ストレス脳 (新潮新書)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106109591

作品紹介・あらすじ

病気や飢餓などのリスクを克服し、人類はかつてないほど快適に生きられるようになった。だが、うつや不安障害は増加の一途……孤独にデジタル社会が拍車をかけて、現代人のメンタルは今や史上最悪と言っていい。なぜ、いまだに人は「不安」から逃れられないのか? 幸福感を感じるには? 精神科医である著者が最新研究から明らかにする心と脳の仕組み、強い味方にもなる「ストレス」と付き合うための「脳の処方箋」。

感想・レビュー・書評

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  • 「快適に暮らせるようになったのに、なぜ多くの人が精神的な不調を訴えているのか?」
    という素朴な疑問に、人間の脳の観点から答えを探す本。

    著者は”スマホ脳”で有名な"アンデシュ・ハンセン"さんで、著者なりの疑問に対する提案も書かれており、ストレス関係の本として名著だと思った。

    人間の脳は狩猟採集時代から変わっておらず、生物として生き延びることを最重要任務としている。
    よって、今の時代に適応しておらず、人間が不安を感じるのは正常な反応である。
    また、狩猟採集時代のように、運動することと仲間と一緒に過ごすことが不安から守ってくれる。

    人間の脳の特性上、不安を感じるのは普通のことだと理解できる本でした。
    何度も読み返したい一冊です。

  • 不安やうつの傾向がある人にも読んでもらいたい本です
    毎日インスタでキラキラの人を見て落ち込んでしまう人にもおすすめです

    私たちは短命の昔の時代を生き抜いてきた人達の子孫であること
    いかに生き延びるかという脳であること

    不安、うつは防御メカニズム
    運動することがうつを減らすこと
    孤独はよくない 浅い友達たくさんよりも、深い信頼できる友達数人が大切
    幸せの定義を考え直すこと!

    アンデシュ・ハンセンさんの本はとても勉強になるし、専門的なこともわかりやすく書いてくれていて読みやすいです!

  • 何をしても気分が落ち込む。頭で思いつく限りの不安がのしかかってくる感じ。
    この何とも言えないダルさが数日間続いたので、急遽読む本の進路を変えた。こういう時は明るい本で現実逃避するよりも、根本的な原因を知って断ち切っていくに限る!

    大ベストセラー『スマホ脳』に続く第二弾。
    ここでいう「ストレス」とは不安から発生する心理状態のことを指し、何故人はいつまでもストレスから解放されないのかを「不安」「うつ状態」「孤独」の観点から解き明かしていく。
    前作同様、本書も無数の付箋に覆われた。

    生物学的(=理系)な話なのに何故ここまで読みやすいのか。それは著者が心のお医者さんだから。
    彼の本を手にとる読者は、既に本のテーマで悩んでいる”患者さん”である。彼は不特定多数の読者ではなく、患者に話しかけるように本を書いている。患者側も辛抱強く丁寧に解説してくれる”先生”の話に耳を傾けるうち、だんだんと心が晴れていく。
    テーマも今の自分にドンピシャだった。読みながら心の奥底を探っていくのは辛かったが、結果的に気持ちが楽になったし足取りも少し軽くなった。

    これまた前作同様、話は原始時代まで遡る。
    まず脳というのは終始幸せな気分に浸るためではなく、ただ生き延びるためだけに様々な指令を発信している。
    我々は猛獣や感染症etc.と、生命を脅かしてきた対象から生き延びてきた人々の子孫であり、現代においても脅威と認識したものへすぐさま警戒心を張ったりと、我々の脳は原初からほぼ変化していない。

    この「原始論」については『スマホ脳』でも触れられていたので、さほど驚かなかった。終始幸せな気分でいられるようには出来ていない、古来より受け継がれし(過剰なまでの)警戒心から発生するストレスには抗えないと、諦めもついた。
    著者の言う通り、「なぜ」ではなく「どのように」ストレスが発生するのかを知るだけでも全然違う。

