よその島 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.12
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本棚登録 : 319
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052811

作品紹介・あらすじ

妻が〈殺人者〉と知ったとき、

穏やかな日常がサスペンスに変わる



東京での暮らしをたたみ、「島」に移住した

70代の夫婦と、友人の小説家

それぞれの秘密、それぞれの疑惑が

あやしく溶け合うなかで

〈真実〉が徐々に姿を見せていく



人は、自分にだって嘘をつく――

読み終えたときに立ち上がる、思いがけない光景に息を?む

傑作長編小説

感想・レビュー・書評

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  • 骨董品店を営んでいた、碇谷芳朗、蕗子夫婦と、その店の常連だった、野呂晴夫は、ある島で、共同生活を送る事になった。

    その家には、家政婦の仙崎みゆか、宙太親子が居て、5人で住む事になった。

    仙崎みゆかと、野呂には、何やら、秘密めいた関係がありそう。

    ● 自分の影を、気味が悪く、生まれて死ぬまで、こんなものにつきまとわれて過ごすのか。と感じる。
    ●息子が生まれた日、病院に駆けつけて、前を歩いている老婆を追い越せず、このままずっと、息子のところに、辿り着けない気がする。
    ●別れた妻と息子に会いに行く途中、4〜5才の10人ばかりの子供に遭遇し、その小さな顔の一つ一つが、ちゃんと人間の笑顔になっていることが、恐ろしく感じられ、結局、妻と息子に会いに行かなかった。
    等、
    ちょっと、辛気臭い。

  • 2017年11月~2018年8月
    読売新聞夕刊に連載されていたそう。

    もし私が当時の読者だったら
    毎日帰宅して新聞を読むのが楽しみだったでしょう。
    とても面白かった。

    〈記憶というのは誰の頭の中でだって、
    (中略)つねに更新される宿命を持っているのだ、きっと。〉

    ちょうど、この春読んだ二冊の本(著者は佐藤優さんと三浦知良さん)で
    そういうことを考えるようになっていました。
    そして「本当にそうならいいな」と
    「そうだったらいいな」と思うようになっていました。

  • 都内で骨董品店を営んでいた碇谷夫婦と、元ミステリ作家の友人である野呂が、ともに離島へ移住し共同生活を始める。野呂の紹介による住み込みの家政婦・みゆかと、息子の宙太も一緒だ。おいしい料理と、小さな子どもの明るい声が響くおだやな日々。
    都会の喧騒から離れて、70歳過ぎの高齢者が優雅なリタイア生活か……と思ったのも束の間。
    殺人者?病死した息子?と、不穏なワードが飛び交い出し、彼らが抱えた秘密が次第に明らかになっていく。
    そしてサスペンス小説だったのかと読み進めてみれば、物語の終盤でまた私たちは違う事実を知らされる。

    「よその島」というタイトルのもつ意味について考えた。
    人間が抱えたまま生きていくには、記憶とはあまりにも曖昧で不確かなものだ。

  • とても不思議な話のテンポで進んでいく…
    老夫婦が、夫の浮気相手を殺害した、後に逃げるように同じマンションのお友達男性と3人引越し先の島で同居生活を始める。

    でもそれは夫の身に変化が現れ、意外な最後になっていく…
    全てに収束地点があり、内容は引き込まれながらもわかりやすいが、作者が最も言いたい事って?とも思った。
    登場人物がそれぞれに魅力的。
    過足ショーン ヨギアシと読むそうだ…

    他の作品も読んでみたい。

  • 老夫婦と小説家の男性。知人の3人が人口の少ない知らない島に住む事になった。家に着くと知らない若い女性と子供がいた。小説家の知り合いという事で皆の食事係として一緒に住む事になるのですが一体、どんな事情があってこの5人は知らない島の家に住むことになったのか。秘密が多すぎる人達が徐々にどんないきさつがあったのかを登場人物ごとに語る。ラストに向かっていくにつれ老夫婦の夫の記憶があやふやになり、その記憶によって結末が大きく変わっていく、、、。最初から違和感だらけの人物関係でした。読み進むにつれ、真実が解ってきたと思ったのですが、ラストではこの真実がどこまでが本当なのかが曖昧に、、、。最初から最後まで違和感が残り読み手側の解釈でラストが変わる一冊でした。

