『論語』と孔子の生涯 (中公叢書)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048166

作品紹介・あらすじ

六朝時代、梁の皇侃が著した『論語義疏』は、中国では十二世紀の終わりごろに散逸してしまったが、日本に伝来し大切に保存されてきた。江戸時代に出版され、中国に逆輸入されると、彼の地の学者を驚かせたという数奇な運命をもっている。『論語義疏』は皇侃の時代までに蓄積された『論語』解釈をめぐる様々な説や、興味深い説話の宝庫である。本書では『論語義疏』を手がかりに「古典の中の古典」の豊かな内実を解き明かし、あわせて孔子の生涯を丁寧にたどってゆく。孔子とその弟子たちの生き生きとした言行録を味読するための画期的な入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 六朝時代の皇侃によって表された『論語義疏』に魅かれて孔子の研究に入った著者が、『論語義疏』に示された解釈を紹介しつつ、孔子の生涯と思想をわかりやすく解説している本です。

    いちおう孔子の入門書というスタイルになっており、孔子について学びたいと考える読者が読むことのできるような内容です。といっても、孔子の思想の唯一の正しい解釈を伝えるというものではなく、長い歴史を通じてさまざまに『論語』のことばが解釈されてきたことを紹介しているところに、入門書としての本書の特色があるように思います。

    『論語』と孔子の思想を、それについての解釈史ないし研究史のほうに読者の目を向けさせつつ、その魅力を生き生きと伝えている本書は、ある意味ではもっとも正統的な『論語』入門ということができるかもしれません。

  • 影山さんの『論語』が出た。ぼくは影山さんには会ったことがないが、高島俊男さんがなにかと言えば「影山に聞いた、調べてもらった」とか言っているので、なんとなく親しみを感じていた(同い年ということもある)。『論語』について本を書くというのは勇気がいる。中国では古注、新注を始めおびただしい注釈書があるし、日本でも江戸時代をはじめ、吉川幸次郎、貝塚茂樹、宮崎市定等何人もの碩学が書いているからだ(ぼくは新島淳良さんの『論語』も持っている)。なにか特徴がなければ、出す意味もない本なのである。本書は、影山さんがずっと研究してきた皇侃の『論語義疏』という本の注釈を中心にしたものだ。『義疏』は中国では古注のあとの『論語正義』が出て『十三経正義』に収められると、これが御上の解釈となったから、中国では忘れ去られてしまった。いわゆる逸書である。それが、なんと日本で写本がいくつも残っていて、江戸時代にはそれを刊本にした人も現れたのである。明治になって、中国と国交が結ばれ、外交官がやってくると、かれらは学者であるから、そうした日本に残っていた中国の書物を発見驚喜し、本書などは『四庫全書』の中にまで入れた。『義疏』の研究は高橋均さんという東京外大の先生がずっとやっていて、それは『論語義疏の研究』という大部な本にまとめられている。影山さんも、そういう計画があるのかも知れないが、本書では皇侃の注釈をわかりやすく解説してくれている。もちろん、それだけでは本にしにくいので、孔子の生涯を『史記』の「孔子世家」や他の書物に基づいて紹介している。『論語』を一度は読んだ人なら、本書を繙くことで、「へ~、皇侃はこんな解釈をしているのか」と驚くことうけあい。間にはさまれた「コラム」もとても効果的である。

  • 『論語』の解釈は一通りではない。日本に伝わった貴重な写本を紹介しつつ、多様な読み方の楽しみを説き、あわせて孔子の生涯をたどってゆく。孔子とその弟子たちの言行録を味読するための画期的な入門書。

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