小説家になって億を稼ごう (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108990

感想・レビュー・書評

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  • b-matatabiさんのレビューを読んで、興味を持ち、読んでみたくなり、本棚登録しました。
    b-matatabiさん、すみません。この本、本棚登録するの、私恥ずかしくて、かなり迷いました。
    でも、この本、買って読みたくて、本屋さんで購入するときの、メモがわりに、登録しました。
    興味深いレビューを、ありがとうございます ☆

  • 万能探偵Qシリーズの著者、松岡圭祐氏が、小説の書き方から世に出るまでのさまざまなルールや事情などについて指南した本。

    著者が小説家であること、タイトルから想像すると、業界の裏側を自虐的に明かす内容なのかと最初は思ったが、読んでみると、「小説家」という職業人が「小説」という商品を世に出すために必要なことを一つ一つ丁寧に解説している極めてまっとうなビジネスの本であった。

    第1章は小説の書き方についてで、文章化する前に徹底的にシチュエーションや登場人物の造形を頭の中で考えてからアウトプットしていく「想造」という方法を紹介している。
    以前に小川洋子さんや上橋菜穂子さんが物語の生まれ方について書いていたものを読んだことがあるが、二人とも感覚的にこの「想造」に近いことを行っているようであった。ただし本書では、写真やインターネットなどのツールを利用して意図的に「想造」する方法を具体的に説明しているところが特徴的である。かといって、こうすれば読者が食いつきますよ、といった、読者の機嫌取りのようなことではなく、自分の想像を創造につなげるためのヒントを教えてくれている、といった感じなので、ちょっとやってみようかな、という気持ちになる。

    第2章以降は、小説を世に出すための出版契約や編集者との付き合い方、印税の仕組みや刊行された後の映像化の話などについて順に説明される。自分にはなじみのない世界なので、他業界の実情を覗き見るようで面白い。ここでも、仕事のパートナーである編集者や出版社への敬意はしっかり感じられ、読んでいて非常に説得力がある。
    また、近年ますますシェアを広げているライトノベルについてもかなりの量を割いて言及されるが、本の売れ方や社会への広がり方など、一般の文芸作品とかなり異なる文化なのが分かって興味深かった。

    著者は小説家になりたての頃ビジネスの世界に疎く苦労したことから、小説家の世界に指南書のようなものがあったら後輩も苦労しないだろう、と思って本書を書いたそうだ。
    読んでいると、この著者はとても頭がよい方なんだな、と感じる。きっと小説以外のビジネス界にいても成功した人なのではないだろうか。そして、後輩の小説家も未来の小説家も、この本を読んで学ぶことは多いに違いない。

    小説業界に対する敬意と後輩に対する愛情が感じられる本である。

  • 世にあるダイエット本はみな「実用書」だが、「この本を買って読めばやせられるかもしれない」という〝夢を買う本〟でもある。宝くじを買うのと一緒だ。

    ダイエット本は、その内容を実行して実際にやせた(まれな)人にとってのみ、真の「実用書」となる。本書もしかり。

    タイトルのとおり、これは小説家になってベストセラーを連発し、億単位の年収を稼ぎ出すための「実用書」である。

    著者が小説家志望者に向けてくり出すアドバイスの数々は、おおむね妥当なものと思える。
    机上の空論は一つもない。著者自身が億を稼ぐ人気作家であり続けてきた実体験に基づいており、ヴィヴィッドな現場感覚に満ちている。

    ただし、本書を実用書として用いるためには、大前提として、小説家としての並外れた才能が必要だろう。
    これはいわば、〝ごくひと握りの天才専用の実用書〟なのである。

    それ以外の99.9%の非天才にとっては、「この本を読めば、小説家になって億を稼げるかも」という、ひとときの夢を見させる宝くじのごとき本でしかない。

    「~でしかない」と書いてしまったが、非天才にとっても本書は十分価値を持つ。その点については後述する。

    2部構成で、Ⅰ部は小説の書き方と、デビューまでの売り込み作法などの実践講座。Ⅱ部はデビュー後の稼ぎ方・生き残り方講座になっている。

    Ⅰ部は、既成の「小説の書き方」本では見たことがない斬新な内容だ。

    柱となるのは、著者が「想造」と名付けた独自の創作作法。頭の中で物語を創り出すためのノウハウである。
    それも、たんなるアイデア出しではなく、「執筆前に脳内で物語をほとんど完成させる方法」が解説されている。

