うんちの行方 (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108938

作品紹介・あらすじ

知らなかったー!! 流した後はどこへ? どう浄化する? 鉄道や船では? もしタワマン全戸で一斉に流したら? あらゆる疑問を徹底取材。驚きと感動がてんこ盛り、奥深い世界へご案内!

感想・レビュー・書評

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  • この本を読んで、想像して圧倒されたこと。
    歴史上の偉人も、やんごとなき人も、名を残した人も残さなかった人も、一人残らず、生きている間は、日々、食べて、出してを続けていたのだな、ということ。
    あの人もあの人もあの人だって!
    そう思うと、歴史上の人物が身近に感じられる。
    それこそ、大化の改新の前後にも、大阪夏の陣の時も、空襲の時も。
    そんな生きることとイコールといっても過言ではない行為なのに、関心の低さたるや。
    好奇心いっぱいで調べまくったおじさん二人の自由研究を、大変楽しく読み、勉強にもなった。
    タワマンで一気にトイレの水を流したら、とんでもないことになるんですってよ。
    読めてよかった。

  • 臭そうなタイトルだが、中身は大真面目。うんち周辺の歴史や衛生、下水環境、トイレの技術の進化、排泄の仕方など奥が深くて面白い。毎日の糞便に興味を持とう。それは生活の一部であり、生きる上での大きなテーマだ。

    先ずはうんちの構成成分。大便の7、8割は水分。残りのうち、半分は腸内細菌でもう半分が繊維質を始めとする消化されなかった食べ物。大便の匂いは大腸で食べ物が分解された時の消化酵素の中にあるインドール、スカトール、硫化水素、アンモニアという物質による。便の色は、胆汁に含まれているビリルビンと言う色素。歴史上のトイレ、糞尿処理所を断定する際、そこに有機物としての大便は当然分解されて残ってはいないが、未消化の種や骨、寄生虫の卵等が集積している箇所から推測するらしい。なるほど。現在でも、生活排水を分離した汚泥、その汚泥に混じる野菜の種にから野菜が実るらしい。最もこれは台所排水の可能性も高いが。

    排泄物や生活排水を雨水と一緒に流す合流式。雨水とは別にする分流式。下水整備の遅れた田舎は分流式が多いが、東京23区は合流式。合流式だと、マンホールから溢れる水には排泄物が混ざる。

    ああ、武蔵小杉。タワマン民は必読の一冊。

  • 現代の日本人が誰も気にもしない「した後の行方」をしつこく追求すると同時に、世界人口の半数余りがいまだ上下水道が未整備な劣悪な環境にあることを憂える労作であることは確かであるのだが、取材したままを聞き書きしているスタイルが軽い調子になっているのが惜しまれる。

  • 体内でどのように排泄物が作られるか、という内容ではなく、体外に出たあとの排泄物の行方について書かれた本。
    現在の事情について丁寧に書かれているだけでなく、歴史的な経緯もしっかり書かれており、非常によい本だと思います。

    現代は、「死」と「排泄物」を生活から遠ざけてしまった、という類の記述がありますが、まさにそのとおりで、排泄物については、体外に出してしまったら、まるでなかったことのようにされがちです。
    現代の日本においては、100%近くの排泄物が、水洗トイレによって下水道に流れ込み、その後、適切な処理を経て、河川や海へとたどり着きます。
    しかし、ほんの50年ほど前までは、日本でも、排泄物の臭い等に悩まされていました。
    この間の技術の進歩に、我々は感謝すべきですし、その進歩の過程も知るべきかと。
    そのためにも、この本は、多くの方に読んでもらいたいです。

