ルネサンスの女たち (塩野七生ルネサンス著作集 2)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106465024

作品紹介・あらすじ

戦乱と権力闘争の嵐のなかをしたたかに生き抜いた4人の女の物語。執筆の回想を初めて収録。

感想・レビュー・書評

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    塩野七生の作品で何がオススメか、と聞かれたらまずこれを薦めたい。
    ルネサンス時代イタリアを中心とした4人の女性の物語。
    ・マントヴァの侯爵婦人イザベッラ・デステ
    ・法王を父に持ち、枢機卿のチェーザレを兄に持ち、彼らの思惑に翻弄される娘ルクレツィア・ボルジア
    ・チェーザレと全面対決に望んだ女傑カテリーナ・スフォルツァ
    ・ヴェネツィア共和国の冷徹な政治により運命を決められた少女カテリーナ・コルネール

    塩野さんの最初の作品というだけあって思い切りの良さが随所に見られる。マキャヴェリズムにも通ずる彼女の物の見方は同性を描く際にも容赦なく発揮される。いや、むしろ同性にこそというべきか。女であるが故に寄せる同情などはほとんど感じさせず、遠くから彼女達の姿を描写している。ルクレツィアの章なんて兄のチェーザレと父のアレッサンドロ6世の話がほとんどで、ルクレツィア自身はオマケくらいの扱い。偉大すぎる人間を身内に持った普通のかわいらしい女性の人生、くらいのもの。そこにも悲劇性はあるのだが、同調性は低め。


    一方好きな男はべた褒めで、道徳的観点から向けられる彼らへの非難などはものともしない。チェーザレがそんなに好きか。

    それでも、下手に騎士道精神であるとか、勇気、友情、愛なんていうものを持ち出して語られる歴史よりなお心地良いのは作者の歴史を見つめる目が醒めているからだろう。カテリーナ・コルネールに対して徹底した現実主義をとったヴェネツィアへ向けた以下の言葉にそれが顕著に表れている。

    「見事な偽善である。しかも徹底した偽善である。カテリーナ・コルネールの一生は、このヴェネツィアの偽善によって動かされ、そして彩られた。偽善は、それをしていることを自覚しない人間がやると、何の役にも立たないどころか、鼻持ちならないその臭気が、人びとを毒する。しかし、それをしていることを十分に承知している人間の行う偽善は、有効であるとともに、かつ芸術的に美しい。」

  • 筆者の処女作ということもあって、かなり話が長く、あまり必要と思われない箇所をしつこく書いている部分もあるものの、ルネサンス時代の身分の高い女がどのような波乱万丈な生き方をしたのか非常に勉強になった。

  • 少し難しかった。
    それぞれの時代を彩った女性たちの物語。いずれも魅力的な物語だったと思う。

    もう少し時間をかけてじっくり読んで見たい。
    再読したい。

  • 塩野七生の20台の処女作。著者がこの本を書いた経緯をかいたメイキングも付録として面白い。謎の人の伝記のようで貴重な記録です。本題はルクレティア・ボルジア(法王の娘で有名なツエーザレ・ボルジアの妹)、賢女イザベッラ・デステ、女傑カテリーナ・スフォルツオア、ベネティア出身でキプロスの権力者になったというカテリーナ・コルベールの4人の女性の数奇な一生を描きます。いずれも絶世の美女、貴族の出身、不幸な政略結婚、離死別、不倫、恋、そして権力、残忍な処刑(本人ではなく)などドラマティックな運命を辿った人たちです。それにしても僅か五百年ほど前の4人の女性を描きつつ、ルネサンスという時代を見事に描いた著者の筆は20台ながら素晴らしいです。イタリアがローマ法王庁、ベネティア、ミラノ、ナポリ、フィレンチェの5大国に割拠していた時代が今のサッカーのセリエAの対抗意識に結びつきます。

  • ルネサンス期に生きた四人の女性の人生。
    国を守るために闘った女性と受動的に生きた女性がそれぞれ二人ずつ。それが交互に書かれているので対照が際立ちます。

    権謀術数は言うまでも無く恋愛までもドライ、時にキツいくらいの著者の意見が書かれる塩野節はデビュー作からなのだと知りました。

  • 塩野七生のルネサンス著作集第二弾。
    女の人が描く女の人生というのは生々しくて容赦がなくて面白い。

    自国を守る一心で、結果的にしたたかな政治的手腕を発揮した、イザベッラ・デステ。
    偉大な父と兄を持ったことで、波乱に富んだ人生を送らざるをえなかった、ルクレツィア・ボルジア。
    豪胆さと残酷さと美しさをあわせもった「イタリアの女傑」、カテリーナ・スフォルツァ。
    ベネツィアという国によってキプロス島の女王の座につかされ、またその座から降ろされた、カテリーナ・コルネール。

    4人の女性の人生を丹念に読み解くことで、ルネサンスという時代の、イタリアという地の、全体像が見えてきます。

    カテゴリ分けが悩むところ。
    エッセイとしたけれど、小説のようでもあり、歴史書のようでもあり。
    時々ギラリと光るナイフのような塩野節が小気味よいです。

  • これがデビュー作とのこと。女が女を書くと感情的になってしまいがちですが、塩野先生さすがフラットでかっこいい。

  • これはおもしろい。読むべき。

    きっと…言い方はおかしいかもしれないけれど、この作品を読んで、塩野さんの作品は小説的哲学論文なんだと思った(論文、という言葉に一切否定的要素なしに)。

    なんちゃって。

    でも、ぶっちゃけそう思わずともこの時期のイタリアの歴史に対する知識欲を十分満たしてくれたので、その面でも良書だと思います。
    ただ、歴史解釈がドライすぎて、最初はキツかった!

  •  ルネサンス期を生きた4人の女の話。ルネサンス期、女性は政略結婚の道具とされていたけれど、その後の中世に比べると自由だし人間的に扱われていたようだ。その中で2人は政治家として手腕をふるい、2人は運命に流されて行く。対照的な女性を描きながら、ルネサンスの光と陰を描く手法は、うまい。
     歴史家が女性を描くのは、どうしてもその周りの男性を描かなければ語れないから。女性を描きながら、実は男性を描いているというのは、上手く言い当ててるなと思う。

  • イタリア・ルネサンスを生きた女たちの物語です。有名なところでは、ルクレツィア・ボルジア、イザベラ・デステなど。彼女たちの生涯を、ことさらに煽るでなく冷静に描いています。これを読むと彼女たちは希代の悪女でも、悲劇のヒロインでもなく良くも悪くも「女」だったんだなぁと思いました。ただし非常に自我がはっきりとした「女」ですけれど。

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