任侠シネマ (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 696
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120053054

作品紹介・あらすじ

「永神のオジキは、映画館の話でいらしたんですか?」興味津々の若い衆に、阿岐本組代貸の日村は心の中で溜め息をつく。困った人をほっとけず、さらには文化事業が大好きなヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々と舞い込んでくる。
今度の舞台、潰れかけの映画館にも、もちろん山積みの問題が。TVやネットに押されて客足が遠のく厳しい業界事情もさることながら、存続を願う「ファンの会」へ嫌がらせをしている輩の存在が浮上し……。
ヤクザも生きにくい世の中で、街の小さな映画館をどう守る!?

感想・レビュー・書評

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  • 今回はヤクザと映画館の立て直しの話。組長のビジネスに対する考え方には共感する部分がありとても良かった。ヤクザと、街の人が協力して映画館を立て直していくところがとても良く読みやすかった。

  • 任侠シリーズ第5弾。
    面白かったです。
    人情味たっぷりの阿岐本組、カッコいいですね。
    私も、しばらく映画館に行ってないので行きたくなりました^_^

  • のっけから次回作はなんだろう?って考えてました
    なんて失礼な読者でしょうw

    出版社、学校、病院、銭湯、映画館ときたら次はどこだろう?と推理してました
    手がかりは本作のなかにかならず隠されているはずだ!とね
    名探偵ひまわりめろん登場です 

    まず共通しているのは、立て直すくらいだから斜陽産業ということです
    学校や病院は産業とは言えないかもしれませんが、どこも非常に経営が厳しいのはよく聞く話しです

    そしていまいち元気のない今の日本社会を作った原因となっていることを象徴している施設ということが言えるような気がします
    文化、教育、医療、家庭、娯楽です
    それぞれがアメリカ的な個人主義、成果主義を取り入れることで問題を抱えることになったのではないか、少なくとも今野敏さんはそう考えてるような気がします

    それらを踏まえて次回作は…
    ずばり報道です!
    おそらく地方の小さな新聞社かケーブルテレビ局と睨みました!

    さて結果はいかに?!

  • 任侠シリーズ第五作。

    今回は北千住の古い映画館『千住シネマ』の立て直し。
    とは言っても今回もまた社長はいまひとつ反応が鈍い。というよりむしろ赤字の映画館を手放し、黒字を出している不動産部門に力を入れたい様子。でも一方で社長自身は映画が好きらしい。
    ちぐはぐな感覚を抱いた日村は親分の阿岐本に指示され、内部事情を若い衆たちと調べていくのだが…。

    初期の任侠シリーズは若い衆たちと共に現場に行って一緒に働いて、その中で問題点を見つけて、原点である職場環境の整備や働く人達の意識改革を行っていくところが楽しかったのだが、このところの任侠シリーズは路線が変わってきて残念。
    今回も映画館で共に働くのではなく、不協和音の原因を探るべく外側から調査するという、なんだか探偵の真似事のようなことをしている。

    それは『千住シネマ』自体にはなんの問題もなく変えるところはないと阿岐本が判断したからだが、斜陽産業となっている映画館が不採算部門であることは変わらない。阿岐本親分は売上がそう見込めない不採算部門である『千住シネマ』をどうしたいのか、根本的なその問題を社長自身に突きつけるために周囲の様々な事情を整理してあげようと考えたのだろう。

    大沢在昌さんの新宿鮫シリーズでも感じたことだが、このシリーズでもヤクザを取り巻く環境は日々厳しくなっている。
    なんと出前すら満足に取れないのだ。
    シリーズではお馴染み、マル暴の甘粕巡査部長の新たな上司となった仙川係長が暴力団の締め付けに力を入れ始めたこともあって、代々付き合いがあった飲食店にまで取引を止めるように注意して回っているようなのだ。
    それでも変わらず出前を受けてくれる飲食店もあって助かっているが、今後ますますヤクザの看板を上げ続けるのは難しいのかも知れない。

    一方で半グレと呼ばれるヤクザの看板を掲げないだけでやっていることはヤクザ以上にたちの悪いグループもいるし、そうしたグループを使ってうまい汁を吸う素人もいる。
    本来阿岐本組のような正当な?ヤクザたちは、表立って事を構えられない、あるいは法やルールではどうにも解決出来ない部分での解決を担う役目があったわけだが、この新たな締付けにより更にやりにくくなっていきそうだ。

    今回は元ハッカーのテツや元暴走族の稔など、若い衆たちが活躍してくれた。また任侠学園からのお付き合いとなった女子高生の坂本香苗の協力も欠かせない。しかし彼女が積極的に組事務所に来ることで仙川係長が首を突っ込むことにもなるのだが。仙川係長の嫌がらせは今後も続くということだろうか。

