英国二重スパイ・システム - ノルマンディー上陸を支えた欺瞞作戦

  • 中央公論新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120045462

作品紹介・あらすじ

「上陸地点はどこだ?」ヒトラーの目をそらすべく、偽ナチ・スパイたちが織り上げた壮大な嘘のタペストリー。

感想・レビュー・書評

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  • 1940年には日本の秘密文書(暗号)が破られていて、逆に情報集に使われていたことがこの本で明記されている。

    お花畑にいるとしか思えない日本人にも、諜報とはどういうものであるか、この本でよく知って欲しい。
    ただし、今はこの作戦の殆どは形を変えているだろう。

  • 歴史
    戦争
    軍事

  • ノルマンディー上陸作戦の裏で暗躍した5人の二重スパイたちの活躍を描いたノンフィクション。面白かったけど、とにかく登場人物が多く、話も複雑だったのでメモとりながら読んだ。

    主人公の5人の二重スパイは本名と英国側の暗号名と独国側の暗号名を持ち、英独それぞれの国に担当の上司がいて、各々実在する部下や実在しない部下を持ち、各々愛人や家族がいて…といった調子。

    本筋の5人以外にも、鳩を使った作戦を次々と生み出したがほぼ成果のなかった鳩の専門家や将軍のそっくりさんを演じた三流役者や適当な情報を好き勝手流してたせいでかえって英国の欺瞞作戦の大きな障害になってしまった独軍スパイ等キャラ立ちし過ぎた人たちが次々と出てくる

    主役の中でも特に変わり種が「ガルボ」ことフアン・プホル・ガルシアで、英国にスパイとして志願するも門前払いを食らったので、独国のスパイになり、ありもしない架空のスパイ網を作ってでたらめの情報を独国に送りまくったアマチュアの二重スパイ。

    あと、独国が国外で活動している自国のスパイに資金を渡す方法がなかったとき、「資金がないのに熱心に活動する二重スパイが不審に思われるのでは」と懸念を抱いた英国が、独国が自国のスパイにお金を送れる方法を頑張って考えてあげたの面白かった

  • [嘘という真実を呑ませて]第二次大戦期,ドイツ側の工作員を連合国側に取り込み,二重スパイとして操ることを目的としたダブル・クロス作戦。個性豊かな二重スパイたちは,いかにして英国に協力するようになり,ノルマンディー上陸作戦を側面から支援することに成功したのか......。膨大な一次資料を基に,今まで明かされなかった工作の内幕を描いた作品。著者は,スパイ小説を書かせたら今日右に出る者はいないと称されるベン・マッキンタイアー。訳者は,同著者による『ナチを欺いた死体』の翻訳も手がけた小林朋則。原題は,『Double Cross: The True Story of the D-Day Spies』。


    「こんな話があったのか!!」と純粋に驚かせてくれると同時に,スパイ網を紡ぎ出した一人ひとりの人間ドラマにも焦点が当てられた類い稀な一冊。作戦全体の規模にも驚かされますが,その規模を個人レベルの話から読み物として読者の眼前に立ち上げることに成功した,著者の調査能力と筆力に恐れ入ります。歴史に興味がある人であれば間違いなく楽しめる作品だと思いますし,諜報世界の内幕を覗いてみたい方にもオススメです。

    〜これだけは間違いなく言える。もしダブル・クロスの欺瞞作戦が裏目に出ていたり,もしジョニー・イェプセンが口を割っていたり,もしリリー・セルゲイエフが制御信号を挿入していたり,もし嘘で作った一大防御網が暴かれて,ドイツ軍がノルマンディーで,部隊を増強して警戒を怠らず準備万端で待っていたりしたら,その場合,上陸進攻は失敗し,Dデイは多大な犠牲を出して完敗に終わっていたことだろう。〜

    質量ともに重厚感アリ☆5つ

  • (欲しい!)欺瞞作戦

  • ノルマンディー上陸作戦について調べてから読んだ。
    ちょうど、6/6だったか、ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典がフランスで開催され、ドイツ首相も参加。2004年から参加しているという。
    ドイツ、自国の過ちを正そうとする姿勢が認められたんだなあ……

    p169
    チャーチルが、欺瞞工作について聞かされた当時を振り返っての発言。
    「もつれにもつれた混乱ぶり、策略と対抗策、計略と背信、投降と裏切り、本物のスパイ、偽物のスパイ、二重スパイ、黄金と鋼鉄、爆弾と短剣と銃殺隊。こうしたものが織り込まれて、にわかには信じられないほど複雑だが間違いなく真実である布地が何枚も織り上げられた」

    さすがの弁舌。


    非常におもしろかった。
    ドイツの諜報機関であるアプヴェーア、イギリスMI5の諜報機関アンテラリエ、この間で、スパイの暗号名と本名と上官の一覧がついてはいるけれども、もっと登場人物全体の表が欲しいくらいに人物が多い。おかげで、初期は混乱しながら読んだ。

