海の都の物語 上: ヴェネツィア共和国の一千年 (塩野七生ルネサンス著作集 4)
- 新潮社 (2001年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106465048
作品紹介・あらすじ
群雄割拠、他国の侵略も絶えないイタリアにあって、一千年もの長きにわたり交易で欧州を席巻、自由と独立を守りつづけた海洋国家ヴェネツィア。異教徒との取引にも積極的であった一方、聖地奪還を旗印にする十字軍に荷担しつつ、これを巧みに利用して勢力範囲を着々と拡大する-そんな現実主義者たちが地中海を舞台に壮大なドラマを繰り広げる。政治経済はもちろんのこと、そこに生きた人々の暮しぶりや息づかいまで詳述した、塩野ルネサンス作品中一番の大作。
感想・レビュー・書評
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塩野七生 「海の都の物語」ヴェネツィア共和国の通史
ヴェネツィア の千年の歴史を振り返り、戦争の英雄がいないのに、なぜ千年の長い間を生きのびたのかを紐解いている。
著者は、ヴェネツィアの私企業のような国家経営観に目付けしている。カリスマ的英雄で彩られるローマ史と比較すると、ヴェネツィア史は 地味であるが、その地味さが生きのびた理由であるとする論調
ヴェネツィア の国家経営の特性
*宗教やイデオロギーの違いに重きを置かず「はじめに商売ありき」の商業至上主義
*初めから自給自足を諦め、不足の経営資源は交換する〜自給自足を目的とすると 植民地主義に進む
*国家の意思決定において、マクシミンルール(最悪の結果が最もましなものを選ぶ)を採用する
*共和国政体により国家の組織力を高める
宗教と距離を置き、ローマ教会の圧力を排除しつつ、自国の組織力強化のため、政治のプロ階級を育て、議員の終身制や世襲制に取り組んだ ヴェネツィアの民主主義の取り入れ方は 興味深い
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ヴェネツィアの歴史を、年代別ではなくてテーマ別に記述したもの。
上巻はそれでもなんとなく前半部かな。
第四次十字軍の詳細とかは知らなかったので興味深かった。
とはいえ、全体評価は下巻を読んでからかな。 -
2012/01/09
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ヴェネツィアの壮大な歴史がわかって面白い!!
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ヴェネチア共和国の興亡史。この人の地中海シリーズと言えば、『コンスタンティノープルの陥落』『ロードス島の攻防』『レパントの海戦』の3部作が有名だけど、そのバックグラウンドとして当時の地中海世界を知るのに最高の1冊。この本を持ってヴェネチアに住んでみたくなる。 下巻はヴェネチアが「亡」に向かうからか、上巻ほどの高揚感がないのが難点。
しかしカテゴリ分けに悩む一冊やなぁ。 -
ローマ帝国滅亡後のヨーロッパが気になり
読みまくってます。この手の本を。
ヴェネチアに関する興亡を描く上巻だけど
まず地政学的な思考の勉強になります。
この本は。
ローマ時代を把握してから読んだほうがいいけど
読んでみなはれ〜。 -
・天然資源は塩しかない、人的資源も不足
・そこを通商条約でカバー
・共同体の利益追求
・ライバルはピサ商人とジェノヴァ商人
・ヴェネツィアは、「宗教の介入」を元首を国民から選ばれた代表にすること
「人の欲望」を議員を世襲制にすることで抑えることとした
・人間の良識を信じないことを基盤としていたヴェネツィア共和国政体は長く存続した
・ヴェネツィアの運河は、船を通す未知としてよりも、水を通す未知として作られた(洪水の危険、水が腐り伝染病の原因になる危険)
・一個人に権力が集中することを避けてきたヴェネツィア共和国では政治的暗殺が一度も起こらなかった
・地位の上下を問わず誰もが無防備で街中を歩けた珍しい国
・「奉仕の騎士」精度 -
圧巻、塩野歴史絵巻。
ヴェネツィアの興亡を丹念に描いた傑作。
実際に訪れた跡に読んだので、情景が目に浮かび、一気に下巻まで読み通した。
なぜ、あのような特異な土地の小さな国家が、かくも長い期間、地中海の覇者として隆盛を保ってこれたのかがはっきりと分かる。 -
目からウロコの一冊 塩野作品で一番好きな1冊