    個人的に好感を持てたのが、うつを「精神的な省エネ状態」と表されていたこと。脳の病気なんかではなく「正常な反応」であるとも。
    表現ひとつだけど、「そうか、心が病んでいるのではなく活動を休止しているだけなんだ」と、必要以上に深刻になっていくのを抑えてくれた。

    少しでもストレスを軽減させる打開策として「週に1時間以上の運動(散歩程度でもOK)。そこから2-6時間と運動時間を増やそう。さすれば身体の各機関や組織が強化される」と提案されていたが、あいにくそれは実行済だった。

    それよりも良かったのが、著者の示す「幸せの定義」に出会えたこと。
    「自分が得意なことを自分や他者のためにどう活用できるかを理解する」。そうやって自分の外側に一歩一歩近づくことで「幸せ」を見つけていくー。
    生物学的どころか宗教学的な方向に来ちゃったけど、いつもハッピーでいるなど生物学的にも不可能である。(…と本にも書いてある)
    こうして脳の仕組みを知り、ほんの少しだけ原初由来の生態に抗ってみるのも打開策にならないか?

  • 【まとめ】
    1 健康的な時代に何故心を病む?
    今までになく快適に暮らしているはずなのに、多くの人が心を病んでいる。スウェーデンでは大人の8人に1人が抗うつ薬を飲んでいて、世界保健機関(WHO)の試算によると世界で2億8400万人が不安障害を抱え、2億8000万人がうつに苦しんでいる。60万人のアメリカ人を対象にした調査では、2005年〜2015年の10年間で、ティーンエイジャーのうつが約40%も増加したことが分かった。あと数年もすれば、うつが他のどんな病気よりも大きな地球規模の疾病負荷になるという。こんなに快適に暮らせるようになったのに、私たちはなぜ気分が落ち込むのだろうか。


    2 人間は今も昔のままだ
    私たちの身体と脳は、1万〜2万年前の狩猟採集時代からたいして変わっていない。
    私たちの身体は生き延びて子孫を残すために進化したのであって、健康に生きるためではない。脳も同じ理由で進化したのであり、幸福を感じるためではない。


    3 感情のメカニズム
    感情とは、私達の行動を指揮するために脳で作られたものだ。
    感情というのは、自分の周囲で起きていることに反応してほとばしるのではなく、脳が私たちの内と外の世界で起きていることを融合してつくり出す。内側とはバイタルサイン、つまり体が発する心拍数や血圧、呼吸数などの情報であり、外側とは私達が視覚や聴覚や嗅覚で感知している現実世界の情報だ。その感情を元にして、脳は私たちに生き延びるための行動を起こさせる。つまり感情というのは実はただの「任務」にすぎない。生き延びて遺伝子を残せるように、脳が感情を使ってその人を行動させるのだ。

    幸福感がすぐ消えてしまうのも、感情が人間を次の動機に向かわせるためである。一度バナナを食べたくらいで何ヶ月も満足なままだったら、新しい食べ物を探すモチベーションが湧かず、餓死してしまうだろう。


    4 なぜ人は不安やパニックを感じるのか?
    パニック発作は扁桃体から始まると考えられている。
    扁桃体には周囲の危険を察知するという任務がある。危険の可能性にも反応し、身体を「闘争か逃走か」の態勢に備え、ストレスシステムのギアが入って心拍数が上がり、呼吸が速くなる。脳はそんな身体のシグナルを誤解し、本当に危険なことが起きていると思い込んでしまう。するとますますストレスシステムのギアが上がる。それで、さらに心拍数が上がって呼吸が速まり、脳はやはり危険なことが起きている証拠だと誤解する。こうやって負のスパイラルに陥り、激しいパニックを引き起こしてしまうのだ。

    何故不安が極端に増大するかというと、人間が今まで危険な世界に暮らしてきたからだ。茂みの中でガサガサと音がしたとする。ほとんどは風の音だが、もし不安に駆られて逃げたとしても、せいぜい数100キロカロリーを消費するだけだ。だが万が一ライオンだったとすると、あなたは死亡する。脳はわずかでも疑いがあれば脅威となりえる危険に反応するよう設定され、そのおかげで生き延びられる確率が上がったのだ。
    そのため、不安に苛まれるのはおかしなことではない。


