- Amazon.co.jp ・本 (771ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120040900
作品紹介・あらすじ
数えるから、足りなくなる。それは、はかなくも美しい、もうしとつの「皿屋敷」。人口に膾炙し怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ第三作。
感想・レビュー・書評
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[再読] 2012年07月11日
[再々読] 2013年4月17日
なぜうらめしやとお菊さんがお皿を数え続けると言う怪談のお話になってしまったのか、そこを現実の出来事として怪異などとしてではなく書き綴られていて、すごくすごく切ないけどとってもステキなお話。
「数え」「数えず」の交互の繰り替えしが催眠のようにじわりじわりとココロに深く重く、静かにどんどんと深い井戸に潜っていくような静かな狂気に時にぞっとしたり、時にココロを乱されたり。最初から最後までしっかりと京極さんの用意した仕掛けが施されていて、内容はもちろんだけど、京極さんの構成のすごさに改めて感動した1冊。
人間の心の崩壊を切なく美しく昇華はさせない。死は死。罪は罪。崩壊は崩壊。一見殺伐としていて冷たいような思える事柄も、ちゃんとしたブレない論点で間違った正義をかざすことなく、しっかりと真理とたくさんのことを教えてくれたり、コトバにできなかった整理のつかない気持ちの収まりどころがみつかるというか。
それぞれに抱える闇はそれぞれのカタチで。執着する、執着しない、数える、数えない。それぞれにまったく違う思考だけど。虚無感や焦燥感、恐怖を感じているその書き表しが少しずつ少しずつ沸点を上げていくような、じわじわと吹き零れていく展開が絶妙でラストは読んでいるというよりその場にいる、という感覚。
映画の「ジョゼと虎と魚たち」で衝撃を受けたように、文章で初めてガラガラと音を立ててすべてが壊れていく有様を見てしまったというような、とても痛くするどく刺さるラストへの疾走。
とてもとても切なくて苦しくて深く重い現実と、でもやっぱり人の業や愚かさ、残酷さとともにあったかさが存在していて、とても好きな1冊に。裏返しの空の星は3人にとって満ちた世界だといいな。 -
「嗤う伊右衛門」はとてもおもしろかったので、期待して読んだんだけど、今一つだった。
少し残念。 -
さすが京極夏彦氏。安定感のある読み応え。文句なし。
前半は、それぞれの “虚ろ” “業” を抱えた登場人物の性質、性分、性格が盛りだくさんでストーリー展開はスローリーでじれったさもありましたが、徐々にスピードアップし後半はあっと云う間でした。
~番町皿屋敷~
数々の物語が綴られてきたであろう物語。
おどろおどろしい部分ばかりが前に出てしまいがちですが、こんなにも儚く美しい物語になるのだという驚き。
結局は血なまぐさい陰惨な結末なのですが、それでも美しい怪談である。
播磨、菊…2人が禁断の恋仲になって、吉羅が猿と播磨の両方を欲しがって…などと云う、俗っぽい展開でなくてよかった。
しかし虚しい…しかし切ない。 -
ちょっとした小箱のようなこの本の感触がたまりません。久しぶりにおどろおどろした独特なリズムというか京極節を堪能しました。江戸時代の怪談『番町皿屋敷』のストーリーを元に新解釈で書き直していて、巷説百物語の又市や徳次郎などが登場している。これはこれで楽しめたけど、虚しさの救いが見あたらないのがやりきれないこの限りではなく、やはり『鉄鼠の檻』や『嗤う伊右衛門 』のような神懸かった作品とは言いにくい。それでも、文章の美しさは音だけでなく、流麗な文字の配列にすら美学を感じました。
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読んだか読んでなかったか分からなくなって読んでみたら読んでた。
何が悪いということもないのだけれども、結末は惨劇へ。
ままならないな~
吉羅のツンデレっぽいキャラと主膳のやり過ぎな執着っぷりが素敵でした。 -
このストーリーも“欠けている”けど、そこがいい
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番町皿屋敷の真実は…?
