抽斗のなかの海 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 266
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052002

作品紹介・あらすじ

武満徹、吉田健一ら会えなかった人との精神の応答。吉増剛造、大江健三郎らとの交流。幼い日から大事にしてきたもの。鉱物への偏愛、日々のよろこびなど、デビューから10年間の明滅をたどる初のエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 朝吹真理子さん初のエッセイ集「抽斗のなかの海」インタビュー 失神したほど敬愛する作家への思い|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12682928

    抽斗のなかの海|単行本|中央公論新社
    http://www.chuko.co.jp/tanko/2019/07/005200.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      五所純子さん×朝吹真理子さん『薬を食う女たち』『抽斗のなかの海』特別対談 | COTOGOTO...
      https://cotogotobo...
      五所純子さん×朝吹真理子さん『薬を食う女たち』『抽斗のなかの海』特別対談 | COTOGOTO...
      https://cotogotobooks.stores.jp/items/6109678d2b2d3d79bed7264c
      2021/08/12
  • 将棋観戦記がおもしろかった。臨場感のある生々しい情景描写はあまり彼女の小説には出てこない気がするだけに、棋士のちょっとした癖や振る舞いを観察する視線や、場のに圧倒される身体感覚の表現は新鮮で、もっと読んでいたかった。

  • 前書きが好き。

    小さなエッセイたち。朝吹さんご結婚されてたんですねー! すごく仲よさそうな夫婦間ではっこりした。いいなー。
    それと大江健三郎に会った時に失神したエピソードも好き。また小説が読みたい。きことわ読み返そうっと。

  • 朝吹氏がどのように形成されてきたか、の端緒をつかむことができる。朝吹氏がいいねと書いているものたち(小説・詩・アート・音楽)は、私の趣味と(僭越ながら)少しだけ被っていてうれしいし、知らないものたちをいま少しずつ追いかけている。

  • 朝吹真理子さんの初エッセイ集。初出を見ると、『きことわ』から『TIMELESS』までの空白期間に書かれたものが多いことがわかる。ファンとしては小説に専念して、もっとたくさんの素敵な作品を書いてほしいところだが、素顔を知ることができるエッセイも興味深かった。彼女の凛とした文体、言葉の選択の巧みさは、本書でも十分堪能できた。

  • 914.6個

  • いい家育ちなところが垣間見え、心地よかった。

  • 時間感覚がぐにゃっとしているのが好きで、この人の出す本はなんだかんだ手に取っている。
    文章がきれいなんだよなー。

    淡々と観察記録を取っている態度がちょっと笑える。興味ないような、ニュートラルだからなのか、嫉妬やマウンティングなく異世界に浮遊する宇宙人って感じがする。

    スーザン・ソンタグについて「単純化しないこと。複雑さをそのまま考察して描写すること。それをソンタグから学んでいる。」と述べているのが好印象。
    わたしは「抽象化」と表現していたけれど、たしかに「単純化」のほうが適している。


    内容全体が無邪気で読んでいて楽しかったのは
    ・チグリスとユーフラテスーー『西脇順三郎詩集』
    ・Happy New Ears


    ーーーー

    Cylo.の『id』をひらき、「中谷宇吉郎の雪の結晶」だという声にハッとする。莫大な変化をとどめた標本。二つとして同じ形のない。結晶がゆがむことに中谷が惹かれていたことを思い出す。大盛り壮蔵に見せたい。It was very philosaphicalと誰かが言っていた。フィロソフィの意味を反芻していた。パウル・クレーの描いた細胞分裂図のこともうっすら思い出していた。ただ身体を通して圧倒される。可視化されたステレオから出る信号の断片、というシステムのことより、プロジェクションされる像に音が同期しているのか音が像に同期するのか関係が前後して見えることと聞こえることの近くが追いつかない、そのゆらぎだけがある。眼をあけると、畳に対談の原稿を直している自分のミミズ文字だらけの紙がちらばっていて、ときどき「朝吹」と発言者の名前が書かれてあるのが私であることに違和感を覚える。こんなことはなしたっけ。私は私の領分がすぐに曖昧になる。身体にはきちんと輪郭があるのにときどき溶けてしまう。
    ーーーー

    蕎麦屋で簡単な夕飯をみんなでとりながら、Instagramで、資産家夫人が私生活をさかんに自撮りしているアカウントの話で盛り上がる。新幹線のグリーン車を貸し切りにして旅行をしたり、自邸の池に鮎を放ったり、細胞再生注射を週一で打つ様を自撮り棒で写してライブ配信している。FENDIの毛皮のコートを羽織りながら、「やっぱりお買い物は泥酔してからじゃないとね」と宣う。破滅に向かうきらめきを感じる。西鶴だ。

  • 武満徹、大江健三郎、吉田健一らとの精神の応答。幼い日から大事にしてきたもの。デビューから10年間の明滅を辿る初のエッセイ集。

  • 黄色と青の表紙が美しくて思わず手に取り、本屋で『信号旗K』だけ読んで全部読もうと決めた。表紙デザインの、縦左半分が黄色、右半分が青の旗は船舶で使われている旗らしい。複数の旗が並べてある場合はアルファベットのK、単独ではあなたと交信したい、という意味がある。作者同様、素敵だなと思った。

    エッセイ全体としては、川の流れに自分の怠惰な心も一緒に流れていけばいいのに、という共感できるところや、鉱物や真珠に興味があるから口に入れたい、というよく分からないところもあった。

    また読み返したいとは思わないけれど、著者が季節や天気にとても敏感で、日々その2つを意識して過ごしているとみられる点はいいな、と思った。


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著者プロフィール

1984年、東京生れ。2009年、「流跡」でデビュー。2010年、同作でドゥマゴ文学賞を最年少受賞。2011年、「きことわ」で芥川賞を受賞。

「2022年 『細野晴臣 夢十夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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