    5 記憶は変えられる
    脳は生き延びるために重要だと思う記憶を優先して保存する。
    殺人や災害といったなんらかの脅威にさらされて扁桃体が起動すると、海馬が「今体験していることを覚えておかなくてはいけない」というシグナルを受け取り、明瞭な記憶を保存する。そして、過去に体験したトラウマをわずかでも思い出させるものは何であれ、私たちを守るために脳に記憶を取り出させてしまう。その結果、一番忘れたい記憶こそが脳にとっては最も重要で覚えておかなくてはいけないものになる。
    思い出すことで精神状態が悪くなったとしても、脳にしてみればたいしたことではない。脳は生き延びるために進化したのであって、幸福を感じるためではないのだから。

    ただし、嫌な記憶を和らげるためのヒントはある。実は記憶というものは取り出すたびに不安定になり、変えられることが分かっている。どのように変わるかは今現在の気分や体験次第であり、あなたの精神状態によってポジティブにも塗り替えられる。これがPTSDの治療に利用されている。安全だと感じられる状況で恐ろしい記憶を取り出すと、時間をかけて記憶が変化していき、脅威が減っていくのだ。


    6 うつが起きるのも生化学的反応
    うつ病の症状は人によって様々だが、うつを引き起こす原因は驚くほど同じだ。ストレス――特に長期間続いたストレスや、自分では制御できないと感じるストレスだ。

    つい数世代前まで、人間の半数は大人になる前に死んだ。そして、そのほとんどが感染症だった。歴史的には、ストレスというのは身体にとって「感染リスクが高まった」という明確なシグナルだったと、アメリカの精神科医チャールズ・レゾンが述べている。
    ストレスが私達の感情を変え行動を促すと考えれば、この一連のサイクルは一種の免疫機能だと言える。感染のリスクがあれば、脳が感情をつくって私たちを引きこもらせる。脳は今でもまだサバンナにいると思い込んでいるから、ストレスを感じると感染リスクが高まったと解釈する。その結果として、長期的なストレスを受け続けると、その間ずっと怪我や感染の脅威にさらされていると勘違いしてしまう。そのような脅威に対抗するために、脳は家にこもりたくなるような感情をつくり、精神的に立ち止まらせようとする。つまり私たちがうつと呼ぶ状態にするのだ。


    7 孤独というリスク
    孤独は病気のリスクを高める。今や3人に1人以上が孤独に陥り、2人に1人は非常に深刻で、タバコを1日1箱吸うのに等しい危険にさらされている。

    孤独を医学用語で定義すると、「求めている社会的接触と実際のそれに、不安を感じるような差があること」である。重要なのは、その人がいくつ社会的接触を持っているのかと、いくつ持っていたいかの「差」だということだ。そのため、慎ましい社交範囲で満足する人もいれば、年中友人とともにいなければパニックを起こす人もいる。独りで過ごしていることと孤独であることは違うのだ。

    孤独はうつの原因になる。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちが4200人を12年間追った大規模な調査では、50歳以上のうつの人のうち20%が孤独によるものだということが判明している。つまり5人に1人が孤独が原因でうつになったのだ。孤独は1日に15本タバコを吸うくらいに危険だという結論を出している研究者もいる。

    地球上にいた99.9%の時間、私たちは生き延びるためにお互いを必要としてきた。集団は生存を意味し、社会的な絆を大切にしたいという強い欲求をもっていれば命をつないでいけるオッズが高かった。脳は集団に属すと幸福感という報酬を与えてくれるが、それはまったく自己中心的な理由によるもので、集団でいれば自分の命を守れる可能性が高いからというだけだ。つまり孤独によって感じる不快さは、脳があなたに「社交欲求を満たせ」と語りかけてきているのだ。

    そのため、孤独でいると副交感神経(落ち着き)ではなく交感神経(興奮)が活発化する。独りでいると、脳はこれが誰にも助けてもらえない状態だと解釈し、危険に対して警戒しておかなくてはと考える。すると身体は軽度ではあるが長期的なストレスを抱えたままいつでも警報を鳴らせる状態、つまり交感神経が優位な状態で暮らし続けることになる。長期的なストレスは血圧を上昇させ、炎症の度合いを上げる。

