- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120054105
感想・レビュー・書評
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『週刊文春』『文藝春秋』の編集長を務めた著者が、40年余にわたった文春での日々を振り返る一冊。
この手の本では、文春で一貫して文芸畑を歩んだ高橋一清の『編集者魂』がいちばん面白かった。本書もそれに劣らぬ面白さ。
「この本自体が雑誌のようだな」と思った。
『週刊文春』のスクープの裏話もあれば、人気作家の素顔や芥川賞の舞台裏を綴った部分もあり、政治や芸能にまつわる話もあり……と、何でもありのごった煮な一冊なのだ。
40年分の裏話から厳選しているから、矢継ぎ早に出てくるエピソードがとにかく豊富。読み物として楽しい。
松本清張についての、次の話が印象に残った。
《少年時代のころの話もよく聞きました。高等小学校の学歴しかない清張先生は、ある会社の使い走りのような仕事をさせられていました。使い走りですから、誰も名前を呼んでくれない。何人目かの上司に初めて「松本君」と呼ばれたときは、本当にうれしかったというのです。
「木俣くん、アルバイトでもなんでも、若い使い走りの子の名前は必ず呼んであげなさい」》135ページ
ただ、作家の思い出を綴った部分では、総じて作家が威張っていることに驚かされる。
「昔の人気作家というのは、担当編集者を専属の取材記者兼データマン兼雑用係みたいにこき使って、いい気なもんだなァ」と思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これは文句なく面白い。ジャーナリストの矜持と苦言も含めて文藝春秋社への愛に満ちたエピソードが非常に面白かった。
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「文春の流儀」は、文春社員によって違い、十人十色だと思う。
文春砲をOBとしてどう見ているのか、その内容が興味深かった。
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文春砲という言葉が言われるようになって久しいが、週刊文春、文藝春秋の編集長を経験してこられた著者の裏話の数々が楽しい。その昔、「田中角栄の研究」(立花隆)、「三浦和義・疑惑の銃弾」、山崎拓の不倫事件、「貴花田・宮沢りえの破断の真相」、酒鬼薔薇聖斗などが懐かしく思い出される。文春がライバル新潮社に大きく後れを取っている中で、特長ある週刊誌の路線を取りそれが成功してきたわけである。著者と作家たちの交渉の逸話の数々も愉しい。松本清張、石原慎太郎、山崎豊子、司馬遼太郎、宮部みゆき、林真理子、阿川弘之・佐和子たち。特に司馬遼から「木俣秋水さんの縁戚ですか?」と京都新聞記者だった父の名を出され、その文章を褒められた時の逸話は感動ものだったと思う。
この他、浅利慶太、磯田一郎、鈴木敏夫(ジブリ)などとの接点の記事も面白い。
三笠宮崇仁親王の「日中不戦の誓い」の分析文を紹介していたが、これには天皇の弟親王の凄さを改めて感じた。
タイトルにあるように文春という会社も含め、著者のジャーナリストとしてのモラル観、矜持を感じた。 -
「文春」に対する先入観が良い意味で裏切られた本。
文春といえば、いまや「文春砲」、有名人のスクープ記事を書いてボロ儲けしている攻撃的なイメージが強く、私自身も、本書を読むまで、恥ずかしながら、その印象しかなかった。
「週刊誌」と聞くと、どうしても、「人の嘘や秘密を暴いてニヤニヤ楽しんでいる記者」が思い浮かんでしまうのは現代においては仕方がないことなのではないだろうか。
しかし、本書を通じ、文春が、政治、経済、文化、芸能、歴史、皇室etc…と幅広い分野に人脈を広げ、徹底的に取材し議論し、「常識」とは何かを読者に常に問いかけているのだということ、大手メディアにはない「雑誌ジャーナリズム」に誇りとプライドを持って記事を作ってきたのだということを知ることができた。
まさに、本書に記載されていたとおり、雑誌は、「いつも人を裏切り、人を傷つける」だけではなく、「人を助ける」こともあれば、「一緒に悪事と戦って成果を得ることもある」のだと、認識を改めることができた。
他方、本書を通じて改めた文春への上記の認識が本当に正しいかをちゃんと確かめる必要がある。今週、初めて、「週刊文春」を(これまで巻頭のスクープ記事ばかり読んでいたが)端から端まで読んでみたいと思う。 -
文春で働いていたときの昔話だが、生きていた時代が違うのかピンときたものはあまりなかった。
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「文春砲」という激しい光の裏側に、これだけの歴史や積み重ねた取材が
あるということを知った。
そして、スクープだけではない週刊誌の役割に気づかされる内容です。
元編集長だから書けた一冊だと思います。 -
有り 023/キ/20 棚:1
小坂井も