    そのために、主要キャラの名前や容姿(好きな俳優を当てはめるなどする)、人物像、舞台背景を設定。それを、「サスペンス映画に登場する、探偵の調査資料のよう」に、「部屋のよく見える壁に貼り付け」ておく。
    それらを毎日眺めては、彼らが登場する物語を、少しずつ想像しては練り上げていくのだという。

    実際には、もっと細かいノウハウがいろいろ説明されている。が、それにしても、こんなことだけでベストセラーになる物語が生み出せるなら、その人はまぎれもない天才であろう。

    ただし、〝古臭い小説作法で書かれた本では、いまどきの映像世代の心はつかめない。だからこそ、このような新しい創作手法が不可欠だ〟という著者の主張には、一理も二理もある。

    それに、この「想造」は、既成の小説作法がピンとこない若い世代に「これならできそうだ」と思わせ、背中を押す効果ならありそうだ。
    そのことによって眠っていた才能を開花させる人も、中にはいるかもしれない。
    そうした可能性は認めるにせよ、万人向けでないことはたしか。〝天才専用の実用書〟と呼ぶゆえんである。

    つづくⅡ部は、Ⅰ部以上に「99.9%の非天才」には関係ない内容だ。
    何しろ、「映画化やドラマ化への対応」や「ベストセラー作家になってから気をつけること」などが、各一章を割いて綴られているのだから。

    小説家デビューまでの道筋すら見えない〝たんなるワナビ〟は、「宝くじで一億円当たったら何買おうかなァ」と妄想するような気持ちで読む羽目になるだろう。

    ただし、Ⅱ部の内容は、作家デビュー直後の人、デビューの一歩手前まで来ている人にとっては、ものすごく実用的だと思う。
    ベストセラー連発、自作の映像化経験も豊富な著者が、その経験をふまえて赤裸々に明かした〝心構え集・べからず集〟であるからだ。

    あなたがデビュー直後の小説家なら、本書はバイブルのように座右に置き、ボロボロになるまで読み込むべきだろう。
    あるいは、かなり前にデビューしたものの鳴かず飛ばずの人が、捲土重来を期して読んでもよいかもしれない。

    では、デビューまでたどりつけない「99.9%の非天才」にとっては、読む価値のない本か? けっしてそんなことはない。

    第1に、〝億を稼げる小説家になるとどうなるのか?〟を細かく知ることで、創作モチベーション向上に役立つ。
    成功後の自分をできるだけ具体的にイメージすることが、成功の重要な一歩である。
    最後まで成功できないケースもあるだろうが、その場合にも努力の方向性を間違えないことは大切だ。

    第2に、単純に読み物として面白い。ベストセラー作家の仕事の舞台裏を、すこぶるリアルに垣間見ることができるから。

    たとえば、億を稼ぐ作家は、ありあまる富を使い、自腹を切って自著の広告を打つこともあるのだという。これはなかなかの驚きエピソードではないか。

    ちなみに著者は、〝広告は版元にまかせるべきで、自腹広告は打つべきではない〟と書く。その理由も明快に説明されている。
    そんなアドバイスまで載っている「小説の書き方」本は、これまでになかっただろう。

    第3に、本書のアドバイスの多くは、小説家に限らず、出版業界で生きるフリーランサーに広く当てはまる。

    たとえば、私のようなフリーライターにとっても、本書は大いに参考になる。
    編集者とのつきあい方の心構え、出版契約を交わす際の注意点、SNS利用の功罪、KDP(Kindle Direct Publishing)など「ネットの配信収益化サービス」をどう利用すべきか……などは、小説家のみならずライターにもあてはまる話だからだ。

    本書は発刊からまだ10日ほどだが、早くも大増刷がかかったらしい。売れているのだ。

    かりに『メジャーリーガーになって億を稼ごう』というハウツー書を出しても、ベストセラーにはなるまい。誰もがイチローやマーくんになれるわけではないことを、みんな重々承知だからだ。

