大航海時代の日本人奴隷 (中公叢書)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120049781

作品紹介・あらすじ

戦国時代の日本国内に、「奴隷」とされた人々が多数存在し、ポルトガル人が海外に連れ出していたことは知られていた。しかし、その実態は不明であり、顧みられることもほとんどなかった。ところが近年、三人の日本人奴隷がメキシコに渡っていたことを示す史料が見つかった。「ユダヤ教徒」のポルトガル人に対する異端審問記録に彼らに関する記述が含まれていたのだ。アジアにおける人身売買はどのようなものだったのか。世界の海に展開したヨーロッパ勢力の動きを背景に、名もなき人々が送った人生から、大航海時代のもう一つの相貌が浮かび上がる。

感想・レビュー・書評

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  • 多くの日本人が南蛮貿易で奴隷として海外に送り出されていたことはあまり知られていません。奴隷制はキリスト教義に親和性があり制度的に容認され、聖職と商人の協業により世界中に送り出されるシステムを生みました。その数、南蛮船1隻当り数百人、推定総数は数万人に上ります。本書ではポルトガルの奴隷取引ネットワークの拠点を中心にマカオ・フィリピン・ゴア・メキシコ・ペルーから本国ポルトガルやスペインの記録に現れた日本人奴隷を紹介しています。年季奉公として安価に買い、終身奴隷とすり替え高値で転売する狡猾な奴隷商人が紹介されるなど憤りを覚える場面が多くあります。一方、積出元の日本の研究はどうなっているのでしょう。特に、積出港長崎の文献や研究が待たれます。

  • 拉致被害者のように、乱暴な形で連れていかれたのだと思っていたが、日本を離れるため、自ら志願して奴隷になった日本人も多いと知り驚いた。伴天連追放令の裏に授業では教わらないダークな歴史があったのだ。

  • 秀吉が禁教令を出したのは日本人が奴隷として売られていることも一因だ、というのは近年になって知った。
    海を渡った彼らがどうなったたのか知りたくなったが、資料がとても少ないそう。
    その歴史を作った側のポルトガル人が研究しているというのも興味深い。

    年季奉公の契約だが西洋にはその概念がないので終身奴隷となってしまったケースが多いそう。
    幼い奴隷は使役するためではなく教育することが社会的ステイタスで、いずれも渡航の際に受洗する。
    信仰のために海を渡った者もいれば、日本に居場所がなくなったから海外に出た者もいる(たいていそういう者は無頼漢となる)。
    マカオを中心としたポルトガルの当時のアジア貿易(奴隷を含む)と世界の動きが垣間見える。
    記録に残らなかった中には過酷な運命を歩んだ者もいるだろう。

    実際の本の一部を翻訳したものだそうで、今後の刊行も期待したい。

  • 今まで考えてた奴隷のイメージとは違っていた。奴隷にも商品価値があること。豊後の例にあるが、様々な境遇で奴隷になったこと。16世紀の時点で世界の様々な港で日本人のコミュニティがあったこと。世界へ売られて行った。異国の地で果てて行った彼らの人生を考えると感慨深い。

  •  以前から中南米に日本人奴隷がいたという話をいろいろな史書で散見して奇妙な思いをしていたが、本書を読んでその謎を解く鍵がカトリック世界の異端審問にあったと知り、納得! 洋の東西を問わず、イエズス会がいるところには異端審問ありという冷厳な事実をあらためて想い起こさせられた。
     異端の嫌疑をかけられる根拠の一つに清潔さを好むという生活スタイルがあった。風呂に週一回入っているということで異端審問官に召喚された例もあるくらいなのだから、長崎に来たイエズス会宣教師は日本は<何たる異端の巣窟!>とゾッとしたのか、あるいはシメシメと舌なめずりしたのか、いずれにしても活躍の場を得たと思ったことは間違いなさそうである。

  • ふむ

  • 奴隷貿易と聞くと、ヨーロッパやアメリカへアフリカ人を運んだ「三角貿易」が思い浮かぶ。つまり「奴隷=黒人」というイメージである。ところが16世紀中葉から17世紀中葉の100年間、日本人も奴隷としてアジア各地や南米、ポルトガルへ運ばれていたのだという(南蛮貿易)。本書を読んで、この事実にまずは驚いた。もっとも、本書の「緒言」によれば、日本人奴隷の存在はだいぶ前から学会では知られていたようだ。

    ひと口に奴隷と言っても実態は様々だったらしい。炎天下で過酷な労働を強いられるといったステレオタイプ的な奴隷ではなく(やはりプランテーションで強制労働させられる黒人奴隷のイメージがある)、家事をこなす家事奴隷や召使い、従者、あるいは簡単な雑用以外には仕事もないような「奴隷」なども多かった。また、子供の奴隷には過酷な労働を与えず、自身の子供の遊び相手をさせた。養子にする目的で子供を購入することもあったという。とは言え、多くの奴隷にとって彼らの境遇が安寧なものだったわけではない。例えば所有者を明確にしたり懲罰の目的で、ポルトガルや南米では奴隷に烙印を押すという習慣があった。

    本書は航海日誌、遺言状、訴訟記録など多くの資料に基づいて、アジア、南米、ヨーロッパの地へ奴隷として渡った日本人の姿を再構築している。奴隷貿易はキリスト教の布教と密接に関係していて、奴隷となった日本人にもフアン・アントンとかドミンゴ・ロペスとかの洗礼名が付く。資料の記述が日本人のことを示していると確かめていくだけでも大変な作業だろうと思う。ポルトガル人の考える「奴隷」と日本人の考える「奉公人」は似て非なるもので、当人は奉公人のつもりなのに奴隷として取引されてしまい、「自分は本来ならば奴隷ではない」と訴え出る日本人奴隷が多数いたなど、本書は興味深い記述であふれている。

  • そうかぁ、日本人も奴隷になってしまった人がいたのか。
    当然と言われればそれまでだけど、考えたことがなかった。
    映画で見るような奴隷ではなかった(そういう人たちもいたけれども)。
    生活や宗教等昔の人々に思いをはせた。

  • 歴史的資料を基に、大航海時代に奴隷として海外に渡った日本人の足跡を記した本書。この時代に日本人が奴隷として海外に売り飛ばされていたという事実にまず驚いた。(冷静に考えれば、日本に外国人奴隷がいたのであれば、その逆もあったはず。。)
    さらに、奴隷となったあとの、境遇の違いも様々であることにも驚いた。終生奴隷として一生を終えた者、奴隷身分から解放され所帯を持ち一般市民となった者、商人となり商売を始めたもの‥等、奴隷となった日本人の生き方は千差万別だった。
    本書は冒頭で用語解説もあるので、予備知識の無い初心者でも読みやすいように工夫されている。ただ資料に基づく事実が列挙されており、初見で読むにはもう少しかみ砕いた本の方が良かったと感じた。(この題材を取り扱う本が少なく、他にはないかもしれないが)

  • 原書の内容の一部だそうで、重要視したいことは続編に譲っているとあった。続きが読みたい。

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著者プロフィール

1978年、ポルトガル生まれ。ポルト大学人文学部大学院博士課程修了。博士(アジア学)。現在、東京外国語大学、神奈川県立国際言語文化アカデミア講師。著書:Lucio de Sousa, European Presence in China, Japan, The Philippines and Southeast Asian (1555-1590) - The Life of Bartolomeu Landeiro(単著、Macao Foundation 2010)

「2021年 『大航海時代の日本人奴隷 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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