  • 西荻窪の骨董屋を閉め、離島に移住を決めた芳朗と蕗子、元ミステリー小説家で夫妻の友人・野呂。人生の終盤で3人の共同生活が始まる。
    冒頭でいきなり語られる「殺人者」。それぞれが抱えた秘密が3人の生活にもたらす不穏な空気。芳朗、蕗子、野呂、それぞれの章が交互に立てられ、彼らが抱える秘密が少しずつ露になっていく。
    浮気、殺人、復讐、家政婦の秘密、夫の病気・・・作品全体を覆う緊張感と、拭いきれない違和感に先が気になって仕方がない。そして、次第に明らかになる真実。

    「人生というものを、誰もがもれなく持っているのだ。忘れても忘れたことにしても、意識的にあるいは無意識的に記憶が上書きされても改ざんされても、それはどうしようもなくそこにあり続ける――命が尽きるときまで。」

    静謐な描写と物語全体を覆う不穏な空気は、さすがの荒野さん。十分にこの不穏さを満喫し、「よその島」というタイトルについてもしみじみ考えました。

  • 「美しい手、だがこれは殺人者の手だ」
    冒頭の一言でサスペンスフルな内容を想像する。

    碇谷芳郎、碇谷蕗子、野呂晴夫、物語は3人の視点で交互に語られ進行して行く。

    離島へ移住を決めた芳朗と蕗子、夫妻の友人・野呂。
    人生の終盤を迎えた70代の3人の共同生活は表面上は仲睦まじく見えるがそれぞれに心に秘めた思いがある。

    文中から醸し出される重苦しい空気感と、この独特な設定で更に不穏さが増大し、途中から感じる違和感は終盤に向けてどんどん強くなっていった。

    読み終えて、この物語はミステリーではなく人間ドラマだった事に気付かされる。

  • ゆっくり流れる空気感。最初はまどろっこしく、じれったかったのだが、段々その速度が心地よくなってくる。
    夫婦と知人男性と三人で島に移り住む、その設定さえわけがわからない。しかし、これが上手くいっている。その時、それぞれがどう考えていたのかが語り手となって教えてくれる。それがわかりやすいのかも。わかるはずのない他人の考えがわかる。

  • 感想を書くのがためらわれるなあ。もう、荒野さんの世界に浸りきっていた。

    70を過ぎてもみずみずしい手を持つ美しい夫人と元骨董屋の夫。テレビにも出演して見知らぬ人から声をかけられることも未だにある。そこに作家の男が登場し、3人で離島に移住するところから話は始まる。

    3人のそれぞれの秘密が所々でフラッシュバックとして描かれ、読者を離さない。記憶とは「つねに更新される運命をもっている」のだ。

    鋭くて痛くて気品があって、これが小説というものだと懸賞に応募してくる人たちに語り掛けているのでしょうねえ。

  • 小説を読むことは旅に出ることと同じ、ということであれば、この小説を読んでいる間は「ちゃんと」旅に出ることができた。

    中盤くらいまでの方が引き込まれたかな。みゆかが小説家の義理の娘ではなく愛人で、碇谷夫妻が「殺した」女性の娘だった方がむしろ面白かったかもしれない。

    ロケ隊の人たちが押しかけてきて、監督が泥酔してしまうシーンが必要だったかなとは思うけど、エッセイ教室の件は息抜きができたし、亡くなった息子が受賞した時に会いに行こうとして行けなかった件は妙にリアルでよかった。

    それにしても荒野さんの小説は料理が抜群に美味しそうで洒落てる。
    碇谷夫人も相当に洒落てる。

    大人の映画になりそうな作品。

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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