幸せの条件

著者 :
  • 中央公論新社
3.76
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感想 : 175
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044151

作品紹介・あらすじ

日本の未来を救う!?
コメから採れる新燃料を求め、農業知識ゼロの24歳女子が単身農村へ。
果たして新エネルギーは獲得出来るのか?

「ストロベリーナイト」「武士道シックスティーン」の誉田哲也先生、最新作!

感想・レビュー・書評

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  • ◇◆━━━━━━━━━━━━
    1.感想 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    誉田哲也さんが有名なのは存じていますが、読むのは初めてでした。誉田さんの中でも異質な作品とのことですが、とても読みやすかったです。

    バイオエタノールをつくるための材料を入手するために出張にでた梢恵でしたが、本の中盤までは、まったく進展が感じられず、「どうなるのか?」という不安だけが積もっていく作品でした。

    農業メインのお話でしたが、わたしの奥さんの実家が農家なので、環境が想像できて、物語に入り込んでいくことができました。

    一人一人の登場人物に、そこまで深く入り込んでいくことはありませんでしたが、個性的なキャラが多かったので、それぞれの物語を、連作短編集のようにしたものも面白そうだと思いました。

    「自分に必要なのは何か」というキーワードがでてきますが、この投げかけはよかったです。
    総じて、楽しい作品でした。


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    2.あらすじ 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    片山製作所は理化学実験ガラス機器の専門メーカーだが、バイオエタノールを作り出す機械を開発する。
    そこに関連して、材料の確保のために梢恵が農家に営業にでていく。
    展開がありえないといえばありえないけど、「何のために生きるべきか」、「何が必要なのか」を考えさせてくれるストーリー。
    登場人物は心温かい人々で、本を読むことで、田舎暮らしをしてみたくなる作品になっています。

     
    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    3.主な登場人物 
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    瀬野梢恵 こずえ、24歳
    智之 ともゆき、彼氏

    【片山製作所】
    理化学実験ガラス機器の専門メーカー
    片山社長

    【農業関連】
    田中文吉 農家、おじいちゃん

    【あぐもぐ】
    安岡茂樹 農家、熊のよう、あぐあぐ社長
    安岡君江 美人、茂樹妻
    安岡朝子 茂樹娘
    北村行人 茂樹の右腕、背が高い、男前
      隼人 行人息子、5歳
    安岡健介 茂樹の甥っ子、29歳
    若月知郎 ともお、37歳、草食系、脱サラして田舎へ
    西田誠
    西田真美
    西田萌絵

    【スナックひろみ】
    ゆみ
    野田夏子 知郎彼女


  • 農業の大変さを垣間見れたと思う。
    後半、文吉と茂樹が会話するシーンがいきなり訪れて泣けた。梢恵の努力が少し報われた瞬間。
    その後、以下社長の言葉もよし。
    「大切なのは誰かに必要とされることじゃない、自分に必要なのは何かを見極めることだ」
    梢恵の成長する姿が素晴らしい。

  • 大切なのは、誰かに必要とされることなんかじゃないんだ。本当の意味で、自分に必要なのは何か…それを、自分自身で見極めることこそが、本当に大事なんだ。

  • 武士道シリーズが大好きだったので
    誉田哲也さんには、お得意の血なまぐさいハードボイルドな世界だけじゃなくて
    そろそろ殺人の起こらない世界のお話も書いてほしいな~と思っていたら

    出ていました!
    警視庁の敏腕刑事でもなく、剣道にひたすら打ち込む少女でもなく、
    なんと、理学部卒とは名ばかりで会社で役立たず呼ばわりされたOLが
    長野の広大な田圃で、農業と格闘する物語。

    毎日が、「あー、会社いきたくなーい」の叫びで始まっていた梢恵が
    社長がはりきって発明したバイオエタノール精製装置実用化のために
    原料となる安いコメを作付けしてもらえる農家を求めて長野に派遣され
    農業法人『あぐもぐ』で農作業を手伝ううち、
    「食」を支える尊さと働くよろこびに目覚めていく姿が描かれます。

    『図解 バイオエタノール最前線』を買ってはみたものの読破することもなく
    基本的な知識さえ持たないまま『あぐもぐ』を訪れた梢恵に、社長の茂樹が
    コロッケと生野菜が載った夕食の皿で説明する食料自給率のカラクリに感心し

    3月11日の震災後、放射能問題の影響で、たった300mの差で
    作付制限を免れられず、丹精こめた田圃を捨てなければならなかった誠に
    原発への怒りと憎しみをストレートに語らせる誉田さんの勇気に心打たれ

    『あぐもぐ』で眼鏡を泥だらけにしながら働き続ける道を選んだ梢恵に
    「悪かったな。せっかく入ってきてくれたのに、この会社は、お前に
    働く楽しみも、生きる喜びも、何一つ教えてやれなかった」と
    泣きながらクビを言い渡す社長の片山の言葉に感極まって

    コメのみならず、籾殻でもワラでも野菜クズでも雑草でも燃料化できる
    社長渾身の全自動バイオエタノール精製装置に投入される雑草並みの逞しさで
    「きっと、それくらいのお役には、立てると思うんです」と田圃に向かう梢恵を
    背筋を伸ばし、全力で応援したくなるのでした。