    しかし、バーチャル世界の発達によっていつでもどこでも繋がれるようになったのに、何故孤独感が増したと感じるのだろうか?
    答えの一つは皮膚にある。皮膚には軽く触れられた時に反応する受容体が存在する。ただし肌に感じる痛みや寒さや暑さ、あるいは誰かに肌を圧迫されるといった刺激には反応せず、唯一、軽く触れられた時にだけ反応する受容体だ。人間で言う愛撫、ゴリラでいうところのグルーミングの瞬間である。また、接触によって下垂体が反応すると、エンドルフィンが放出される。エンドルフィンは生化学上、友情や親密さを感じる際の中心的存在だ。エンドルフィンには鎮痛作用があり、強い幸福感を与えてくれる。

    いくらネットが発達しようとも、私たちは対面で会い、お互いに触れ、肉体の存在を感じなければならないのだ。


    8 人は進んで運動しようとしない
    運動は自信を高め、人生に満足させ、うつから守り、不安やストレスを和らげ、感情のサーモスタットを落ち着かせ、さらには身体の各器官を強めてくれる。
    ならば、なぜ私たちには「ソファに座ってネットフリックスを観るより、どうしてもジョギングコースに出たい」という欲求が内蔵されなかったのだろうか。なぜ脳は明らかに自分にとって良いことをさせないようにするのか。
    この矛盾を理解するためには、2つの点を頭に入れておかなくてはいけない。脳は運動をするという環境を前提に進化したわけだが、それ以前に何よりも生き延びるために進化した。そして私たちの歴史のほとんどの期間、飢餓は命を脅かす甚大な脅威だった。カロリーは滅多にお目にかからない贅沢品で、見つけたら即座に食らいつかなければいけないものだったのだ。
    それが数十年前から、カロリーが常にいくらでも手に入る状態になった。冷蔵庫を開くか食料品店に行きさえすればいいのだ。しかし進化には非常に時間がかかり、何十年ではなく何万年という単位の話なので、私たちの脳はまだこの環境に適応していない。
    「エネルギーを取りすぎだから消費せよ!」というスイッチは、人間の脳にはまだ存在していない。人間はむしろ飢餓に備えて怠惰でなければならないのだ。


    9 今が一番精神状態が悪い時代なのか?
    現代は一番精神状態が悪い時代なのかというと、それははっきりしない。時代ごとに「精神状態が悪い」という概念はまちまちだからだ。
    最も慎重で良質な実験の多くが「時代によってあまり大きな変化はない」ことを示唆している。ただし例外はティーンエイジャーの女子で、ここ10年で気分の落ち込みや不安が実際に増加していることが示されている。それはSNSで他人と自分との格差やヒエラルキーを見せつけられるようになったからだ。脳が他人の成功を見すぎて「自分は充分ではない」というシグナルを発するようになり、精神状態の悪化に繋がっている。

    注目すべきなのは、むしろうつの人の数が減っていないことではないだろうか。医学の発展により感染症との戦いが大きく飛躍し、寿命は伸びたものの、多くの国の調査では、うつ病患者が医学の発展ほど目覚ましく減少してはいないことを示している。

    私たちのライフスタイルの何が私たちを脆弱にしているのか。その「何か」とは、「運動」と「仲間と一緒に過ごすこと」だと思う。今でも狩猟採集民として暮らしている人たちは1日に1万5000〜1万8000歩ほど歩いていて、身体を動かしている時間は2、3時間、そのうちの1時間は激しく身体を動かしている。加えて社会的な絆で強く結ばれ、互いに近くで暮らしている。その2つの要素が彼らを不安やうつから守っている。


    10 幸せの定義
    あらゆる体験を自分の期待と照らし合わせるように進化したからこそ、幸せを追い求めるのはやめたほうがいい。現代では「幸せは自分で掴み取るもの」という考えが蔓延しているが、それがゆえ、私たちは幸せになれるし、ならなければいけないと思ってしまう。毎日最高の気分でなければだめだという気がするのだ。
    それによって脳は私たちの主観的な経験を、事実上達成不可能な目標と照らし合わせてしまう。恒常的な幸福感など人間にとって自然な状態ではないというのに。自分の情動への期待が非現実的に高くなってしまい、その期待に添えないことに気づくと、落胆する。