    『小説家になって億を稼ごう』というのも、じつは同じくらい可能性の低い話である。
    だが、メジャーリーガーになるのとは違い、小説家になってミリオンセラーを出すことなら、なんとなく〝ワンチャンある〟気がしてしまう。誰もが文章は書けるからだ。
    本書は、その思い込みにうまくつけ込んだベストセラーと言えなくもない。

    ただ、キレイゴトを排してガンガン本音を書いた著者の姿勢には好感が持てるし、著者が小説業界の未来を憂えて本書を書いたのはたしかだと思う。

    価格相応の価値はある一冊。

  • 小説家が暴露「映像化で本は売れない」残念な実態 | 読書 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
    https://toyokeizai.net/articles/-/436884

    本当は小説家は儲かる! 人気作家が指南するノウハウとは? 『小説家になって億を稼ごう』 | BOOKウォッチ
    https://books.j-cast.com/topics/2021/05/25015209.html

    松岡圭祐 『小説家になって億を稼ごう』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/610899/

  • 【完全実用】
    小説を書いてベストセラー作家になった気分になれます。

    編集者との接し方、著作権料の交渉など現実的な指南書となっています。
    適宜読み返してトライしていきます。

  • 面白かった。さくさく読める。
    「想造」
    キャラクターやその関係重視の作法で、空想が前提になっている。
    個人的に、構図や主題が先に立つタイプなので、馴染みが薄い手法だったが、面白そうだから試してみようと思いました。それにしても話が出来上がるまで一切書かないって……むしろハードルが高い。汗

    仕事で頭が疲れ切っているので、
    疲労をとる意味でも空想の世界に魂を投げ出してみよう



    以前読んだ別の作家の
    『生業としての小説家戦略 専業作家として一生食っていくための「稼げる」マニュアル54』
    とは違い、本当に「小説家になって」「稼ぐ」ところにフォーカスされた一冊になっていた。
    空想を前提の作法なのに、それ以外はとても分析的で現実的。背景に流れる人格的な部分も好感。
    今度作品も読んでみたい。

  • 小説家が明かす、小説を作り出すノウハウと小説家という職業の実態を惜しげもなく公開した話題の新書。
    本書に記載されている方法で、愚直に取り組めばどなたでも小説を書くことができそう。小説家=個人事業主として、出版社とどう接するべきか具体的な内容も学べる。
    ユニークな本。

  • なんだか小説家になれそうな本。

    ストーリーの作り方から、ベストセラー作家になった後の立ち振る舞いまで詳しく解説してある。
    編集者との付き合い方、出版社と付き合うメリット、デメリットなどなど。

    本当に作家になりたい人には、業界の裏側が非常によく分かって、とても面白かった。

    ベストセラーになるとしても、最初の初版は2、3000部しか発行してもらえない。収入になる印税は約18万円。なんと少ない額か。
    これが何十万部売れてくれればいいけど、これだけじゃ食っていけないよね。という現実。

    夢を持ったひとが実現させるために現実を理解するための本。とても有益だった。

  • 「おれの財宝か?欲しけりゃくれてやる。目指せ!この世のすべてをそこに置いてきた!」

    妄想好き達は、ベストセラー作家を目指し、夢を追い続ける。世はまさに、大作家時代!

    小説もひとつのプロダクトであることを気づかせてくれた。目指すぞ!大ベストセラー作家!

  • 前半の小説の作り方「想造」が今までになかった手法で今すぐにでもやってみたくなる。
    登場人物のことを考え続けてメモを取らないというやりかたから、二次創作の人たちが本をどんどん作れるのは、ずっとそのキャラクターのことを一日中考え続けているからなのかもしれないと思った。

    書き出す前に最後まで考えて自分の中にその世界を構築し、登場人物を現実の人のように感じるほどになればそれは筆も止まらず書き切れるだろうな。
    でも中々普通の人にはそこまでできない。
    それをやる方法が書かれていたのが親切だった。

    一方後半は小説家になった後の話。
    絶対プロになるんだ!と決意している人以外にも、法律や契約の仕方、編集者というものをどう捉えるか、トラブルがあったらなど、ビジネスの場面や日常でも役に立ちそうだ。
    中には「編集者に恋をしてしまったら」なんて項目まであって笑ったが、もしかしたら漫画家と編集者の結婚もそこそこ聞くし、案外よくある話なのかもしれない。

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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