人死にが出た屋敷で、井戸で皿を数えている幽霊が出るという…
京極流の語り直し。
青山播磨は、父を亡くしたばかりで、旗本の跡目を継いだ名誉ある立場だが、屈託のある若者。強い不満があるというのでもないが、何も面白くなく、何かが欠けていると感じ続けている。
若年寄りの政権交代?になりそうな時期、目端の利く播磨の伯母は、縁談を持ってくる。
権勢を誇る大久保が目をつけたのは、青山家に伝わるという逸品の皿10枚。
縁談の相手・吉羅は格下の播磨をなぜか気に入り、欲しいと思う。父が狙った皿が見つからないと聞いて、家風を知りたいという口実で乗り込んでくる勝ち気ぶり。
青山家の側用人・十太夫は小心者。人に褒められたい一心で行動している。家宝の皿が見つからずに青くなるが…
お菊はおっとりした娘。母一人一人で長屋育ち、ぼんやりしていると呆れられ、奉公に出ても返されること数度。
実は器量よしのために主人がその気になりそうでおかみさんに暇を出されるという子細もあった。
米搗きの三平は毎日、米をつくばかり。
菊とは幼なじみで、大道芸人の徳次郎が三平と菊を添わせたらどうかとお節介を焼くが‥
遠山主膳は播磨とは道場で同門、若い頃には白鞘組と称して群れてやんちゃした仲間。跡取りの播磨とは違って部屋住みの身のためか、どんどん荒んでいく。どこか似たものを感じていた播磨が熱意もないのにおさまっていく様子を憎むようになり…
多彩な登場人物が皆それぞれのこだわりを持つ。
語り口がやや一様だけど…しだいに絡み合ってきて、面白いです。
終盤、勢いづいていくところは迫力。 -
帯裏
瞑く冷たく澄みわたる「おはなし」の淵にようこそ。
「四谷怪談」を気高く生きる男女の哀しき純愛物語に昇華した『嗤う伊右衛門』、「小幡小平次」を歪んだ愛情に囚われた人々の群像劇として描き切った『覘き小平次』、そして本書ー
人口に膾炙し怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ、待望の第三作! -
お菊はなぜ井戸端で皿を数えるようになったのか――それは、はかなくも美しい、もうひとつの「皿屋敷」。「おはなし」となったある事件を、独自の解釈で語り直す江戸怪談シリーズ第三作。
(2010年)
この本、とっても気になります。
以前、NHKの演芸番組でたまたま講談の『番町皿屋敷』の一部を聴いたとき、いままでは皿を割った...
この本、とっても気になります。
以前、NHKの演芸番組でたまたま講談の『番町皿屋敷』の一部を聴いたとき、いままでは皿を割った女中が手打ちにされて化けて出た怪談だと思っていたものが、実は惹かれあっていながらも、互いにそうせざるを得なかった悲しいラブストーリーであると知り、衝撃を受けました。
あまりにも長い話なので抜粋だったようで、それ以来結末が気になって仕方がありませんでした。
これは『嗤う伊右衛門』の系統の話なのでしょうか。
京極さんが、どう料理しているのか読んでみたいです。
kwosaさん、こんにちは[*Ü*]
NHKで番町皿屋敷を扱われてたんですね!
わぁ~、ぜひ見たかったで...
kwosaさん、こんにちは[*Ü*]
NHKで番町皿屋敷を扱われてたんですね!
わぁ~、ぜひ見たかったですーっっ。
嗤う伊右衛門のように、京極さんが番町皿屋敷を
想像して書いたら…という感じで、
すべてが京極さんワールドに変換されて
新しい物語になっててすごく新鮮でした♡
悲しさが苔むすように全体を覆いつつなんですが
なんとも叙情的で美しささえ感じるお話でした[*Ü*]
kwosaさんのレビューが読めるの楽しみにしてますーっ♪