    幸せとは独立したゴールではなく、あくまで状況の一部なのだ。自分は何が得意で、それをどんなふうに自分そして他人のために使えるのかを理解する。そうすることで自分の外側に広がっているものの一部になれる。幸せが生まれるのは、人生で何が重要なのかを理解し、それに沿って行動したときなのだ。

    だから、幸せを追い求めてはいけない。幸せとは幸せについて考えることをやめ、意義を感じられることに没頭した時に生まれる副産物なのだ。

  • 世界で最も「不安遺伝子」を持つと言われる日本人必読!『スマホ脳』著者ハンセン先生の最新作『ストレス脳』2022年7月19日発売決定! |株式会社新潮社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000587.000047877.html

    ◆「臆病で慎重」なのが人類[評]永江朗(ライター)
    <書評>『ストレス脳』アンデシュ・ハンセン 著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/201296?rct=book

    『ストレス脳』のハンセン氏が語る「うつも不安も生き延びるために必要なこと」 | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい
    https://shueisha.online/culture/33664

    アンデシュ・ハンセン、久山葉子/訳 『ストレス脳』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/610959/

  • ストレスや不安がなぜ起きるのか、どういったメカニズムになっているのか、平易な言葉で説明されている。
    うつや不安障害を自分の性格や遺伝のせいだと思って苦しんでいる人にはぜひ読んでほしい。気持ちが少し楽になり、建設的な思考をする足がかりになるのではないだろうか。

    また、ただ「運動しなさい」「孤独を避けなさい」などとアドバイスをするだけでなく、なぜそうすべきなのか、分かりやすく解説してあり、説得力がある。

    参考になる内容だった。

  • 脳は狩猟採集民の時代からほとんど変わっていないという事実。私たちは、便利なものに囲まれているのにもかかわらず、脳はサバンナにいる時代と変わりはないのだ。
    この事実をもとに、私たちがなぜ不安を感じるのか、感情があるのか、鬱の症状になるのかを、客観的なデータから分析されていた。脳はあくまで、生き延びるという役割のもとに機能していることを知ったことで、不安に対して過剰に意識することも減りそうだ。
    鬱に対する対処法は、人と交わること、運動をすることに尽きるとのこと。色んな病気の治療法も確立された時代において、原始的だとは思うが、一番鬱の症状には有効である。
    私たち人間は、生物である。便利になりすぎた社会に置かれ、そのことを私たちは忘れてしまっている。そのことを念頭に置けば、不安や鬱状態になるメカニズムも理解できるだろう。

  • 私は21世紀のデジタル化が進んだ世界に生き
    食べたいものはほぼ何でも食べられるし
    人間関係の悩みも特になく
    平和に暮らしています。

    なのに私の脳は、未だ私が狩猟採集民と思っていて
    私を生き延びさせるために
    あれこれ余計なことをやってくれるのです。

    元々この手の本が好きでたくさん読んできたけど
    この『ストレス脳』は秀逸。
    新しいことをたくさん知ったし、
    バラバラの知識が繋がりました。

    新しく知った一つは、自分に「社交欲求」があったということ。
    「私にとって孤独はリスクなんだ」と脳は思っているのです。

    ちなみに若い人ほど孤立感孤独感を覚えやすい傾向にあります。
    45歳を超えるとたいてい減るそうです。
    歳を重ねるにつれて社会的接触が選択的になり、
    一番大切な人たちだけを優先するようになるからかもしれない。
    最も孤独感が低いのは60代だったそうです。
    でも85歳を過ぎると、残念ながら孤独感が増すそうです。
    パートナーや友人を失う人が多いせいだろう、とのこと。
    おじいちゃんおばあちゃんに声をかけてあげたらいいかも。