  • 誉田哲也さんは、「ストロベリーナイト」など警察小説もいいけど、この作品はそれとは違った感動作です。 主人公の梢恵が、最初はだめ人間だと思いこんでいたのがだんだんと成長して行き、いやだった農業にもめざめて行く過程がほんとうに心地よいです。 農業って辛くていやなイメージが、この作品では私にもできる魅力をひきだしています。 いま問題の原発を正面から受け止め明日へのエネルギー、バイオエタノールの将来性を効果的に引き出しています。幸せの条件を見つけ出すためにこの小説を読みましょう。

  • 「大切なのは、誰かに必要とされることなんかじゃないんだ。本当の意味で、自分に必要なのは何か・・・それを、自分自身で見極めることこそが、本当に大切なんだ」
    誰かのために働く事が自身の原動力になっている事も事実だが、自分を殺す必要はないんだと心に響いたワンフレーズ

  • 4.7
    とても素敵な話でした。
    自分が会社や社会で役に立てているのかというのは、私も良く自問自答しています。
    主人公の成長が頼もしく、最初はイラッとするタイプでしたが、どんどん素敵な人に成長していきました。
    農業って、ほんと大変だと思います、休みもろくに無いし、自然との付き合いだから、人知ではどうにもならない事もあるでしょうし、それでも職場や仲間に恵まれてやり甲斐のある仕事を見つけられて良かったなぁと思います、色んな仕事があって合う合わないっていうのは当たり前ですけど、人それぞれで、自分自身もある分野だと、色々アイデアが湧くものの、それ以外だと、情けないくらい何も思いつかなかったりします。
    そこには努力だけでは何ともならない壁も感じます。

    誉田さんのストロベリーナイトに代表されるサスペンス系も大好きですが、武士道ジェネレーションに代表される、何系って言うのか分かりませんが、人間系?
    とても面白いと思います。
    登場人物の発言も面白く、わたしには凄くしっくりきます。
    最後は少し物足りないかな、もっと梢恵の成長を見たかった。

  • ただただ働いていただけの若い女性が、農業と出会うことで生き生きとしてくる様子に元気をもらいました。
    農業のハードさと達成感、採れた作物の美味しさは、少し経験があるので共感できました。

  • わぁ、この主人公、最悪…と思って、読み始めたのに、いつの間にか、農業のノウハウに夢中になってしまった。
    大震災から、原発事故問題など、あえて、加える必要があったのかなぁ、と思ったり、描かれる人物像が軽かったり、気になる部分はあれども、読み終われば、主人公と共に成長した感もあり、なかなか面白かった。

  • タラタラと無気力に働く理系女子OLの梢恵。

    気はいい女の子らしいけど職場が彼女の力を発揮する場となっていないのはよくわかる。
    エコ燃料・バイオエタノール用に米を作れる農家を探すという業務で長野に出張?!




    誉田哲也さん、まさか、
    「都会の空気に疲れた女性が空気と人情のきれいな田舎で本来の人間らしさを取り戻していく話」
    にはしませんよね、と思っていたら、(*^_^*) うん、やっぱり!

    ビジネスとしての農業に焦点をあて、日本古来の農作業が実はいかに効率を考えたワークであったか、また、そこに新しいやり方を投入して発展させていこうとしている農業人たち、などと、
    斜陽産業なんて思ってる場合じゃないんだね!と明るい&驚きのお話が続出。

    なるほどねぇ~~、と田んぼと畑の両方に対して、まるっきり違う角度から考えさせられた物語でした。

    何も知らない梢恵が会社の営業活動の一貫として、農業法人に住み込みで農業を??
    という、かなり無理のある発端から始まった話ですけれど、
    受け入れる人たちの様々な思い、背景、また、本来の会社の社長の人となりなどに助けられ、
    梢恵は日々驚きながらも、案外しっくりと農の生活に馴染んでいく。

    私は農家の親戚が多く、彼らの常識がかなりその他のモノとは違う(悪気はないんだけどね、ホントに違う、ということ)が身にしみているので、正直、こんな上手くはいかないでしょう、という気持ちもあったのだけど、それでも、ふんふん、なるほどね、と面白く読めてしまったのは、たぶん、誉田さんの丹念な取材による土台がしっかりした物語だったからだと思います。

    科学的な観点からの農業の描写、
    農薬をただ忌み嫌うのではなく、あるいは礼賛するのでもなく、という冷静な姿勢、
    日本の農業自給率に関する数字のカラクリ、
    (マスコミって国民を不安にするのが仕事だ!みたいにネガティブなことを言いたがる、
    というか、だから農業は先行き暗いんだ、という情報を実は一般国民が求めている?)

    など、うんうん、そうだったのか、という明るい驚きが嬉しかった。
    登場人物たちは、その中で、ちょいと奥行が狭いかな、という気もしたけれど、
    気持ちよく読ませてもらったので文句は言わないことにします。(*^_^*)

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著者プロフィール

誉田哲也
1969年東京都生まれ。2002年『妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞、03年『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。主なシリーズとして、『ジウⅠ・Ⅱ・Ⅲ』に始まり『国境事変』『ハング』『歌舞伎町セブン』『歌舞伎町ダムド』『ノワール 硝子の太陽』と続く〈ジウ〉サーガ、『ストロベリーナイト』から『ルージュ 硝子の太陽』まで続く〈姫川玲子〉シリーズ、『武士道シックスティーン』などの〈武士道〉シリーズ、『ドルチェ』など〈魚住久江〉シリーズ等があり、映像化作品も多い。

「2023年 『ジウX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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