トランスファー (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 91
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052064

作品紹介・あらすじ

30歳の大倉玉青は、人材派遣会社に登録し大手通信系企業の受付として働いている。大学時代は、演劇サークルに所属していた。愛読書の『走れメロス』をバッグに放り込み、苦行のような満員電車に乗り職場へ通うのは、ただ生活のためだけだ。その生活が空虚で、何のために生きているのかわからない。彼女は、5年前の自分の選択に端を発するある「秘密」を抱え、その秘密に関わる者の存在を「希望」と感じながら、日々を過ごしていた――。


女優・執筆活動などで多彩な才能を見せる著者が、「入れ替わり」の起きた姉妹を主人公に現代的テーマに迫った、痛切な「命」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 女優・作家・歌手 中江有里さん 15歳で単身上京 精神的に追い詰められた私のために、母は… | 子育て世代がつながる | 東京すくすく ― 東京新聞
    https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/kazokunokoto/39825/

    トランスファー|単行本|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2019/06/005206.html

  • ずっとゆらゆらと醒めかけの夢の中にいるような、
    でもシビアに人の孤独も感じられるような
    不思議な物語でした。

    他の誰かを羨むことがあったとしても
    自分自身を脱ぎ捨てたくなるようなことがあったとしても
    主人公は二度と生きることを投げ出さないだろう。
    心と身体が揃ってこその、
    自分の人生だから。

  • 初 中江 有里 作品。

    現代版、「走れメロス」、あるいは人生をリセットして生き直す物語。

    「人生をリセットなんかできない。体を入れ替えても、何の解決にもならない。」体を貸した玉青の叫びは、最後、洋海に伝わったのだろうか。

    「死ぬくらいなら、その体をください。ほんの数日間でも……」洋海の願いは、切実です。命がかかっている。そしてそのためなら、どんな約束でもできそうな気がする。”メロス”となって、約束をたがえても。

    自分の体を棄てて、玉青の体と入れ替わるのなら、きっと、玉青の人生を奪って、乗り継いで生きるのではなく、0から始める必要があったのかもしれない。玉青の人生も、洋海の人生もすべて捨てて。その覚悟がない以上、(13歳の洋海では無理か)当然の帰結のような気がする。

    奇しくも洋海は、約束は守った結果となったが、結果が違っていた場合、30年のギャップはやはり辛いかもしれない。まだ柔軟な世代だから、吸収は速いかもしれないけど。体は大人、頭は中学生?。ちょうど、「コナン君」の逆パターンの様ですが、勉強するにしても、きっと、先に体がついてゆかなくなる方に一票、か。

    少し切ないエンディングでした。

  • 読書記録です。まだの人は読まないでね。

    現実主義の私は、こういう不思議な感覚の物語を読むとき、つい現実に戻っちゃって浸りきれないまま終わっちゃうことがあります。この物語は、けっこうぶっ飛んでいる設定でありながらも心の痛みや空虚感を掴める感覚が持てたので、その世界観のなかで読み切ることができました。
    どこまでが意識だけなのか、どこからが現実なのか。あいまいなままでも、そのままを受け入れて新しい一歩が踏み出せた主人公に、エールを送りたくなる読後感でした。

  • あの女優の中江有里さんがこんなお話を書くとは。興味本位で大した期待もなく読み始めたのだけど、文章もスマートで内容もしっかりとした軸があって不思議な世界にひきこまれまくり。作り物とは思えないほどに完成されたストーリーに感動することしきり。
    すごい才能溢れる作家さんとしての別の顔があったんだなぁ。色々と作品読んでみたい。

  • 生きる目的を失った主人公の玉青が、植物状態の妹と入れ替わる物語。
    他人の人生を自分のものとして生きることはできない。
    今まで存在を知らなかった姉妹の、生命や絆を考えさせられる小説でした。

  • 中江有里ファンです!

  • 女優であり作家としても活躍されている中江さん、本作もしみじみと良かった。

    主人公は人材派遣会社に登録し、大手通信系企業の受付として働いている30歳の大倉玉青。

    空虚な毎日を送っていた玉青の身にある日「入れ替わり」が起こってしまう。

    現実には有りえない設定と相反して、玉青が抱える過去の秘密や、毎日をただ流されて過ごしている姿にとてつもなくリアルを感じる。

    玉青の愛読書『走れメロス』のストーリーが要所要所に良いスパイスを利かせ、姉妹の心情と重なり物語に深みが出ていた。

    切なさに溢れているが希望を感じるラストに救われる。

  • とくダネ!で紹介され注目!
    多彩な才能を見せる著者が、入れ替わりの起きた姉妹を主人公に現代的テーマに迫った、痛切な「命」の物語。

  • 幅広く活躍する著者が、「入れ替わり」の起きた姉妹を主人公に現代的テーマに迫る物語。「読売プレミアム」連載長編、待望の書籍化。

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著者プロフィール

俳優、作家、歌手。1973年大阪生まれ。89年芸能界にデビューし、数多くのTVドラマ、映画に出演。俳優業と並行して脚本の執筆を始め、2002年「納豆ウドン」で第23回「NHK大阪ラジオドラマ脚本懸賞」最高賞受賞。06年には第一作となる小説『結婚写真』を刊行し、小説、エッセイ、書評など文筆活動も積極的に行う。NHK-BS『週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。NHK朝の連続テレビ小説『走らんか!』ヒロイン、映画『学校』、『風の歌が聴きたい』などに出演。近著に『万葉と沙羅』(文藝春秋)、『残りものには、過去がある』(新潮文庫)、『水の月』(潮出版社)など。文化庁文化審議会委員。19年より歌手活動再開。

「2023年 『北條民雄『いのちの初夜』 2023年2月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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