いのちは輝く-わが子の障害を受け入れるとき (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 226
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052378

作品紹介・あらすじ

椎名林檎さん絶賛!


「この世に生を受けた誰しもに関わってくれるやさしい哲学書です」


わが子が障害を持っているという現実をあなたは受け入れられるだろうか……。

不条理な現実を受け入れるまでの拒絶と葛藤、受け入れることができたときの感動を経験する親がいる一方で、子どもの命を自分の手で奪ってしまおうとする親、病院に捨てられてしまう子どももいる。あまりの障害の重さに治療を迷う医師もいる。

幼い命をめぐる大人たちの拒絶と受容の果てには、読む者に静かな感動を与える命の旋律が響き始める。


医学が進み、科学が進歩しても障害や病は消えません。

気がつけば、私たちの社会は医療技術で生命の質を診断する時代に変わってきています。

「授かりものの命を育む時代」が、「生命の誕生を操作して選別する時代」に入り、私たちはより一層多くの悩みに直面しているように見えます。

人生の大きな節目であるわが子の誕生という瞬間を、単純に期待と喜びだけで迎えられない時代を私たちは生きているのかもしれません。(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • すごい重みのある内容でした。


    星⭐️5どころじゃないですよ。

    すごく考えさせられました。

    やっとの思いで妊娠したと思ったら、お腹の中の子は障害が…
    産まれてる子がかわいそうと言うお医者さんもいれば、なんとしても助けると言ってくれるお医者さんもいるよなぁ。

    出生前診断、受けてダウン症ですって言われたって
    お腹で一生懸命生きてるのに
    それを中絶するってなかなか決めれないだろーし。
    でも現実には、中絶する人が多いとのこと…

    出生前診断では、分からなくても
    産まれてから障害が分かるパターンもあるし。

    難しい、感想をこれ以上書けない…

  • 「いのちは輝く」には、さまざまな障害をもつ子どもたちと、その親の話が書かれています。

    それらひとつひとつの現実が読み手に問いかけてくるもの、それは「あなたならどう考えますか」という終わりのない問いかけです。

    想像していなかった子の事実に直面したとき、親は少なからず動揺します。
    しかし、親が悩む時間が長ければ長いほど、子が生きられる確率が少なくなっていく事例もありました。

    そんな中で43~47ページのお話は、ポンと浮かび上がってきました。
    「ちょっと変わった顔貌(がんぼう)のわが子を受け入れること、重い障害を受け入れることがどうして可能だったのか」(46ページ)という問いへのご夫婦のこたえを読みながら、わたしは古代中国の思想家「老子」の思想を思い出しました。

    老子は、プラスの意味ができるから、相対的にマイナスの意味が生まれるのだと言います。
    つまり、誰かが何かをみて「美しい」と言えば、そう感じない人は「醜い」と言います。
    見ているものは同じにもかかわらず、です。
    何かを決める基準そのものが、人それぞれの思い込みから決められていて、だからこそ「唯一の正解」などというものは決められない、というのが老子の考えです。
    (参考:老子と荘子が話す世界一わかりやすい「老荘思想」/長尾剛・著)

    この思想をふまえて、「いのちは輝く」43~47ページを読んでいくと、はっとするものがあります。

    「賛(たすく)君には、恐ろしい病名がたくさん付いています。しかし賛君の母はそれらを、単なる賛君の取扱説明書くらいにしか思わないそうです。つまり、本質ではないということです。何よりも大事なことは、賛君が生きているということ。そして、そのことに喜びを賛君の両親は感じるのです。」(47ページ)

    健常か障害かは人が決めた基準でしかなく、健常だろうとなかろうと、そこに在るのは命あるひとりの唯一の子どもです。
    健常児か障害児か決めることが大事なのではなく、本当はそこに在る命がその子らしくただ生きていくのをどう支えるかが大事なのです。

    けれど健常を基準にして作られてしまったこの社会で、「健常ではない」とされた人が生きにくいのは当然です。
    それが故に「どう生きるか」よりも「健常かそうでないか」を親も医療者もまわりも、まず見てしまう現実が、とてもせつなく思いました。