    〈幸せを追い求めてはいけない。
    幸せとは幸せについて考えることをやめ、
    意義を感じられることに没頭した時に生まれる副産物なのだ〉

  • 人間がストレスを抱える理由を、生物学的見地から解説している。何故現代人に鬱病が多いのか、何故運動が鬱病防止と治療に効果があるのか、非常に分かりやすく解説されている。

    人は元々「狩猟採集民」であったという観点で考察すると、人間が集団から離れること(衣食住が確保できないこと)への恐れ、体力を温存するため怠けてしまう性質、食べ物を得たら満腹になるまで食べてしまうといった特徴に納得した。

    また、興奮状態やジャンクフードによって、身体が「炎症」している状態が慢性化し、精神に異常をきたすとのこと。前作『スマホ脳』でも取り上げられていたが、SNSは人間の「帰属本能」を強く刺激し、不安を煽るので、長時間の使用は本当に危険。

    最後に「幸福」についても、「他人と比べて羨んだり追い求めるのものではない。自分の生きる意義を意識して日々を過ごすこと」と結んでいる。ニーチェの「超人」と繋がる考え方であった。

  • スウェーデンで国民的人気を得た精神科医が語る、脳とストレスの関係性。対人関係、SNS、コロナ禍など、人類史上最悪のメンタル危機が訪れた現代。その処方箋を人類の歴史と脳科学から導き出す一冊。

    『スマホ脳』と基本の考え方は同じで、今回はうつや不安、ストレスがテーマ。不安障害で治療中のぼくにとって「不安障害やうつは脳が正常に機能している証拠でもある」という言葉と理由には納得感があって読んでよかった。運動は大事!そして、親しい友人との繋がりが心を癒す。SNSはほどほどに!ハイテクだけがすべてじゃない。人類はローテクの中でずっと暮らしてきたのだから、そういう活動こそ要だったりする。

    「脳は生き延びるために進化したのであって、幸福を感じるためではない。」
    「つまり幸福感というのは消えてしかるべきなのだ。でなければ感情は私たちを動機づけるという本来の役割を果たせない。」
    この言葉たちも言われてみればなるほどと。これを前提に考えたら気が楽になるよね。

    幸せの定義の話で、自分の能力を他人に対してどう活かせるかが鍵になるというのも腑に落ちた。ぼくは読書や感想を伝えるのが好きで、それで誰かが興味を持ってくれたらいいなと活動している。集団に対して自分は何ができるか。それが自信にも他者にも繋がる大切な手段なんだよね。

    以下、印象深い文章を引用して終わります。

    p.36
    つまり感情というのは、自分の周囲で起きていることに反応してほとばしるのではなく、脳が私たちの内と外の世界で起きていることを融合してつくり出すのだ。その感情を元にして、脳は私たちに生き延びるための行動を起こさせる。つまり感情というのは実はただの「任務」にすぎない。生き延びて遺伝子を残せるように、脳が感情を使ってその人を行動させるのだ。

    p.66
    不安はまっとうな反論をことごとく蹴散らし、それ以外のことを考えられなくする。まさにそれが不安の存在意義なのだ。「楽しいことを考えて、不安には執着しない!」とか「ポジティブシンキングで」といった励ましで消えるような不安なら、初めから存在していなかったのだ。耳ざわりの良い言葉で消えるような不安は、私たちに行動を起こさせるほど強い圧力ではなかったわけだから。

    p.188
    身体がどれだけのエネルギーを得られるかは、口にする食べ物の量だけでなく、エネルギーの消費量にもよる。運動をするとエネルギーを消費してしまう。だから私たちは先天的に怠惰なのだ。

    p.240
    なお、私が聞いたことのある中で最も建設的な幸せの定義は、「ポジティブな体験」と「自分自身に対する深い洞察」の組み合わせだ。自分は何が得意で、それをどんなふうに自分そして他人のために使えるのかを理解すること。そうすることで自分の外側に広がっているものの一部になれるからだ。

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著者プロフィール

精神科医。カロリンスカ医科大学卒業。王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら、有名テレビ番組でナビゲーターを務める。『一流の頭脳』が人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、世界的ベストセラーに。前作『スマホ脳』は日本でも爆発的にヒットした。

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