アンダスタンド・メイビー 上

著者 :
  • 中央公論新社
3.56
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本棚登録 : 1084
感想 : 162
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041679

作品紹介・あらすじ

「おまえは俺のこと、見つけられるって」少女は踏み込んだ、愛と破壊の世界へ。デビュー10周年記念書き下ろし作品。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公・藤枝黒江は、カメラマンを夢見る中学3年生。ある日、酒井彌生が転校してくる。大きな体でおっとりして、とにかくすれていなくて好感が持てる。そんな彼を好きになっていく黒江だった。

    正直なところ、学生恋愛から始まり、プロカメラマンに成長していく主人公を描いたもっと軽い読み物だと思っていた。まだ中学生、されど中学生という子供で世間知らずで不安定な時期に、黒江は強姦未遂にあう。
    その日、送られてきた不気味な写真を見て、衝動的に家を出てしまう。大きなボストンを持った中学生をみて、家出少女だとバレての犯罪である。その写真が現実かが未だに理解できない。
    中学生の多感な時期に恐ろしい経験をしてしまい、それが原因で付き合っていた彌生と別れてしまう。

    上巻はこんな中学生時代から始まり、高校時代の壮絶な経験が記されている。

    こんな経験って、普通はないだろうと思いながらも、何が普通であるかも分からなくなる。

    高校生になった黒江の友人たちに対して、友達って、こんなものなのだろうか?と、思ってしまう。確かに学生時代の人間関係は、友達が全て。その輪に必死で入ろうとする学生たちの気持ちはよくわかるが、自分がそんな苦労を感じることがなく、いまだに高校時代の友人と年数回ではあるが繋がっているので、少なくとも私は恵まれていたのであろう。黒江の友達関係を知れば知るほど、可哀想にと思う気持ちよりも不気味な気持ちになる。

    そして、平穏な輪からはみ出た子供たちは、何が善で、悪であるかを誰からも教わることなく、また自分から理解しようともせず、自分の欲望を満たすために行動する。高校生という中途半端な子供が、自分の欲望のために犯罪という意識を持たずに他人の人生めちゃくちゃにする。それに巻き込まれて、転落していく黒江のさまが描かれている。

    下巻で彼女は、立ち直ってプロのカメラマンとして自立、成功することができるのか?
    彌生くんは、下巻でも登場し黒江の人生に関わっていくのか、彌生くんがどのような影響を、与えるのかも気になる。

  • 良い意味でも悪い意味でも鋭い文章で、久し振りに島本さんの本読んだけれど、島本さんの精神状態が心配になってしまう。

    中高時代の愚かさや純粋さ、大人の男性からの気持ち悪い目線、行動など全部思い出して生きるのが嫌になるくらいだよ。

    黒江が言ってた、「普段はクラスメイトとして接してるのにそんな目で見られるのが気持ち悪い」という主旨の台詞、クソほどわかる。

  • この人が生み出す物語はいつも、変わらない雰囲気を持っている。決して明るく希望の感じられるものではないのに、惹かれるのはなぜだろう?

    親との確執、暗い過去をを抱えた少女・黒江が踏み込む、愛と破壊の世界。不安定で不器用で痛々しい黒江の姿を、なぜだか追いたくなってどんどん読み進めてしまう。

  • 黒江と羽場先輩は
    家族からの愛情に飢えていてその寂しさを持っている。
    賢治くんは何があってかはわからないけれど
    何かしらの虚無感を持ち合わせている。
    その寂しさ・虚無感を
    黒江は無意識に媚びることで
    羽場先輩は壊れたままに生きている狂気で
    賢治くんは何者に対しても平等な冷たさで埋めているように感じた。
    黒江が求める神様とは無条件の愛情だと思う。

    何やかんやで
    最低最悪だけど
    賢治くんの雰囲気が好きだった。

  • 一ページ目をめくったときから、
    止められなくなる予感がしたけど、
    大当たり。
    一気読みしてしまいました。
    どんどん道がそれていく黒江にどきどきしながら。

    これから下巻読みます。
    今夜は眠れないかも…

  • 母の転勤で小3の時引っ越してきて以来、茨城県つくば市で母とふたり暮らしの中3の黒江。
    以前は両親と祖母との4人暮らしだったが、祖母が亡くなり、両親が離婚。
    母との関係がうまくいかない黒江ではあるが、
    女友達との関係で女の子特有のわだかまりを持ちながらも、そこそこ楽しい生活を送っている。
    不思議な能力を持つ転校生の彌生(やよい)と付き合い始め、
    自分の神様になってほしいと思う。
    高校生になり、新しい出会い・恋愛・性体験をくり返しながら、そこで見る犯罪・暴力。
    加担しながらもカメラという別の楽しみを見つけるが・・
    ある事件ですべてを捨て、逃げるように故郷を捨て、上京。
    中学の頃からファンで文通していたカメラマンの元に転がり込む。
    助手をしながら、プロを目指していく。
    世間を騒がせる新興宗教、恋愛、残してきた過去、ふと湧き上がる暗い記憶・・・
    自分を守ってくれる神が両親ではなかったから、早い時期から異性にそれを求めた黒江。
    さまざまなものが交じり合って、最後に見つける神様。

    暴力・恋愛と性・虐待・宗教というテーマを
    ひとりの少女が大人に成長する姿と合わせて描いている。
    上巻の主人公の少女の行いに共感できないのに、どんどん読めていくおもしろさ。
    そして下巻に出てくるある世界をまったく理解できないけど、
    最後にはこの題名と表紙の絵が心に沁みてきて、わああとなってしまった。
    内容的に好き嫌いははっきりしそうだけど、読む価値ありと思う。
    少女の頃から付きまとう女特有の女の世界も細かい描写でかかれているし、
    成長過程の心の危うさもうまく表現されていて、
    これを読んで心が救われる女性、多いんじゃないかな。
    「女の人というのは、たぶん僕らが思っているよりもずっと多くのものから
    傷つけられて、生きている。」とあった。
    こんな風にわかってくれる男性っているんだろうか・・・

  • 中学生時代から始まる女の子の成長物語。主人公がわりとひどい目に遭い続けるのだけれど、悪い男に引っ掛かりすぎ、信じすぎ。それでも折れてしまわないのはにぶいのかタフなのか。

    どうやって風呂敷が畳まれるのか気になるので、下巻も読む。

  • 始めの10ページくらいで、なんとなくマズイな、と思った。寝られなくなるような、止まらない本の気がした。
    そのとおりで、物語の中で溺れた。

    島本理生がどこへいくのか、ずっと気になっていたけれど、やっぱりすごくてリアリティと言葉がやっぱりすごいのはたしか。
    彌生くんがいたら、私は、やっぱり黒江と同じような気持ちになる気がする。
    全部言いたいけれど、言えなくて、わかってよという気持ちばかりが膨らむ。

  • 2021.12.26読了
    3.8
    10代の頃の微妙な感情の揺らぎがが見事に描かれていると思う。
    会話のやりとりがリアル。
    主人公が自ら危険な方向にどんどん踏み込んでいってしまうので、ハラハラした。
    個人的には賢治くん、最初からかなり気持ち悪かったです……。

  • どこをメインストーリーと言ったらいいのかわからないけど、いろいろな出来事を無視して写真の話に関して言えば嫌いじゃない。

    主人公がどうしても好きになれない。
    仁さんはとてもいい。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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