    ノルマンディー上陸作戦は、イギリスを主とする連合側が、ドイツの占領下にあるフランスに海峡を渡って攻め入って、ドイツを撃退しようという作戦。海峡を渡っての侵攻に適した場所は、パ・ド・カレーか、ノルマンディーの二箇所程度。
    侵攻当日のDデイがドイツにバレても、どちらが本命の上陸場所なのかがバレても、何万人という犠牲者が増える。

    ということで、二重スパイをただスパイとして運用するのではなく、偽の情報を流してドイツの作戦を「パ・ド・カレーに敵は上陸する」と誤った方向に導く作戦が立てられた。

    ドイツでスパイになった人物が、イギリスに派遣されて、自ら二重スパイになるよう申し出たり。
    つかまって説得されて二重スパイになったり。
    スカウトされて、イギリスからドイツに送り込まれたり。

    イギリスは、ドイツがこう思っていることを知っているけれど、ドイツは知らないから、スパイの発言にこう気をつけなければ。とか。
    偽情報の整合性を持たせるために膨大な索引つきの偽情報資料が作られたり。
    ドイツがスパイに払う報酬を、イギリスがスパイから受け取って資金にしたり。(ドイツは金払いがよく、イギリスは相当渋かったようだ)
    かと思えば、金がなくてアプヴェーアが潰れるかも知れないという状況に、潰れちゃ困るからってMI5が金策を行ったり。

    ドイツが見事に誘導されていくのが、不思議なほどだった。
    情報戦、知能戦は、非常に繊細だった。

  • ノルマンディー上陸作戦は、後知恵で見れば、連合国が勝って当たり前の作戦で、カレーが上陸地点だと思い込んだドイツ側が単に頭が悪かったのだと説明されることが多いのだけど、その裏にこんな騙しあいがあったとは知らなかった。
    それにしても、ドイツ側が送り込んだスパイをことごとく見破るだけでなく、それを寝返らせて二重スパイとして使おうだなんて、なんてずるがしこいことを考えるんだろう、イギリスっていう国は。
    そして、そんなアクロバティックな謀略を可能とした背景には、ドイツや日本の暗号が完全に解読されていて、しかもそのことを解読されている側に気付かせないという、情報=インテリジェンスに対する圧倒的な優位性があったのだろうと思う。
    暮れのNHKスペシャルでやってた「知られざる国際情報戦」とかいう番組でも、イギリスは日本の暗号を解読して得た情報を活用して、アメリカが参戦できるよう仕組んだといった話があったが、いやーイギリス恐るべしです。

    とっても面白い話だけど、400頁をゆうにこえるボリュームで、登場人物も入り組んでいるので、ちょっと読みづらいというのが難点と言えば難点か。

  • 実録スパイ大作戦、ではなくて、でも第二次大戦時のイギリスとドイツのスパイを巡るノンフィクション。
    登場人物が多い上に担当将校とかコードネームとかものすごい量のカタカナだけれど、それぞれに個性的なスパイの物語にどんどん引き込まれる。
    独立した話ということですが、これだけ大著だというのに、さらに前に二作あるようです。

  •  20年以上も前のことであるが、ナチス・ドイツの高度な暗号の解読をテーマにした本があった。残念ながらそのタイトルは忘れたが、イギリス諜報機関が集めた数学の天才たちの常人には想像もつかない突飛な行動とその解読プロセスのユニークさに惹かれて一気に読んだ記憶がある。その本には解読された暗号をもとに撹乱工作を行ってノルマンディー上陸作戦でドイツ軍を誑かしたことは書かれていたが、その実際の誑かし方やどのような人間が大陸とイギリスを往復し、どのような情報操作を行ったかについては触れていなかった。おそらく機密解除の年限がすぎていなかったからであろう。
     本書はイギリス諜報機関がその撹乱工作のために、実際に大陸でどのような人間を利用してダブルスパイ・システムをつくりあげ、なにを行ったかを詳細に明かしたものである。もともと外交というのは諜報活動を品よく表現したものであって魑魅魍魎が跋扈する世界であるのはヴェネチアやヨーロッパ各国の歴史を見れば一目瞭然であるが、それにしてもイギリスの諜報機関恐るべし!というべきであろう。

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著者プロフィール

イギリスの新聞タイムズでコラムニスト・副主筆を務め、同紙の海外特派員としてニューヨーク、パリ、ワシントンでの駐在経験も持つ。ベストセラー『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』をはじめ、『英国二重スパイ・システム ノルマンディー上陸を支えた欺瞞作戦』『キム・フィルビー かくも親密な裏切り』(以上いずれも小林朋則訳、中央公論新社)など諜報戦を追った著作に定評がある。『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』(小林朋則訳・中公文庫)は映画化もされた。

「2022年 『ソーニャ、ゾルゲが愛した工作員』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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