    話がサクサク進むのは今野さんのいつもの展開なのだから良いとしても、全体的に盛り上がりに欠けた話だったのが残念。

  • 作中に、「映画はな、いろいろなことを教えてくれるし、人生を豊かにしてくれるんだ」

    と言うセリフがあります。

    この任侠シリーズも読む度、いろいろなことを教えてくれる。
    礼儀や目上の人に対する接し方、古き良き習慣、人生の教訓など…様々。

    今作にしても、
    「チャンスってのは、大切にするもんだ。それで人生、変わってくるんだ。今までの人生がつまんねえモンだからって、この先もそうだとは限らねえ。それを決めるのは、チャンスをぼうっとしていて見逃すか、大切にするからだ。人生はその積み重ねだ」

    「ハレの場に足を運ぶのは楽しい。そういう場所に出入りするうちに、他人との関わりを学ぶ。つもり、公衆道徳だ。道徳を学べと行っても素直になれないのだ。だが、人が集まる楽しい場所に足を運んでいるうちに、自然に身につく。公衆道徳とは、本来そういうものだったはずだ」

    ぜひ、子供たちによんで学んでもらいたいシリーズ本だと思う。
    この際、小学校の教科書にしてみてはどうでしょうか?笑

    文部科学省の方、ご検討ください!

  •  阿岐本雄蔵。
     規模は小さいながらも一家を構える親分だ。重んじるのは義理人情。貫くのは任侠道。そんな阿岐本に代貸の日村誠司はじめ4人の組員は心酔している。

     だが、阿岐本にも困った一面がある。シノギとはまるで無関係の文化事業に目がないところだ。弟分の永神から持ち込まれる文化団体の経営再建話を喜々として引き受けてしまうのだ。

     と言っても、阿岐本の命令で実務に当たるのは日村だ。心配性の代貸にとって苦労の日々がまた始まる。シリーズ5作目。
             ◇
     今回阿岐本が引き受けたのは、赤字が続く映画館の立て直しだ。渋い顔をする日村をよそに期待に胸膨らませる健一たち若い衆。
     だが、映画館を経営する千住興業社長は閉館を念頭に動いていた。さらにシネマ存続を願うファンの会には何者かからのタチの悪い嫌がらせが続いているという。

     永神に聞いていた話と違うことを不審に思い調べるうちに、裏で利権絡みの陰謀が進行していることが判明。さすがの阿岐本も対応に苦慮するが……。

         * * * * *

     映画館の経営再建がテーマではあったのですが、阿岐本の活躍や日村の苦悩が少なめで物足りなかったように思いました。
     日村はむしろ、暴対の仙川新係長からの執拗な嫌がらせに苦悩しており、メインであるはずの新しい職場(ここでは映画館)に「出勤」して任侠道に則ったスタンスを貫きつつ問題解決に取り組むというところが見られなかったのが残念です。

     高倉健シリーズを鑑賞したことで日村ばかりか香苗まで言動が健さん化していた場面など笑えるところはあったのですが、全体的に盛り上がりに欠けたストーリーだったと思います。

     次作の『任侠楽団』が非常におもしろかっただけに、ひとつ前の本作が精彩を欠いたという印象が強くなってしまった気がしました。

  • ヤクザが経営を立て直す、任侠シリーズ第5弾。

    安定の世界。

    今回は、不動産屋が所有している映画館の話。

    会社本体や映画館そのものに手を入れるというより、外堀をいじるような活動。
    遠回しな作業なので、阿岐本組の活躍が地味というか、やや情熱に欠ける感。

    最後までさくさく進み、あっさりとした読後感。

  • 阿岐本組の面々を思うとヤクザもいい人に思えて、香苗のように事務所に行っても何も怖くないのでは?なんて思えてしまう。
    土日も関係なかったり、ヤクザの世界はその辺のブラック企業の上?下?をいく厳しさで、世間からの目も厳しくて。でも仲間を画像のように思い会える優しさがあって。

    ただ、阿岐本組のファンなのかな。
    健さん映画…映画館で観てみたい。

  • 縁あって今野敏さんの本2020年4冊目。
    全然知らなかったけど、シリーズものをたくさん手がけていて
    この任侠シリーズもすでに第五弾
    映画化もされているそう。

    彼の作品、全部こんなに面白いのでしょうか。
    すごいですね。

    それにしても、主役はヤクザ。
    フィクションとはいえ、実際の所どうなんでしょう。
    つい10日ほど前も、何度か横を通った横浜の病院敷地内に
    全身に複数の傷のある暴力団組員(26)の遺体が
    放置されていた事件があったのですが。

    気づかないだけで、私のまわりにもいるんだろうか。
    だって、この本ですごく爽やかに書かれているんです。
    高倉健さんの映画も、見てみないとね。

    それはともかく、学ぶこともあるので
    こういう本これからもときどき読みたい。

    「交渉事や接待を任せているんじゃ、
    ●●のやりたい放題だよな……
    そういうのを一手に引き受けていると、
    次第に力を蓄えて、いつしか会社の
    実権を握ったりすることもある。
    社長が知らないところで、
    妙な企みをするようになるってことだ」

  • 読売新聞オンライン2019年2月〜2020年1月連載のものを中央公論新社から刊行。シリーズ5作目。阿岐本組のメンバーが千住の映画館を立直すお話。いつものことながら、楽しい展開が続き、ラストは大団円。任侠学園の映画化もあってシリーズも好調です。次作も楽しみ。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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