    そんな目に見えない社会の空気を変えるのは、現実に生きているひとりひとりの力です。
    「自分を見つめ、自分がどう感じ考える人間なのか」つまり自分の内面をつかんで活きていくことが、つまりは「自分のままで生きていくこと」そのものです。
    そうした生き方をする人が少しずつ増えていくことこそ、「健常かそうでないか」という本質を欠いた議論から目を覚ますことに、つながるのかもしれません。

    そして親も医療者も、「唯一の存在であるこの子が、自分のまま生きていく」そのために、なにが自分にできるのだろうか、という根本的な問いにかえっていくことが、大事なのではないかと思いました。

  • 相模原の事件や、障害を持った子の親御さんのブログなど、考えさせられることがあったので読んでみた。

    小児外科医の著者が、これまでの経験をなるべく専門用語やバイアス無しに語っていると思う。
    あまりに重い先天疾患や予後の見通しが悪いと考えられる場合、親は何を考えるか、もちろん自分たちの生活は一変する、こどもが将来幸せだと感じられるかも分からない。ただ、胎児にも生まれた赤ちゃんにも人格や権利があるとする考えもある。日本が22週を中絶可否の境界としているのは、医療が救える限界を示しているので、医療技術が進歩すればこの境界も延びる可能性がある。それは、独立した生命と考えるか否かの境界も可変だということになる。母親は胎動もわかれば、死産であれば陣痛も経験する。これほど過酷なことはないと思う。
    中絶が女性の権利だと考える人もいれば、命の選別をすることに繋がるという意見もある。特に出生前診断や羊水検査など、安心したい気持ちも分かるが、元を辿ると、優勢思想があるということは頭に留めておかないといけない。排除することを個人が許容していくと、同調を好む日本社会では、社会全体としても許容する方向に傾いていくかもしれない。それは、今を生きている障害者を排除しようという考えにも繋がりかねない。
    簡単に考えをまとめられない問題だと思うが、非常に深く考えなければいけないとも思う。
    世界各国の宗教と権利意識でも、考え方が違ってくるのは勉強になった。

  • ①障害を持って生まれてきた子を、家族や社会がどう受容するか
    ②重い障害や病気のある子に対して治療をやめてもいいのか
    ③病気や障害のある胎児を人工妊娠中絶することは許されるのか

    「滑りやすい坂」

    本当に可哀想なのは、自分自身なのかあなたの子なのか

    課題の分離の考え方がここでも生きる

  • 登録番号:0142244、請求記号:490.15/Ma83

  • ネット記事のヨミドクターで読んでいたもの。加筆修正して発刊とのことで手にした。

    医学の進歩は、確かにありがたいものがあるが、それによって引き起こされる新たな課題が突きつけられている。
    いのちの尊さはかねてより謳われていて、それは間違いないことではあるが、ここまで医学が進歩すると、それまでの価値観では測りがたい難題が生まれたのも事実。
    著者も言っているが、丁寧に個別に話し合っていくしかない。正解はない。

  • こんなに色々な新生児の病気があるのかと驚いた。そして、赤ちゃんが生まれてくるのって本当に奇跡なんだなぁと。
    障害によって長くない命を治療するのかしないのか。出生前診断は何のためか。どこまでが人間の領域なのか?
    医療が発達したからこそ、子供を持つときに新たな葛藤が生まれている。

  • 母親の大きな愛を感じた
    しかし考えさせられることもたくさんあってひとつの答えを決めるわけにもいかないし自分ならどうするかを考えたが難しい問題だと思った

  • 今後妊活をしたときに、もし障害を持つ子を授かったら受け容れることができるのか。その想いで調べて手に取った本。小児外科医の著者から見た出生前診断の意義や障害児の治療について書かれていた。涙ぐんでしまうところも多かった。出生前診断を受けようと安易に思っていたけど、そこでトリソミー陽性の確率が出て、その後の妊娠数ヶ月を穏やかな気持ちで過ごせるのか不安になった。また妊娠した暁には読み返したい本

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著者プロフィール

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。
2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長。13年、『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。19年、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』で第8回日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞。
著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)、『いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき』(中央公論新社)、『小児科医が伝える オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)、『発達障害 最初の一歩』(中央公論新社)などがある。 

「2020年 『どんじり医』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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