欠点に向けた言葉であることが多い。欠点に対する適切なアドバイスって、断りにくくて抑圧的。

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著者プロフィール

斎藤環(さいとう・たまき) 精神科医。筑波大学医学医療系社会精神保健学・教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。著書に『社会的ひきこもり』『生き延びるためのラカン』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』『コロナ・アンビバレンスの憂鬱』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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