    ただし、食事時に読むのは避けた方がよいと思いますので、その点については、ご注意ください。

  • 久しぶりに一気読みしました。
    「くだらないことの話」のトーンで実は大真面目。
    下水道の話や、歴史の話、要するに全部うんちの話です。

    インフラが大きく変化する時、世の中はどう動いていったのかという点で、非常に勉強になりました。

    「ボットン便所+農業利用」
    で完全に成り立っていた社会を
    「水洗便所+下水道」
    に変えていった話が良かったです。

    現状を変化させるにはエネルギーがいります。
    部活動、働き方改革、GIGAスクール構想、全部うんちと同じですね。

  • タイトル通り排泄物の現場と歴史について、著者の経験とともに紹介したエッセイ。下水道処理の仕組み、日本のトイレ事情、鉄道や富士山のトイレ対策、歴史、汚水処理場のルポなど、新書版一冊に簡潔にまとめられていて面白かった。排泄処理関係の本は、これまでにも何冊か読んだことがあるが、著者の体験も語られているこの本の内容は生々しい感じがした。日本の下水道のシステムも少しずつ老朽化が進んでおり、これからライフラインの一つとして問題になりそうだ。 下水道についての知識を持ち、トラブルに対応できるように、このような本を読んでおくことも必要だろう。 ちなみに、著者は自分と同年代。著者は東京に住んでいたが、15歳まで汲み取り式トイレだったようだ。 自分は5歳まで長崎に住み、その時は汲み取り式だったが、6歳の時に行った奄美大島の集合団地では水洗式に変わった。それ以来、自宅は水洗式になっているが、幼い頃に汲み取り式の恐怖、肥溜めに落ちる危険を味わい、著者の体験に親近感を覚えた。 東京は、日本の先進地域だと思っていたので、汲み取り式が続いていたという話には驚いた。 自分よりも上の世代は、汲み取り→水洗→洗浄式便器という便器の進化を体験できた世代だ。だから、自分もこのテーマについて語る資格があると思う。(笑)


  • ストレートに書くと刺激的な内容も多いので、詳細は差し控えますけど、冒頭、こんなことが書いてます。

    「出すだけ出して、あとは知らんぷり。
    その後を見知らぬ誰かにお任せしているのは無責任ではないだろうか。
    自分の体から出たものをきちんと追いかけて、現実を知り、感謝すべき相手を知り、これからの人生を過ごしていくべきではないか。」

    普段生活してると考えることのない私たちの「アレ」は出されたあとにどういった旅をするのかとか、鉄道、富士山のトイレ事情。日本のトイレの歴史や、災害時のトイレ対策など。

    印象的だったのは、筆者たちはふとした時に、こんな疑問を抱く。

    「タワマンの全ての部屋で一斉に排泄し、水を流したら、低層階ではアレが噴き出しちゃうのでは?」

    そういえばどこかで読んだのだけど、ワールドカップのサッカーの中継中に、CMなると水の使う量が一気に増えるそうです。そう、みんなCM中にみんなトイレに行くから。

    著者は疑問に思い、大手不動産会社の商品企画室長に直撃。

    この室長曰く、「100%噴き出します」と。

    そんなストレートに答えるかと思わず唸ってしまった。タワマンの低層に住みたくなくなる人増えるでしょと思いながら、あとの話は本の中で読んでみてくださいな。

    汚いものに目をつむり、臭いものにフタをする世の中。すべての人に、まずフタを開けて、アレの世界を覗き込んでみることをぜひオススメする。

    読み進めていくと「水」との関わり合い方も考えさせられる良書でした。おトイレで籠って読むとよいですよ。

    食事中の方はごめんなさいね、謝ります。水に流してください。

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  • 面白かったです。とってもゆるい感じで書いてあって、すらすら読み進められます。2人の共同の著書ですが、片方の方が自分と同じ練馬区出身で親近感が沸きました。確かに幼少の頃はバキュームカーがそこら中を走っていた気がします。最新の下水処理の話から、災害時の話までためになる話満載です。

  • これはめちゃくちゃ面白い。確かにテレビなどでは決して扱われることのない題材である。当たり前だ。それゆえに一般的には見えないものとして意図的ではないにせよ隠されてしまっているわけだ。下水処理に微生物が使われていること、マンションの下水処理が単なる確率論だけで保たれていること、貧困問題環境問題差別問題に直結する事項であること。
    ドキュメンタリーでも映画でももっと扱っていい素材だ。
    おまけに文章がセンスのいい笑いを交えて読みやすく、うんこにまつわる歴史的空間的事項を余すことなく教えてくれる。登山や災害時など考えてみれば排泄問題は当たり前なのだがそこに想像は至ってなかった。
    堂々たる良書。

  • 一番興味を持って読めたのは鉄道の黄害。便器の中を覗くと砂利やら枕木が見えて少々怖い気がした記憶は、私もあるからです。しかし、そのため保線作業の人は大変な思いをしていたのですね!

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